スマホのリチウムイオンバッテリーが爆発事故を起こすワケとその回避策とは?

By TechStage

スマートフォンのリチウムイオンバッテリーが爆発・発火して被害を出していることが話題になっていますが、実はバッテリーというものが一歩間違うと大きな事故を起こしてしまいかねないことはあまり広く知られていません。バッテリーがどのようにして電気を蓄えて放出するのか、そしてそこにはどのような危険が潜んでいるのか、そんなことがまとめられています。

The science behind exploding phone batteries - The Verge
http://www.theverge.com/2016/9/8/12841342/why-do-phone-batteries-explode-samsung-galaxy-note-7

リチウムイオンバッテリー技術について解説しているThe Vergeが「バッテリーに使われている化学物質が爆発したがるのは自然なこと」と記すように、リチウムイオンバッテリーで使われてる材料は常に爆発のリスクと隣り合わせの状態といえます。特に、理論上限値の90%にまで達しているといわれている現在のリチウムイオンバッテリーでは、非常に高いエネルギーがバッテリーセルの中に封じ込められている状態となっているために、ひとたび不具合が起こると収められていたエネルギーが一気に放出されてしまうことになります。

リチウムイオンバッテリーの構造を簡単に説明すると、その内部は「陽極(アノード)」と「陰極(カソード)」と呼ばれる2つの電極と、それらの電極が触れないように絶縁する「セパレータ-」、そして「電解質」によって構成されています。リチウムイオンバッテリーは「正極」の素材にリチウム酸化物を用い、電力の源となるリチウムイオンを作り出す仕組みとなっていることから、その名称が付けられています。

リチウムイオンバッテリーが充電される時、内部ではリチウムイオンが陰極から陽極に移動することでエネルギーが蓄えられます。そしてバッテリーから電力を取り出す際には、陽極から陰極にリチウムイオンが移動することで電流が発生するという仕組みになっています。この時、内部でイオン(電子)を移動させるための物質が電解質、2つの電極が直接触れて高エネルギーを放出する事態を防ぐために挿入されているのが、セパレーターです。世間をにぎわせているGalaxy Note 7のバッテリーでは、このセパレーターに不具合があって、2つの電極が直接触れてしまい、一気に電流が発生したことで爆発につながったと考えられています。

リチウムイオンバッテリーの詳細については、以下のページを参照するとよく理解できそうです。

リチウムイオン電池の豆知識 - リチウムイオン電池の豆知識
http://michinokutrade.hateblo.jp/entry/2015/12/06/112614

リチウムイオンバッテリーを安定的に動作させるうえで重要なのが、「温度の管理」と「過充電の防止」です。いずれも安全性に直結する事項のため、リチウムイオンバッテリーではこの制御に多くの技術が投入されています。

電子が移動する電解質は熱に敏感な特性を備えており、強い電流が流れたり、日中の車内のような高温の環境にさらされた状態で電子が移動すると化学反応がおこり、ガスと熱が発生します。この熱によってさらに化学反応が起こるという「正のフィードバック」が生じることで、リチウムイオンバッテリーは「熱暴走」の状態になり、最悪のケースとして爆発・発火へとつながってしまいます。スマートフォンやカメラなど、リチウムイオンバッテリーを用いているデバイスには、本体の温度が高くなりすぎると自動で電源がシャットダウンされる機能が搭載されていることがありますが、これはリチウムイオンバッテリーの熱暴走を防止するために組み込まれている保護機能というわけです。

By Juanerre

一方の過充電は、バッテリーに蓄えられる容量を超えるエネルギーを送り込むことで発生します。これは、バケツに水をいれすぎるとあふれてしまうようなもので、リチウムイオンバッテリーの場合は陽極に移動するリチウムイオンが多すぎた場合に発生します。たとえ充電のスピードを遅くしたとしても過充電を防ぐことはできず、充電のための電流をカットするしか防止する方法がありません。

そのため、リチウムイオンバッテリーには充電されている容量をモニタリングする機能が組み込まれており、常に正しいバッテリー残量を把握できるようになっています。たとえ、一晩中スマートフォンを充電器につないでいたとしても、スマートフォンのリチウムイオンバッテリーが十分に充電された状態になると、自動で充電が停止する安全装置が組み込まれているというわけ。


プリンストン大学の材料工学学者であるダン・スタインガード氏によると、バッテリーが充放電する様子は輪ゴムが伸び縮みする様子にたとえることができるとのこと。充電は輪ゴムを手で長く伸ばしてエネルギーをためているのと同じで、放電は手を離すことで輪ゴムが縮むのと同じといえるそうで、輪ゴムを伸ばしすぎるといつか切れてしまうことと、バッテリーが過充電で壊れてしまうことは同じようなものだと説明しています。

また、過充電に加えて充電速度を速める「急速充電」もリチウムイオンバッテリーにダメージを与える要因になりかねません。きちんと設計されたリチウムイオンバッテリーは状況に応じて最適な充電を行う仕組みが働くのですが、過充電や速すぎる充電が行われてしまうと、バッテリーの材料の表面に「プレーティング」という症状が発生します。

これは、生玉子を運ぶ「タマゴパック」に卵を置く様子にたとえられるとのこと。10個入りのタマゴパックに10個のタマゴをゆっくりと詰める時には何も問題はありませんが、タマゴを置くスピードが速かったり、11個以上のタマゴを置こうとすると、うまく収められなかったタマゴが行き場を失ってタマゴパックに取り残された状態になっていしまいます。ひとたび取り残されたタマゴは、次にタマゴを取り出した(=放電を行った)としても、パックにそのまま残された状態になります。その状態で再びタマゴを置く(=充電を行う)と、取り残されたタマゴの上にさらに新たなタマゴが置かれ、次々と積み重ねられてしまいます。

実際のバッテリーではリチウムの粒子がタマゴに相当しており、不自然な充放電を繰り返すことで素材の表面には突起状の「デンドライト (樹状突起)」が形成され、バッテリー内部で回路がショートする原因になってしまい、バッテリーが爆発や炎上を起こす結果を招く、というわけです。

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さらに、多くのエネルギーを詰め込むために、電圧を高めることもバッテリーにダメージを与えることにつながります。電圧は「力の強さ」を現すもので、電位差とも呼ばれます。ちょうど、滝の落差が大きくなるほど力が強くなるように、電圧が大きくなるほど電流の力が強くなります。うまくエネルギーが蓄えられているときは問題がないのですが、ひとたび問題が生じてしまうと、より強い力でエネルギーが放出されるために大きな事故につながります。

これらの事故を防ぐために、材料の改良が続けられており、高い熱が加わってもガスが発生しにくい電解質として「イオン液体」などの材料が開発されているとのこと。そもそもリチウムイオンバッテリーは、制御の難しさを研ぎ澄まされた技術でカバーするという、人間の知恵が詰まった装置です。スタインガード氏は「これほどのエネルギーを詰め込み、短時間で放出できる物体というものは、たとえどのような物質で作られていたとしても、潜在的に爆弾のようなものであるといえます」と、高性能バッテリーの功罪を語ります。

バッテリー技術は今でもなお進化を続けてはいますが、そのスピードは必ずしも人々の過酷な要求に応えきれるものではありません。バッテリーの安全性を高めるためには、やはりきちんとした設計と製造がメーカー側に求められることはもちろん、ユーザーの側でも熱すぎる状態で使わない、不正な改造を施したバッテリーを使わない、などの危険回避策を心がけることも重要なようです。

By Nicolas Nova

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in ハードウェア, Posted by logx_tm