メモ

何が子どもの性別を決め、子どもの性別はあなたの人生をどう変えるのか

by Thomas Hawk

人の生活における幸福・健康・考え方などに関しては「運動を行っていたから健康になったのか、それとも糖質を制限したから健康になったのか」など、原因と結果があいまいなことが多くあります。では、人の性別についてはどうなのか?ということで、「何が生まれてくる子どもの性別に影響を与え、生まれてきた子どもの性別がどのように両親に影響するのか」という相互作用についてが科学系情報サイトのNautilusにまとめられています。

Stress Gives You Daughters, Sons Make You Liberal - Issue 31: Stress - Nautilus
http://nautil.us/issue/31/stress/stress-gives-you-daughters-sons-make-you-liberal-rp

1973年、アメリカの進化生物学者であるロバート・トリヴァース氏とダン・ウィロード氏は、「ホ乳類の多くは、進化という賭けにおいてオスよりもメスの子どもを産む方が安全」という事実から「子どもの性別はランダムではない」という1つの仮説を打ち出しました。「進化の賭けにおいてメスを産む方が安全」というのはつまり、オスは自分で子どもを作ることができませんが、メスはオスをほんの数分誘い込むだけで子どもを作ることが可能であるということを意味しています。

この仮説によれば、物資が少なかったり、女性の体調が最善ではなかったり、あるいは女性がヒエラルキーの下部に位置していた場合、より安全な賭を行うべく、ホ乳類の子どもの性別はメスになる可能性が高くなるとのこと。実際に、メスが生まれる割合と母胎の置かれた環境の関係は、アカシカ、牛、バーバリーマカクというサルなどで確認されており、ニューヨーク大学の社会学者ダルトン・コネリー教授は「血中グルコースのレベルが低くなると『今はよくない環境だ』というシグナルが子宮に送られ、男性を作る胚盤胞が自然流産してしまうため」とこの現象を説明しています。

血中グルコース以外の要素も、胎児の性別に影響を与えます。自然災害や政治の変動などストレスの多い出来事が人口における男女比に影響を与えていると示す論文は多く、例えば、チリで大きな地震が起こった際には、当時妊娠3カ月だった母親から生まれた子どもは、男児の割合が少なかったという調査結果が出ています。9.11に際しても生まれた子どもの男女比について調査が行われましたが、「ニューヨーカーの間に生まれた子どものうち、男児の数が減っている」という結果が発表される一方で、別のサンプルを調べた研究者が「男女比に影響はなかった」と発表しています。また、「ケンカの絶えない夫婦から生まれる子どもは女の子が多い」という研究も存在。これらの研究で、子どもの性別に影響を与える可能性が高い物質として、ストレスホルモンのコルチゾールが挙げられています。

by Aimee Heart

しかし、現代において、科学的な要因よりも社会に影響を与えているものがあります。それが「男児が好まれる」という傾向です。男児が好まれる傾向は一人っ子政策が取られていた中国において顕著ですが、Google検索において「女の子を産む方法」よりも「男の子を産む方法」の方が検索数が多いことから、アメリカでも男児が好まれる傾向にあることがわかります。

そして、親が子ども性別に対して好みがあるのと同時に、子どもの性別もまた親に影響を与えます。過去の研究では、息子がいる人はよりリベラルな思想に、娘がいる人は保守的な共和党支持者となる傾向があることが明らかにされており、子どもの性別は親の政治的な考え方にまで影響を与えるとのこと。なお、この時の調査で継子や養子は除外されませんでした。また息子がいる夫婦は娘がいる夫婦よりも結婚生活が長くなること、青年期の息子がいる父親は他の親よりも幸福度が小さいことなども判明していることから、子どもの性別は、親の人生にとって非常に重要な要素であると言えます。


シカゴ大学はアメリカ合衆国の居住者に、年齢・性別・人種・出身地といった人口統計学的な情報に加えて政府支出から人種問題、神の存在についてなど、さまざまな論点を含んだアンケートを回答してもらうという総合的社会調査を毎年行っていますが、カンザス大学の社会学者であるエミリー・ロウシャー教授とコネリー教授は総合的社会調査の回答内容のうち、第1子の性別に着目して調査を実施。この時、養子や継子を持つ夫婦は調査から除外されました。

その結果、継子や養子を除外しても、息子のいる両親はリベラルになる傾向があると判明。娘がいる両親は共和党を支持する傾向が強い、という結果も過去に行われた研究と一致しますが、興味深いのは、人工中絶の禁止を掲げる共和党を支持しながらも、娘を持つ夫婦は妊娠中絶に理解を示すプロチョイスである割合が高かったことです。これは、自分の娘が若くして未婚の母になってしまうリスクに比べれば、中絶はやむを得ない、という現実的な判断が反映されていると見られています。さらに調査を進めると、子どもの性別が親の政治的意見に影響を与えるのは性に関する事柄のみで、銃規制や移民、税制、福祉といった事柄に関しては影響が見られないことがわかりました。

もちろん、実際に娘や息子が両親に新しいものの見方を与えて、考え方を変えているのかどうかは分かりません。しかし、ニューヨーク大学の社会学者であるアビガイル・ウァイツマン氏は、発展途上国で娘を産んだ母親は虐待されたり捨てられる傾向があるだけでなく、高確率で働きに出なければならないことを明らかにしました。ここには、「息子を持つ母親には家で息子の世話をしてもらいたいけれど、娘の場合は家計の足しとして金銭をかせいでほしい」という父親の意志が見られるとのこと。

その他、発展途上国では父親が息子に対して競争心や嫉妬を抱き、男性的な振る舞いをする傾向が見られることも。さらに、12~18歳の息子がいる父親は女性に対して無理やり性行為を強いることに肯定的で、家庭の外で性行為を行い家族に性病を移す傾向が高い、ということなども判明しています。

by Chiara Baldassarri

ある人が別の人に影響を与えているのかどうかは、実際のところ、本人の頭の中に入って言語でないものを含めた全ての相互作用を確認する以外に方法はありません。特に家族となると、毎日夫と妻の間で交渉が行われ、子どもに対する指図、それに対する子どもによる拒否、家族以外の人とのやりとりなど、やりとりが多すぎて原因と結果を結びつけるのはほぼ不可能と言えます。

しかし、家族内においてでも、「子どもの性別」による相互作用の影響については、確実に存在するものと言えそうです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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