ハードウェア

ついに「痛み」を感じて反応するロボットが開発される

By Keoni Cabral

「あるケースにおいては『傷みに反応する能力』はロボットにとっても有効な能力」という前提に基づき、ロボットにどうやって痛みを感じるか学習させる「人工ロボット神経系」がハノーファー大学の研究チームにより開発されています。実用化されれば、工業ロボットなどが故障する可能性のある接触に対して素早く回避行動をとることが可能になり、ロボット自身の部品の損傷を防げるようになります。実際に痛みを与えられたロボットアームが反射的に反応しているムービーも公開されています。

Researchers Teaching Robots to Feel and React to Pain - IEEE Spectrum
http://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/robotics-software/researchers-teaching-robots-to-feel-and-react-to-pain

ロボットは痛覚を持ち合わせていないが故に危険な環境下で作業を行うことができます。これはロボットの長所として捉えられていますが、ハノーファー大学のヨハネス・キューン氏らは「人間の近くで作業するロボット」に対しては痛覚が有効なシステムになるというアイデアを、ストックホルムで行われたIEEE(アメリカ電気電子学会)の国際会議で発表しました。

キューン氏によると、人間の近くで作業するロボットは今後増加していくことが予測されています。ダメージに反応するシステムをロボットに搭載することで、発見が難しい内部機器の損傷による事故を防ぐことが可能とのこと。ロボットが人間との衝突を回避するシステムは以前から存在しますが、痛覚を搭載することで、周囲で働く人間とロボットの両方の安全性を高められるそうです。この主張に基づき、ハノーファー大学の研究チームは人間の痛覚システムを模倣するロボットコントローラーを考案。このコントローラーを接続したロボットは、潜在的な危険に対して「反射神経」を得られるようになります。


ロボットコントローラーによる「ロボット神経系」がどんな反応を見せるのかは、以下のムービーから見ることができます。

Artificial Robot Nervous System to Teach Robots How to Feel Pain - YouTube


オレンジ色のロボットアームの先端に取り付けられているのが「痛み」を検知するコントローラーの試作品。BioTacの指型・生体模倣 触覚センサーを搭載しており、触覚だけでなく、圧力や温度まで感じることができるとのこと。まずは「軽い痛み」をセンサーに与えてみると……


ロボットアームが軽い痛みに反応して、痛みの発生源である人間の手から少し離れるという動きを行いました。ロボットは軽い痛みを「不快」な接触と感じており、損傷を受ける可能性がある、または決められたタスクを妨害する可能性のある接触と見なします。接触が終わるまでロボットはゆっくりと回避行動を行ない、接触が終わると元の位置に戻ります。


続いて強い接触を示す「中程度の痛み」。


ロボットが中程度の痛みを感じると、素早く回避行動をとるよう設定されています。まるで突然ピンが刺さって痛みを感じた人間のような動作で、軽い痛みよりも回避する距離は大きく、接触が終わるまで危険からより遠くまで離れるような回避行動をとります。接触が終わると元の位置に戻ります。


なんらかの接触を受けると回避行動をとり、元の位置に戻るという反射的な反応を行なうのですが、元に戻る前に次なる接触を受けた場合は……


回避を行なった先の接触に対して、さらに回避を続けるようになっています。


最後は「激痛」を受けた場合。激痛とはロボットが損傷を受けた可能性が高く、なんらかのヘルプを必要とするレベルの接触に分類されます。


激痛を与えられたロボットは、受けたダメージから悪化を防ぐため、回避するのではなく重力補正のスイッチをオンにします。


これによりロボットが外力に対して受動的に制御する「ダンピング制御」の機能が向上します。激痛を受けたロボットアームは人間の手で動かされると、力を受け流すように動いています。


最後は「温度による痛み」で、センサーの上に沸騰したお湯を入れたカップがのせられました。


しばらくしてからロボットが熱を感じて回避行動をとっており、「熱っ!」と聞こえてきそうなほど人間と同じような反射的反応を見せています。ロボット工学においての最優先事項は「ロボットが人を傷つけない」ことですが、今後ロボットが人間の周りで増加していくにあたって、ロボットも「ケガ」をしないように振る舞うことが重要になってくるとのことです。

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in ハードウェア,   サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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