ドップラー効果を使って星を見つける方法
by Matt Hendrick
「サイレンの音は近づいてくると高い音に聞こえ、遠ざかると低い音に聞こえる」という言葉でよく表現される「ドップラー効果」は、実は宇宙の探索にも使われています。「音」ではなく「光」のドップラー効果が利用される宇宙探索の方法について、天文学者のラドミラ・トーパロービック博士がデモムービーで解説しています。
VimeoAlien worlds and the Doppler effect
グリニッジ天文台で「天の川は4000億個の星々で構成されています」と語るのは天文学者のラドミラ・トーパロービック博士。天の川を構成するの星々の回りにはさらに惑星が旋回していると考えられていますが、地球からあまりにも離れているため、これら星の存在をカメラで撮影して確認するのは非常に困難です。
そこで、星の存在を確認するためには、もう少しテクニカルな方法が採られます。
星に見立てたボールを手にするトーパロービック博士。ボールは1つだけで、周回する惑星がないことを示します。
床でボールをスピンさせると、その場でくるくると回ってやがて止まりました。
続いて用意したのは惑星付きの星を模したモデル。大きめのボールと小さめのボールが棒で接続されています。
床でスピンさせると……
星を中心に惑星がくるくる回りますが、先ほどとは違って全体的にぐらついているのが分かります。これは2つのボールが互いの間にある質量中心の周りを旋回しているため。
星と惑星の関係にも2つのボールと同じことが言え、ぐらつきが存在します。そこで、ドップラー効果を使ってこのぐらつきを観測することで、惑星の存在を確かめるわけです。
続いてトーパロービック博士が取り出したのはスピーカー。今度はスピーカーを星に見立ててドップラー効果を説明します。
「ピー」と高い音を発するスピーカー。
これを袋の中に入れて……
頭上でぐるんぐるんと回します。
すると、音を変化させているわけではないのに、スピーカーがカメラから離れるほど音が低く、カメラと近づくほど音が高くなりました。これがドップラー効果と言われるもの。
次は録音したスピーカーの音をスペクトログラムで解析していきます。
以下のスペクトグラムの縦が周波数、横が時間を表します。
オリジナルの音は3200ヘルツで、もしスピーカーを回転させなければ手で示しているあたりに直線が引かれたはずでした。スピーカーを回転させることでドップラー効果が生まれ、波が描かれたわけです。
トーパロービック博士によると、ドップラー効果は音だけでなく、光でも発生するとのこと。
星と惑星は重力の関係で二者間にある質量中心の回りを旋回することになりますが、この時に生じる揺らぎが、光のドップラー効果を生み出します。
星から放たれる光のスペクトラムには、光が物質に吸収されて生じる暗線が存在します。
可視光線は青色になるほど波長が短く、赤色に近づくほど波長が長くなります。光がどの物質に吸収されたかによって暗線が何色の位置に出るかが決まるので、同じ成分に吸収されたのであれば、本来は常に同じ位置に暗線が現れるはず。暗線の位置がずれるということは、星が遠ざかったり近づいたりしていること意味し、観察している星に惑星が存在して「ゆらぎ」が生じていると分かるわけです。
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