人工衛星の観測する大量のデータをリアルタイムで受信できる中継システム「EDRS」が打ち上げられる
欧州宇宙機関(ESA)はAirbus Defence and Spaceと共同で、宇宙空間から大量のデータを高速に送受信するためのシステム「European Data Relay System(EDRS)」を開発し、宇宙に打ち上げました。EDRSは人工衛星の観測結果や国際宇宙ステーション(ISS)のデータをほぼリアルタイムに送受信できる能力を持っています。
Europe Is Building a ‘Space Data Highway’ With Lasers | Motherboard
http://motherboard.vice.com/read/europe-is-building-a-space-data-highway-with-lasers-esa-edrs-satellite
EDRSがどのようなシステムなのかは、以下のムービーを見れば一発で理解できます。
EDRS: using lasers where it counts - YouTube
自然環境の変化は、国際流通にとって大きな障壁となり得ます。
例えば、海上に漂う流氷がどの地域にどれくらいの規模で存在するのかという情報は、海上輸送の安全性を大きく左右します。
このような環境に関する情報を、人工衛星は観測することが可能です。しかし、検出した大量のデータを即座に地上に送ることは不可能です。
そこで、人工衛星の検出した大量のデータを一括して、ほぼリアルタイムで地上に送り返すための中継機の役割を果たすのがEDRSです。
人工衛星からデータを宇宙空間で受け取ったEDRSは、強力なレーザーを使って即座に受け取ったデータを地上に送り返します。EDRSによって地上から人工衛星の情報をリアルタイムで受信できるようになるというわけです。
このような広範囲の自然環境をリアルタイムで把握する技術は、災害の救助活動で大きな威力を発揮します。
一刻を争う緊急事態では、情報伝達のスピードは災害での救助支援活動の品質に直結するからです。
さらに、EDRSは地上からの命令を受けて人工衛星のプログラムを更新する能力も持っています。
災害などが発生した場合に、即座に人工衛星のプログラムを変更する命令が地上からEDRSに送られると……
EDRSを介してその命令は人工衛星に到達。
状況に応じて人工衛星の動きを変えられるというわけです。
EDRSによって、必要なときに必要な場所の衛星情報が得られるようになります。
EDRSは人工衛星だけでなく、ISSと情報をやりとりすることも可能です。
ISSで実験をする宇宙飛行士たちが得たデータを……
EDRSが受け取り、レーザーで地上に送信。
これによって、宇宙空間で起こっている情報をほぼリアルタイムで地球上から知ることができ、宇宙実験の結果の解析がこれまでよりも早く行われ、その結果はISS側にもすぐに反映されるため、宇宙での研究活動が大きく進展すると期待されています。
EDRSは高度3万6000キロメートルよりも高く巡回します。宇宙空間での通信速度は最大で1.8Gbpsを誇るとのこと。
EDRSの射程範囲は広く、約4万5000キロメートル以内の人工衛星とデータの送受信が可能です。
人工衛星やISSのデータをほぼリアルタイムで送受信できる「EDRS-A」を載せたロケットが、2016年1月29日にカザフスタンから打ち上げられました。EDRSを打ち上げる様子は以下のムービーで確認できます。
EDRS-A liftoff - YouTube
無事に打ち上げられたEDRS-Aは、地球の環境観測を行うCopernicus Sentinelと連携して、データを送受信に使用されるとのこと。また、2017年にはEDRS-Cを、2020年までに3機目のEDRSを打ち上げる計画で、2018年からISSのデータ中継機能が実用化される予定となっています。
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