進化を続ける人工知能(AI)が2016年にクリエイティブさを発揮した創作活動の数々とは


2016年は、急激な進歩を見せた人工知能(AI)のニュースをかつてないほど多く耳にした一年だったと言えます。学習によってさまざまな分野でクリエイティブさを発揮しだしたAIによる創作物の数々が、ネットメディアのNew Atlas(旧Gizmag)でまとめられています。

2016: The year AI got creative
http://newatlas.com/ai-art-film-writing-review/46891/

◆01:AIによるコメディ番組の台本
ソフトウェア開発者でコミック作家でもあるアンディ・ハート氏は「もしAIがテレビドラマ『フレンズ』の新エピソードを考えたらどうなるだろう」と思い立ち、Googleが提供している機械学習のソフトウェアライブラリ「TensorFlow」に同シリーズの9シーズン分の台本を全て学習させました。その結果作られたのが以下のスクリプト(台本)。内容は以下のように、登場人物のチャンドラーにわけの分からないセリフを喋らせたり、モニカが何度も絶叫したりと、「非常にチンプンカンプン」なものだったとのこと。


◆02:AIによる映画予告編
IBMの人工知能「ワトソン」を使ってスリラー映画「Morgan」の予告編を作るというプロジェクトが実施されたのも2016年でした。IBMの技術者はワトソンに映画1000本の予告編を読み込ませ、予告編に必要な編集の方法を学習させました。

その結果、ワトソンが自動的に生成した「Morgan」の予告編を含むムービーがコレ。それっぽい雰囲気になるようにうまく編集されていますが、どことなく感じる「間伸び感」や意味を量りかねるシーンの使いかたなどは、まだ少し人間のほうが一枚上手と言えそう。

人工知能が人工知能の出てくる映画を分析して予告編を作るとこうなる - GIGAZINE


◆03:AIによるホラー映画
8月には、AIを使ってホラー映画を制作するプロジェクトがクラウドファンディングを使って実施されました。AIホラー映画「Impossible Things」は、AIに何千本というホラー映画を興行収入の実績と関連づけしながら学習させることで、より「受ける」ホラー映画として生みだされた作品です。学習を終えたAIがストーリーの背景と大まかなあらすじを生成したあと、人間の脚本家がきちんとした台本に仕上げ、実際の映画が撮影されたとのこと。

そのようにして撮影されたホラー映画「Impossible Things」の予告編が以下のムービー。中身は「ホラー映画にありがちなシーンの寄せ集め」という見方もあるようですが、ハリウッドで2本の映画化が決定するなど、クラウドファンディングとして成功を収めています。撮影は2017年に行われ、年内にも公開される見込みとのこと。


◆04:AIによるショートフィルム
映画作家のオスカー・シャープ氏とAI研究者のロス・グッドウィン氏は、「ゴーストバスターズ」や「ブレードランナー」といった映画や、「Xファイル」のようなテレビドラマなど、1980年代から90年年台にかけてのSF作品を学習させ、ショートフィルムの台本をAIに生成させました。

その台本をもとに、なるべく忠実に撮影されたのが、以下の「Sunspring」という作品。ストーリーが後半になるにつれて支離滅裂になりつつある点は、今後の発展の「伸びしろ」と言える部分かも。

VimeoSUNSPRING by 32 Tesla K80 GPUs


◆05:AIが作曲したポップソング
映画作品は改善の余地が認められるAIの創作活動ですが、音楽の世界ではよい結果を出し始めている模様。Sony CSL Research Laboratory(以下「ラボ」)がAI「Flow Machines」を使って作曲したポップソングは、なかなか気持ちのよい上質な楽曲に仕上がっています。ラボでは1万3000曲の楽曲を学習させたうえで、シンプルに「ビートルズ調の曲」という指令だけを与えてAIに作曲させました。

そして生まれたのが以下の楽曲「Daddy's Car」です。実際にはFlow Machinesがメロディとハーモニーを担当し、全体の編曲と作詞はフランス人ミュージシャンのブノワ・カレ(Benoît Carré)氏が担当したために「完全AI」というわけではありませんが、重なり合う多重コーラスや転調を含んだコード進行、逆回転サウンドなどは、確かにビートルズのポップ感と実験性を両立させている様子が感じ取れます。気持ちよさもなかなかのもので、人間のミュージシャンでもここまでの楽曲を作り上げられない人がほとんどといっても過言ではないレベル。

Daddy's Car: a song composed by Artificial Intelligence - in the style of the Beatles - YouTube


また、Googleでも「アートと音楽の作り方を学習できるアルゴリズムの開発」を目標にしたプロジェクト「Magenta」が発足しています。そこで作曲されたのが、以下のピアノ曲。途中から入ってくるドラムは人間によるアレンジですが、メロディは全てAIによる作曲とのこと。清潔感のあるメロディとコード進行で、耳に心地よい「楽曲」といえそう。

Google Magenta Music - YouTube


◆06:AIが作曲して歌ったクリスマスキャロル
上記の2曲は人の手が少し入った作品でしたが、カナダのトロント大学ではAIが作曲と歌唱を1人(?)で行う試みが行われました。実験ではまず、あらかじめAIにクリスマスキャロルを学習させておいた上で以下の写真を読み込ませ、その内容をもとに新たなクリスマスキャロルを作曲させています。


そうして作曲され、演奏もされたのが次の楽曲。コード進行のところどころにクリスマスらしさが感じられなくもないですが、これは多くの人が想像する「クリスマスキャロル」とは非なるものと言うしかなさそう。ところどころ、かなりアバンギャルドな展開をしている部分もあり、コンピューターの合成音声による歌唱と相まって独特の世界観がかもし出されています。

Neural Story Singing Christmas on Vimeo


なお、歌詞の内容は「部屋にはたくさんの飾り。クリスマスツリーは花であふれている。きっとこれはクリスマスイブ。あなたがそう言うと願っている。『最高のクリスマスプレゼントは祝福だ』と。あなたに会えて嬉しい。ホールから音楽が聞こえる。おとぎ話。クリスマスツリー。たくさんの、たくさんの花」というもの。詳細は以下の記事でも読むことができます。

人工知能が1枚のクリスマスの写真から歌詞つきの「クリスマスソング」を作成するとこうなる - GIGAZINE


◆07:AIが書いた小説
日本では、AIに短編小説を書かせるプロジェクトが進められています。公立はこだて未来大学の松原仁教授を中心にしたプロジェクトチーム「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」は、短編小説家・星新一のショートショート作品全てを分析し、AIにも同様のショートショートを書かせようというものです。

実際にAIが書いたというショートショート「コンピュータが小説を書く日」が公開されているのですが、この作品はなんと、日経新聞が主催する「星新一賞」の一次審査を通過したとのこと。オチの一節が、星新一ワールドを感じさせるものになっています。

(PDF)Microsoft Word - 617.docx - 617.pdf


◆08:AIが描いたアート作品
Googleは悪夢のような光景を生みだすとも言われる人工知能「DeepDream」で描いた絵画29作品だけのオークションを開催しました。すると、売上の総額はなんと9万7000ドル(約1150万円)にも達し、単品の最高額は8000ドル(約95万円)にもなったそうです。まだ物珍しさが評価された部分がないとも言い切れませんが、AIにもアートができることを示す如実な例とみることもできそうです。


◆09:AIが記したポエム
カーメル・アリソン氏は、「詩人」であり「ソフトウェアエンジニア」であるという自身の2つの能力を組み合わせ、ウェブサイト「CuratedAI」を立ち上げました。サイトではニューラルネットワークを使った機械学習による詩の作品が発表されています。「Deep Gimble」と名付けられたAIは、19万語の語彙力をもとに1分で詩をしたためることができるとのこと。「Chaos Everywhere(カオスがあちこちに)」という詩の内容は以下のようになっています。

chaos everywhere
away he sees some long soul
no in air
out no or where
as yet or clear when time
seems back when time
it with sweet tears
his bosom through high waves
came near into fire
over like no word all
their hopes can fade together


また、Googleでは詩の最初と最後のフレーズを与えることで、間をつないだ詩を作成するAIを開発しています。その中身はなかなかに「キモい」と話題になっています。

Googleで開発中の人工知能が綴ったポエムがキモいと話題に - GIGAZINE


◆10:AIが雑誌を編集
多くの写真がアップロードされ、販売もできる写真コミュニティーの「EyeEm」では、AIに写真のアート性を評価させるアルゴリズムを開発し、100点満点で採点させる試みを実施しました。

その後、チームではそれまで人間が行っていた写真のキュレーションを全てAIに任せることに。すると、人間がそれまで見つけていなかったロンドン出身の若い才能を発見することにつながったとのこと。EyeEmのアソシエート・クリエイティブ・ディレクターのポール・アグワイア=リビングストン氏は「この写真家について『隠れていた宝石を見つけた』と表現するのは、極めて控えめな言い方になります」と、AIが写真家を発掘した衝撃の大きさを語っています。

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