iPad ProがまだノートPCの代わりになり得ない理由

Appleのティム・クックCEOが「ノートPCを置き換える」と発言するなど、タブレットとしては類を見ないほど高い性能を持つ「iPad Pro」ですが、PCWorldのゴードン・モー・ユン氏は、各種ベンチマークを実行したり、アプリを実際に使ってみて「ノートPCを置き換えることはできない」という結論を下しています。そこには単に高性能なだけではどうしようもない事情もあるようです。

Tested: Why the iPad Pro really isn't as fast a laptop | PCWorld
http://www.pcworld.com/article/3006268/tablets/tested-why-the-ipad-pro-really-isnt-as-fast-a-laptop.html

ユン氏は、ベンチマーク結果でiPad Proがタブレットはおろか、高性能ノートPCをも上回る結果をたたき出したとする一連のレビューに対して、一つのベンチマークソフトの結果だけを鵜呑みにするのはよくないと、さまざまなベンチマークで性能を比較しています。

これはGeek Benchでのシングルコア性能を比較した図。iPad ProのA9XプロセッサはSurface Pro 4のCore i5-6300を上回るなど、一線級のノートPCを凌駕する高いスコアをたたき出しています。

ただし、マルチコア性能ではiPad ProはSurface Pro 3にわずかに及ばないなど、結果は変わります。これはIntel CPUの持つハイパースレッディングテクノロジーが影響している可能性があるとユン氏。

Geek Benchでは極めて高いスコアをたたき出したiPad Proですが、TabletMark V3では、Intel Core Mプロセッサを採用するDell Venue 11 Proにも及ばない結果に。

より実践的なベンチマークと言うことで、ウェブブラウジングやメール閲覧での体感速度の目安となる「Web/Email」モードでは、iPad Proのスコアはさらに低下し、Tegra K1を採用するNexus 9とほとんど差がない状態に。

写真やムービーの閲覧・視聴の快適性の目安となる「Photo/Video」モードでも、やはりIntel製プロセッサを採用する高性能ノートPCには及ばない結果となっています。ただし、TaleMark V3の結果は、体感できるCPU性能をそれほど反映していないとユン氏は述べており、あくまでベンチマークとして参考にするべきだとのこと。

他にも3DMarkでグラフィック性能を比較しましたが、iPad ProはIntel製CPUの持つグラフィック性能にスコアの点では及ばなかったそうです。ちなみに、グラフにはありませんが、SkylakeシリーズのCore m3を搭載したASUSのUX305は、トップ3に食い込むほどの高いスコアを出したことから、SkylakeシリーズのCPUは総じて高いグラフィック性能を持つ可能性があるとのこと。

もちろんベンチマークスコアだけで性能を測ることは妥当ではないため、ユン氏は一般的なソフトウェアとしてExcelを使って性能比較を行っています。なお、WordではなくExcelを採用した理由は、Excelの方がCPUをより最大限に使うからとのこと。

ところが、iPad ProのExcelアプリではスプレッドシートを開くことができない場面があったとのこと。これはMicrosoftがMacプラットフォームではWindowsプラットフォームと同等レベルで機能をサポートしていないことが原因のようです。もっとも、「iPad Proが悪いわけではない」としつつも、iOSのExcelアプリでできない作業があるという事実が、iPad ProがノートPCと「すべて」同じようには作業できないことを示しているとユン氏は述べています。

さらに、1GBのファイルを解凍する速度を比較したところ、iPad Proはやはり、Intel CPU採用のノートPCに及ばない結果になっています。

ユン氏は各種ベンチマーク結果やソフトウェアを使用してみた結果、「iPad ProがノートPCの代わりにはならない」と結論づけています。これは、単に性能上の問題だけでなく、対応するソフトウェア(アプリ)の種類や完成度に起因することが多いためで、iPad Proの性能自体はタブレットとしては抜群なことも事実であるため、時間を経て対応アプリの質・量の両面での充実を待つ必要があるという結論のようです。