サイエンス

ネズミも溶かしてしまう肉食っぷり、フィリピンで発見された巨大食虫植物


イギリスの探検家チームがフィリピン・パラワン州のビクトリア山を探検中に、げっ歯類をも捕らえるほど巨大な新種のウツボカズラを発見したそうです。

ウツボカズラといえば落とし穴のような捕虫器に虫を捕らえ、おぼれ死にさせたのちに消化酵素で徐々に溶かして養分とする代表的な食虫植物ですが、ここまで大きいともはや食肉植物といった方がふさわしいかもしれません。


詳細は以下から。(※一部グロテスクと感じられる画像があるかもしれないので注意してくださいRat-eating plant named after David Attenborough | Mail Online

Rat-eating plant discovered in Philippines - Telegraph

BBC - Earth News - Giant 'meat-eating' plant found

イギリスの自然史学者Stewart McPherson氏(26歳)と植物学者Alastair Robinson氏・フィリピンのVolker Heinrich氏のチームは、2000年にビクトリア山に登頂しようとして13日間遭難した2人の宣教師が巨大なウツボカズラを見たという目撃談を頼りに、2007年にビクトリア山登頂とこの植物の発見を目的とした2ヶ月間の探検へ乗り出しました。3人は共にウツボカズラのエキスパートで、これまでにも新種の植物を求めて世界の奥地を踏み分けた経験があるそうです。

ビクトリア山。


3人のガイドを含めた6人のチーム編成で出発し、山のふもとの森を抜ける際にはNepenthes philippinensisと呼ばれるウツボカズラの群生を観察したほか、新種の可能性があるピンクのシダや青いキノコも発見したそうです。


山頂に近づくにつれ森林は細り、岩と低木におおわれた地帯へ到達した一行。「標高1600メートルあたりで、突然1本の巨大なウツボカズラが目に入ってきました。そして2つ、3つと次々に現れたのです」とMcPherson氏は振り返ります。「見つけた瞬間に、この植物はいままで知られていない新種であることは明らかでした」

McPherson氏によるとウツボカズラは土壌から養分を得られないような過酷な環境に生育するため、動物(主に昆虫)から養分を採る必要があるそうです。捕虫器は虫を引き寄せるため鮮やかな色をしており、蜜も分泌します。引き寄せられた虫や小動物は消化液で満たされたつぼ状の部分にすべり落ち、もがき疲れるかおぼれて死んだのちに酸や酵素で溶かされ、多くの場合は骨しか残らないそうです。

今回発見されたウツボカズラの捕虫器は鮮やかな緑に紫の斑点で、周囲の植生からくっきりと浮き出ます。花や葉の形からボルネオに生育するNepenthes rajahに近い種であり、近隣のパラワン州やボルネオに分布するNepenthes floraともつながりがあるのではないかと推測されるそうです。


ボルネオに生育するNepenthes northianaがネズミを消化する様子。


チームはこの新種のウツボカズラの基準標本をパラワン州立大学の植物標本集に収め、植物学者のデイビッド・アッテンボロー卿にちなんで「Nepenthes attenboroughii」と命名しました。チームから「あなたにちなんだ名前をつけてよいでしょうか」と打診を受けたアッテンボロー卿は大いに感激し、「ありがとう」と即答したそうです。

テレビの自然番組の司会者としても有名なアッテンボロー卿、83歳。「こういった植物の中で最大でもあり、驚くべき種です。非常に名誉なことだと思います」と語っています。


「今回発見した植物は食虫植物の中で最大の部類に入り、捕虫器は虫のみならずラットほどの大きさのげっ歯類をも捕らえることができます。21世紀に至るまで発見されていなかったのは驚くべきことです」と語るMcPherson氏。この発見の詳細はドーセット州プールにあるMcPherson氏が経営する制作会社Redfern Natural Historyによりドキュメンタリー化が進行中であるほか、書籍化もされるようです。

なお、チームは下山中にやはり食虫植物であるモウセンゴケの新種も発見し、現在正式に登録するため準備中とのことです。また、1945年に唯一の標本が火事で失われ、この100年間野生で観察されていなかったウツボカズラのNepenthes deanianaも見ることができたとのことで、非常に実りの多い探検だったようです。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
世界の醜い植物トップ10が決定 - GIGAZINE

世界最大の花「スマトラオオコンニャク」が開花する様子を撮影したムービー - GIGAZINE

部屋の空気をきれいにしてくれる観葉植物ベスト5 - GIGAZINE

世界最古のソテツの鉢植え、植え替えが無事完了 - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by darkhorse_log

You can read the machine translated English article here.