日本アニメ100周年を記念して「100年後のアニメ文化のため」のプロジェクトがスタート


2017年、日本のアニメーションはなんと100周年を迎えます。この記念すべき年を迎えるにあたり、現在世界中から注目される日本のアニメーション技術を後世に残し、かつ、さらに進化・発展させていこうというプロジェクト「日本のアニメーション100周年プロジェクト」のスタートが発表されました。これは、100年後の日本アニメの担い手たちのための創造基盤を作り、世代・性別・国境を越えた世界中の人々に「夢と絆・愛と勇気・心豊かな感動・生きる力」を伝えることを目的としたプロジェクトです。

日本のアニメーション100周年プロジェクト
http://anime100.jp/

発表会の登壇者は左から株式会社タツノコプロ顧問 笹川ひろし氏、東京国立博物館フィルムセンター主任研究員 映画室長 とちぎあきら氏、株式会社アニプレックス代表取締役 植田益朗氏、株式会社サンライズ代表取締役社長 宮河恭夫氏、日本アニメーション株式会社代表取締役社長 石川和子氏、株式会社トムス・エンタテインメント上席執行役員 吉田力雄氏の6人。


日本のアニメーション100年の歴史の中で、2016年1月1日時点で判明しているタイトル数は1万1546作品、話数で言えば16万エピソードを超えています。これらは日本のアニメーションがスタートしたと言われる1917年から徐々に増えており、1917年から1919年までの期間に制作された作品の数が33件であったのに対して、2010年から2015年までの5年間で制作されたタイトル数は3564件と驚異的なペースで作品数を増やしています。

そんな日本のアニメーションの歴史の口火を切った作品、つまりは100年前に日本で作られたアニメが「なまくら刀」です。同作品は100年前のものとは思えないコミカルなタッチと吹き出しの使用など多くの工夫が見える作品である、と日本のアニメーション100周年プロジェクトの推進会議アドバイザーを務めるとちぎ氏。

さらに、日本アニメーションの原点と多くの人々が思いがちな「手塚治虫先生の鉄腕アトム」が登場する前に日本人に作成された、北山清太郎の「浦島太郎」や「煙草物語」、村田安司作品、くもとちゅうりっぷ政岡憲三が監督を務めた「桜」、瀬尾光世の「桃太郎の海鷲」に「桃太郎 海の神兵」、さらには35mmフィルムではなく家庭で使われる9.5mmフィルムでカラーのアート調のアニメーション作品を「アマチュア」ながら作成した荻野茂二の「AN EXPRESSION」など、初期の優れたアニメーション作品たちを紹介。こういった初期の優れた作品を見直し、これらから学べるところあるのでは、ということで日本のアニメーション100周年プロジェクトのひとつである「日本のアニメーション大全」というアイデアが生まれたことを明かしてくれました。なお、「日本のアニメーション大全」の詳細は後述。


続いて、日本のアニメーション100周年プロジェクトの推進会議で座長を務める植田益朗氏からプロジェクトの全体像についての説明が行われました。植田氏は機動戦士ガンダムからアニメーション制作に携わるようになったという人物で、「自分も日本のアニメ100周年と聞いてびっくり」と、日本のアニメーションが早くも100周年を迎えるという事実に最初は驚き、そして同時に、今後のアニメ業界のことを考えると危機感を覚えたそうです。また、その危機感は植田氏だけが抱いているものではなく「業界全体が募らせているもの」と説明。この危機をオールジャパンの精神で乗り越えるため、日本のアニメーション100周年プロジェクトの推進会議が結成された、というわけです。

ただし、この推進会議というのはあくまでも日本動画協会の中の有志企業が集まった「有志の会」に近いものだそうで、役割としてはプロジェクトのプロデューサー的なものであり、現場や関係者の協力がなければ成り立たないものである、と強く協力を求めています。大きく考えると、日本のアニメ業界が抱える問題というのは「人材の枯渇」と「経営基盤の脆弱さ」の2つだそうですが、ワールドワイドな視点で見れば日本の技術力はまだまだ抜きん出たものであるとのこと。こういった問題と強みを抱える中で、「今後どうやって競争力を持って世界で戦っていくのか?」「どうやって生き残っていくか?」「まだまだアニメの可能性を広げられるのではないか?」「付加価値を創造できるのではないか?」といった点に焦点が当てられた模様。

そして同プロジェクトは大きく分けて3つのコンセプトを設けています。そのコンセプトというのは、ひとつが「歴史を知り、積み重ねてきたものを系統化してアーカイブする」というもので、これは世界中の人々がアクセスできるようなものになるとのこと。これが「日本のアニメーション大全」なわけですが、さらなる詳細はこのあと。そして2つ目のコンセプトが「人材の発掘と育成」です。日本の若い人材、小学生などにアニメーションを作る喜びを体験してもらい、一日でも早く業界を背負ってくれるようなクリエーターを輩出することが目的となる模様。そして3つ目のコンセプトは「先端技術とのコラボレーション」とのことで、イベント・アーカイブ・コンテンツといったさまざまな面で地域・業界を超えたコラボレーションを実施していく予定とのこと。

そしてこの3つのコンセプト以外に「日本のアニメーション100周年」という点をよりアピールしていきたいと考えているそうで、そのためには企業の利益を超えた協力・取り組みの実施が必要になると植田座長。新しいことを始める際には痛みが伴うことがままあるが、日本が子どもも大人もみんながアニメを楽しめる国であるために、プロジェクトに邁進していきたい、と語りました。


続いて、この3つのコンセプトを達成するための施策のひとつである「日本のアニメーション大全」についてトムス・エンタテインメントの吉田氏からの説明。


日本を代表するコンテンツとして世界に認められている「日本アニメ」の、優れた作品やノウハウを伝えていくために設けられるのが「日本のアニメーション大全」。アニメ大全は大きく分けて3つのポイントを持っており、ひとつが「日本のアニメ大全」としての役割。これは、日本のアニメーション年表となるようなデータベースとなり、体系的に日本のアニメを世界に発信するためのツールになるとのこと。2つ目は「オーラルヒストリー」。100年後の未来へ向けたメッセージとなり、伝承すべき人たちの想い・技術・時代・社会・作品の根底などを集める模様。そして3つ目が「国際シンポジウム」で、世界に向けて日本のアニメーションを発信していく場を設けることになるそうです。


続いて「人材の発掘と育成」について。これには子どもに教え、育て、楽しむためのアニメーション教育プロジェクトの始動を考えているとのこと。具体的には2017年夏に「日本のアニメーション・サマージャンポリー」という企画を計画しているそうで、これは小さな子どもを集めてクリエイターとアニメ制作のブートキャンプに参加してもらう、という企画になる模様。小さな頃に実際に絵を動かす経験をさせることでアニメーション制作に興味を持ってもらうことが目的となっています。その他にも、障害者向けのアニメセミナーや、100年後の未来を創る子どもたちへのメッセージアニメーションの制作、デジタルアニメーター化プロジェクトなどが計画されています。


アニメーションの未来と教育に関するトークでは日本アニメーションの石川社長が「アニメーション制作から得られるモノは多い」「教育カリキュラムの中にアニメーションの何かしらを取り入れてもらえるように取り組んでいく」と語っています。


続いて「アニメNEXT100」ということで、100年後の日本アニメのための施策としては、日本のアニメーション文化とパワーを国内外に発信していくこと挙げています。サンライズの宮河社長は海外展開と国内展開は「分けて考えている」と語っており、「国際フェスティバル×国際巡回企画展」や「企画上映会×シンポジウム セミナーカンファレンス」といった、アニメと産業の新しい関わり方や、アニメと先端技術のコラボレーションなどに注力することを明かしています。


プロジェクトの全体像を話し終えたところで、ゲストトークとしてタツノコプロの笹川ひろし氏とのトークセッションがスタート。100周年プロジェクトの感想を聞かれたとこと、笹川氏は「びっくりぽんですね」と朝ドラのセリフを引用したお茶目な回答で会場を沸かしていました。また、2017年でタツノコプロも55周年を迎えるとのことで、「これからのアニメ業界は大変だけど、このプロジェクトは今後アニメ業界に飛び込みたいという人たちに勇気与えるものになる」と語っています。また、手描きのアニメにデジタルが取り入れられ、色塗りなどは一気に素早く仕上げられるようになったにも関わらず、「アフレコの時点でまだ絵がない」ということがいまだに続いているという制作側の視点を挙げ、こういった問題も何とか解決していきたいとコメント。


さらには笹川氏は自身が若い頃に漫画家になりたくて地元の会津若松から手塚治虫先生に漫画の原稿を送っていたというエピソードを語り始め、「これは是非アニメ大全のオーラルヒストリーに」と植田座長から鋭いツッコミが入る一幕も。


その後、日本のアニメーション100周年プロジェクトのロゴが発表され、登壇者とのフォトセッションも行われて発表会は無事終了しました。

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in 取材,   アニメ, Posted by logu_ii