サイエンス

迫り来る哺乳類のなまあたたかい息に身の危険を察する昆虫たち


ムシャムシャと植物の葉をほおばるヤギやウシなどの哺乳類。草食性であっても動物性タンパク質をまったく消化できないというわけではなく、葉に小さな虫が止まっていても避けることなく、気付かずに昆虫もろとも食べてしまいます。意図せず食べた昆虫は哺乳類にとっては貴重な栄養ですが、食べられる側の昆虫は、自分よりはるかに巨大で動きも速い哺乳類の大きな口の前には、なすすべもなく運命を受け入れるしかないのでしょうか?

アブラムシのような動きの遅い小さな昆虫は、単純ながらも効果的な驚くべきメカニズムで危険を察知し、身を守っているそうです。

詳細は以下から。Insects sense danger on mammals' breath

「アブラムシのような小さな昆虫は、すみかとしている植物をすごい早さで食べてしまう大きな動物に対して、なすすべがないというわけではありません。彼らは危険を確実に察知し、手遅れとなる前に逃げることができるのです」と、イスラエル・ハイファ大学の進化・環境生物学科の准教授Moshe Inbar博士は語ります。草食性の動物に対し小さな昆虫が身を守る手段について研究したInbar博士らの論文は、Current Biology誌の8月10日号に掲載されています。

Inbar博士は、草食性の動物が植物に止まっている小さな昆虫を偶然食べてしまう「意図的でない捕食」について、植物にすみついてほとんど動くことのないアブラムシのような昆虫を観察しながら、いつも疑問に思っていたそうです。そして今回の研究に着手してすぐに、アブラムシは捕食者が吐く息に反応しているのではないかと考えたとのこと。研究者たちは途中から、自分たちの吐く息が実験に影響しないように、シュノーケルを使うようにしたそうです。


実験ではまず、アブラムシの宿主となっているアルファルファの植木鉢を用意し、ヤギに食べさせ、その様子を観察しました。すると、コロニーを形成したアブラムシの実に65%が、アルファルファと共に食べられようとする寸前にパタパタと地面に落ちたそうです。

この集団落下は、植物の揺れ・突然影が落ちたこと・動物の息など、様々なことが引き金となって誘発された可能性が考えられますが、その後の実験では植物の揺れによってアブラムシの25%が落下するのに対し、ヒツジの息に反応して落下するアブラムシは50%以上という結果が出ました。なお、影に対してはまったく反応しなかったとのことです。

アブラムシの天敵であるテントウムシに対しても、動物の息により誘発されたような反応(集団落下)は見せなかったとのこと。


さらに、人工的に「息」を発する装置を用いた実験で、アブラムシは動物の息に含まれる二酸化炭素などの化学成分に反応するわけではないことが明らかになりました。装置の発する「息」が温かく湿っている場合のみ、つまり、哺乳類の息に近い場合のみ、アブラムシは反応し、乾燥した室内で高温・高湿度の「息」を浴びた場合には実に86%ものアブラムシが落下したそうです。

Inbar博士はこのアブラムシの護身術を「エレガントな解決策」と呼び、草食性の哺乳類に偶然捕食されがちなほかの種の昆虫も、同じ方法で身を守っている可能性が高いと考えているそうです。

「植物から落下することは、アブラムシにとっては失うものが非常に大きい行為です。にもかかわらず、哺乳類特有の温かく湿った息がキュー(合図)となりこのような反応を見せるということは、植物をすみかとする昆虫にとって、草食性の哺乳類による『意図せぬ捕食』が重大な脅威であることを示しているでしょう」とInbar博士は語っています。

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in サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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