自動運転トラックの登場はトラック運転手の生活を脅かすのか
Uberの自動運転タクシーが稼働を開始するも使用停止を命じられるなど、自動運転車の完全な確立はまだ先の話になる見込みですが、最も早く広範囲で自動化が進むと考えられているのが長距離トラック業界です。すでに複数の企業が「自動運転トラック」の公道テストを実施しているのですが、自動運転トラックについてトラック運転手はどう思っているのか、そして実際にどうなるのかを専門家たちが語っています。
The Future of Trucking When Machines Take the Wheel | Robots & Us | WIRED - YouTube
10年間トラック運転手として生計を立ててきたマリア・ポーターさんは……
カリフォルニア州のスタートアップ・Starsky Roboticsで、トラックのリモート運転のテストに協力しています。
Starsky Roboticsは自動運転トラック技術のスタートアップで、高速道路上で自律運転する自動運転トラックを開発しています。一方で、Starsky Roboticsの自動運転トラックには遠隔操作にも切り替えることができ、ポーターさんは車載カメラの映像からトラックを遠隔操作するテストを行っていたわけです。
自動運転トラックを開発しているのはStarsky Roboticsだけでなく、Uberに買収されたOttoや……
自動運転技術と、トラックを追走させて燃費効率を向上させる「プラトーン技術」を開発しているPeloton Technologyなどがあります。各社が安全かつ効率的な自動運転技術の確立を目指しており、いずれも公道テストを実施済み。運転業界で最初に自動化されるのは、高速道路を走るトラック輸送であると考えられています。
労働組合Teamstersのローマ・アロイゼ氏は「トラック運転手の職業が自動運転技術と入れ替わること事態が起こるかも知れません」と危惧しています。
「運転手なしで道路を走るトラック」という技術は、一部のトラック運転手にとってSF映画のようにとらえられています。あるトラック運転手は「今まで一度も自動運転トラックを見たことないよ」と話します。
「私たちにとってそれは空飛ぶ車のようなアイデアです」と別のトラック運転手。
最後のトラック運転手も「自動運転トラックがいつ実現するかなんてわからない。あなたはいつか知ってるの?」と話しています。
アメリカのトラックとタクシーの運転手を合わせると、その数は400万人以上にのぼります。
そしてトラック運転手という職業は、アメリカの約30州で最も多い職業となっています。
トラック運転手の平均年収は4万1000ドル(約460万円)で、ブルーカラーとしては中流階級の給料を得られる数少ない職業です。
ムービーが公開されている2017年5月時点で、アメリカでは5万人のトラック運転手が不足していると言われており、自動運転トラックが登場するまで、この傾向は加速するものと見られます。自動運転技術の開発者は「自動運転トラックは効率的で、低コストで、安全な輸送を実現できる」としており、実際に何百万人もの命を事故から救う潜在性を秘めています。その一方で、自動運転トラックの実現は何百万人もの人から職業を奪うことにもつながっているわけです。
トラック運転手の実情を動画で伝えているのは、YouTuberのAllie Knightさん。
「多くのトラック運転手は自動運転技術を信頼しておらず、トラックを自律運転できる技術がすでにそこにあると考えたがりません」と話すKnightさん。
Knightさんは凍結したブレーキをハンマーで叩きながら、「道路の氷結・雪・豪雨・トルネード。トラックを運転する上で、一日単位で激しく変わる天候があります」と話しています。
10年間以上自動運転技術の開発に携わっているスティーブン・シュラドーバー氏によると、「自動車が経験するすべての状況で適切に作用することを保証する安全なシステムが求められています。しかし、予想もつかない事態に反応するシステムやソフトウェアは、まだ大きな挑戦の段階にあります」と説明しています。
気候と自動運転との関係については、以下の記事でも詳しく書かれています。
自動運転車は滑りやすい雪道を安全に運転できるのか? - GIGAZINE
現段階では完全自動運転に対応できるソフトウェアがないという状況ですが、将来的に高速道路を走るトラックの運転はコンピューターで制御されると言われており、その日は刻一刻と迫っています。Starsky Roboticsの提案する「自動運転+リモート運転」は、何週間も孤独に運転し続けなければならないというトラック運転手を、オフィス職に変える1つの解決策となるかもしれません。
Knightさんは「確実に起きるその日に向かって、私たちは毎日近づいているのです」と話しています。
なお、このムービーはWIREDの「Robots & Us」というロボットと人間の関係を取り上げたシリーズの第3弾となっており、第1弾と第2弾のムービーも以下から見ることができます。
A Brief History of Our Robotic Future | Robots & Us | WIRED - YouTube
The Robot Will See You Now – AI and Your Health Care | Robots & Us | WIRED - YouTube
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