捕食者の匂いをかぐとストレスが高まる仕組みをノーベル賞受賞者が解明
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By Piulet
ハツカネズミの嗅覚感覚の仕組みを解明し、匂いの受容体遺伝子を発見したことで2004年にノーベル賞を受賞したのがリチャード・アクセル博士とリンダ・バック博士。その後も嗅覚に関する研究を続けているバック博士は、ハツカネズミが捕食者のニオイを嗅ぐとストレスを感じる仕組みを持っていることを明らかにしました。
A specific area of olfactory cortex involved in stress hormone responses to predator odours : Nature : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature17156.html
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We’ve found the neurons that make smelling a predator stressful | Ars Technica
http://arstechnica.com/science/2016/03/weve-found-the-neurons-that-make-smelling-a-predator-stressful/
バック博士らはハツカネズミの嗅覚に関する生態を研究していますが、さらにハツカネズミの鼻から視床下部を通る神経回路が「恐怖の匂い」を伝達していることがわかったとのこと。バック博士らの研究チームは、特殊なウイルスを使ってハツカネズミの嗅覚ニューロンの連絡をトレースするという試みを実施。嗅神経の信号は「嗅覚皮質」と呼ばれる場所に集められるのですが、特殊なウイルスを嗅覚皮質に注入することで、ストレスホルモンが放出された時にニューロンがどこに連絡しているかを把握できるようになり、ニューロンの連絡は視床下部へと続いていることがわかったとのこと。
続いて、研究チームはハツカネズミにキツネやヤマネコの尿を嗅がせて反応を確認しました。その結果、嗅覚皮質の非常に狭い面積を占める「amygdalo-piriform(AmPir)」という領域のニューロンだけが活性化していることが判明。ウサギなどの捕食者と異なる動物の尿では同じ現象は起こらなかったとのこと。この結果を受け、研究チームはAmPirニューロンが恐怖反応と紐付いているかを確認するため、化学薬品で捕食者のAmPirニューロンを活性化させたところ、捕食者の尿を嗅がせた時と同様にストレスホルモンの放出が確認されました。
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By sgrace
反対に化学薬品でAmPirニューロンを不活性化させたところ、捕食者の尿があってもストレスホルモンの放出が減少しました。ただし、AmPirニューロンが不活性化した状態でもハツカネズミは金縛り状態になっており、危険を回避する方法としては良策ではないものの、本能的な反応を見せました。これにより「危険な匂い」による行動反応が嗅覚皮質の別の分野にも紐付けられていることになるため、バック博士らはこの領域の特定作業を続けているとのことです。
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