サイエンス

タランチュラのナノ構造が生み出す「青色」が広視野角ディスプレイの未来を担う?

By Martin Abegglen

「タランチュラ」というのはヨーロッパの伝説に登場する毒蜘蛛を指す言葉です。そんな物騒な名前を冠したクモが世界には多数存在し、カラフルかつ毛むくじゃらな見た目や、想像以上に大きなサイズ感などから「苦手、というか絶対触れない!」という人も多いかと思います。しかし、そんなタランチュラが「広視野角のディスプレイ開発」に大きな影響を与えるかもしれない、とする新しい研究結果が公開されてました。

Blue reflectance in tarantulas is evolutionarily conserved despite nanostructural diversity | Science Advances
http://advances.sciencemag.org/content/1/10/e1500709

Blue tarantulas may help humans make better wide-angle computer displays | The Verge
http://www.theverge.com/2015/11/27/9786868/tarantula-blue-iridescent-nanostructures-computer-displays-biomimicry

アクロン大学の研究チームが「タランチュラの青色は鮮やかな彩色にも関わらず、少なくとも人間の目には、虹色ではなく青色に見える」という研究結果を公表しました。これは「タランチュラの青色」が明暗などで見え方を変えないことを示しており、自然界においていつどの角度から見てもきれいな青色に見える、ということを指します。

この「タランチュラの青色」についてより詳細に調査すべく、アクロン大学の研究チームは顕微鏡検査技術を用いてタランチュラの体毛を分析したそうです。この分析により、タランチュラという種は「タランチュラの青色」を生み出すために特定の色素などは使用していないことが明らかになっています。

By John

それでは「タランチュラの青色」がどうやって生まれているのかというと、クモの体毛にあるナノ構造が青色の光を反射することで鮮やかな色味が表現されている、とのこと。なぜこの「タランチュラの青色」が特別なのかというと、光の反射だけで「いつどこから見ても鮮やかな青色」を表現するからです。通常の場合、光を反射すると虹色に見えたりするところを「常に青色に見える」というのが非常に特殊だそうです。なお、タランチュラの体毛のナノ構造は、タランチュラの種類ごとに異なることも明らかになっています。


今回の発見で最も重要なのは、「タランチュラの青色」が明暗や角度などで見え方を変化させない、という点です。「タランチュラはTVや電話、その他デバイスのような色を生み出す技術をより見やすくするための重要なモデルになる可能性がある」とアクロン大学のTodd Blackledge氏は語っています。具体的には、「より省エネな広視野角ディスプレイ」を開発するヒントになるかもしれないとのこと。

実際、今回の研究結果が公表されてからほとんど全ての科学者が「タランチュラの青色は何か重要な目的に役立つ」と述べているそうで、研究チームの一員であるアクロン大学のBor-Kai Hsiung氏も「タランチュラがどうやって『タランチュラの青色』を生み出しているのかが判明すれば、構造色を応用する際の最も大きな制約を解決できるかもしれない」と語っています。ただし、研究者はタランチュラのどの構造が「タランチュラの青色」を生み出すか知っていても、どうやって青色を再現するかまでは理解しておらず、今後は「タランチュラの青色」を再現するための方法を模索していくことになる、とのこと。

By Barry Peddycord III

なお、タランチュラの中には体が青色の種が少なくとも40種類はいるそうですが、なぜこれほど多くのタランチュラが鮮やかな青色をしているのかは分かっていません。タランチュラは視覚が優れておらず、若いタランチュラは成年期に脱皮する際に青色を失います。そのため、タランチュラの体が青色なのは「仲間を識別するため」ではないと考えられています。なお、タランチュラは視覚の代わりに振動を用いて周囲の状況を把握したり求愛行動を行ったりします。

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in サイエンス,   生き物, Posted by logu_ii

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