無料でピクサーアニメの作り方を本格的に学べる「Pixar in a Box」
質の高い教育を無料で公開する教育ウェブサイトのカーンアカデミーがピクサーと協力し、学校の数学を使ってピクサーのアニメーションの作り方が学べる「Pixar in a Box」を公開しました。ピクサーのアニメがどのように作られていて、数学がどこに使われているのか、というざっくりした解説から、加重平均を使ったキャラクターモデリングや幾何変換を使ったセット作りなどなど、実際に「授業ムービーを見る」「問題を解く」ことを繰り返して技術を身につけられる内容になっています。
Pixar in a Box | Khan Academy
https://www.khanacademy.org/partner-content/pixar
トップページにアクセスしたら、まずは画面右側にある「Start here!」をクリック。
すると、モンスターズ・インクのマイクとともにイントロダクションのページが出現。さらに「Start here!」をクリックすると……
「Pixar in a Boxとはどんなものなのか?」という事を説明するムービーがスタート。
ムービーでは「そもそもピクサーではどのようにアニメーションが作られているか」という現場の様子も公開されており、アニメーション制作の一連の流れと、Pixar in a Boxの学習内容の両方がざっくり把握できるようになっていました。
Overview of Pixar in a Box - YouTube
ということでムービーは実際にピクサーでアニメ製作を行っているアレックスさんとフランさんによって進行されていきます。
Pixar in a Boxはピクサーアニメで使われている基本的なスキルを学べるようになっています。例えば、1つのキャラクターを動かすにしても、まずは紙にデザインして……
模型作り。
それを2Dにして……
数学や科学のスキルを使って動かしていきます。
また、一言でアニメ作りといっても、ピクサーにはさまざまな技術を持った人が関わっています。アーティストや……
科学者
アニメ―ター
コーダ―
模型デザイナーなど。
学校で数学を学んでいると「この勉強は一体何の役に立つのだろうか?」と思うかもしれませんが、これらピクサーの技術者たちの多くは学校で学んだ数学をクリエイティブな仕事のために使用しています。
Pixar in a Boxは学校で学んでいる数学がどのようにアニメーションを生み出しているかを教えてくれる場所というわけです。
ということで、実際にピクサーでのアニメ作りの現場を見てみます。
ピクサーでは日々多くのアニメーションが生まれていますが、いずれも最初は小さなアイデアから始まります。トイ・ストーリーのジョン・ラセター監督は「子どもたちが部屋からいなくなると、オモチャたちに命が吹き込まれるんだよ!僕にはわかる。僕のオモチャたちはそうなんだ」と熱く語って当時を再現。
そして1つのアイデアからストーリー作りが始まります。
監督とライターたちがマンガを描くようにして、鉛筆で物語の展開を書き連ねています。
一方で、プロダクションデザイナーとそのチームは世界観やキャラクターを構築していきます。
グラフィックを作ったり……
模型を作ったりということが行われます。
キャラクターや世界観作りが行われているのと別のラインでは、ストーリーボードが編集の段階に入っていきます。
音楽やサウンドエフェクトがストーリーに加えられていきます。初めは以下のようなラフ画からスタート。
そして素材などが上がってきたら、その都度シーンがアップデートされていくわけです。まだ少しポリゴンっぽさが残るウッディーたち。
何度も何度もアップデートが加えられることでシーンが本格的になっていきます。
最終的に以下のようなエフェクトまで加えられるわけですが、これらは全て数学を応用しているわけです。
ムービーはより技術的な部分へ。「ここで働いて9年になるけど、僕らの考えたストーリーがどうやって映画になっているのか、さっぱり分からないよ」とアレックスさん。
新たに登場したゲイレンさんという女性に「それぞれの映画で、どんなところが難しかった?」とアレックスさんが聞くと、「トイ・ストーリーの場合は全てね」とゲイレンさん。
トイ・ストーリーの場合、全てのプロセスを一から発明したとのこと。
モンスターズ・インクの場合は毛皮と服の質感。
カーズの場合は反射と金属の表面の質感などが大きな挑戦となったそうです。
インサイド・ヘッドの場合はキャラクターがふんわり青く光っていますが、これは光る粒子に包まれているため。このエフェクトも大きな課題となった様子。
これが実際にキャラクターをモデリングしている現場。
「彼女は手強くて、これは17番目のバージョンなの」とのことです。
続いては映画のセット作り。カーズ2では3DCGでロンドンの町並みが再現されました。
1つ1つのパーツを組み合わせて家造りを行い、それを繰り返すことで大きな町を建築していきます。
町並みが完成していないときは、灰色ののっぺりした建物の間を車が走っていくことになります。キャラクターや町並みの造形に使われるモデリング技術の基本も、Pixar in a Boxで学べるところ。
また、別の現場では粘土で作ったかのようなモデルに……
テクスチャーをつけていきます。
そして、例えばMr.インクレディブルの以下のシーンには1秒に24コマほどが詰め込まれていますが……
1つ1つのコマにはレンダリングによって一体化したアート・数学・科学といったさまざまな要素が詰め込まれています。なお、1つのコマをレンダリングするのに24時間以上かかるそうです。
そして、膨大な技術と時間の結晶として、世の中に映画が送り出されるわけです。
ということで、ムービーが終了したら以下のような画面に切り替わります。ここからはPixar in a Boxの授業がどんな感じで構成されているのかを見ていきます。Pixar in a Boxは複数の授業や実践問題から構成されており、ムービーを1つ見るごとにポイントをゲットできるで、ここまでの進捗をセーブするためにも「Save progress」というボタンをクリック。
自分の進捗を記録するにはアカウント登録を行う必要があります。登録はFacebook・Gmail・eメールいずれかから行えるので、今回はGmailで登録してみます。
アカウントとパスワードを入力して「ログイン」をクリック。
「許可する」をクリック。
すると、以下のような画面に切り替わりました。授業を続行するには「Learn new stuff. Onward!」をクリックします。
これが「Learner's guide(学習する人用のガイド)」。左側には「Start here!」「Learner's guide」の他に「Educator's guide(教育者用のガイド)」もありました。
学習する人用のガイドを見てみると、授業内容は大きく6つに分けられています。まずはメリダとおそろしの森の草原の葉っぱが放物線アーチを使ってどのように作られているのかを解説した「環境モデリング」
粘土で作られた模型を加重平均を使ってデジタルに移行する方法を解説した「キャラクターモデリング」
組合わせ論を使ってウォーリーに出てくるロボットの群れが作られる様子を解説した「クラウズ」
アニメーターがキャラクターに命を吹き込む方法を教えてくれる「アニメーション」
「セット&足場」ではコンピューターグラフィックスにおける幾何変換で、映画のセットがどのように作られているのかを解説しています。
そして最後は「レンダリング」。線型方程式を使ってどのようにピクセルが描かれているのかを解説しています。
例えば環境モデリングを見てみると、授業は「放物線を使った草のモデリング」と「放物線を計算する」の2つに分けられていました。
授業はムービーを使った解説と……
実際に問題を解いたり、放物線を描いたりするパートが交互に組み合わさっていて、いずれも何度でも繰り返すことが可能なので、インプットとアウトプットを納得がいくまで、自分のペースで行えるようになっています。
環境モデリングの場合は全部で5つの項目があり、ムービー視聴と問題の解答を繰り返すことで確実に技術を身につけていくことが可能なわけです。
なお、授業ムービーの一例は以下のような感じです。
EM5 FINAL - YouTube
授業を公開しているカーンアカデミーはサルマン・カーン氏が「質の高い教育を、無料で、世界中の全ての人に提供する」というミッションを掲げて運営している非営利の教育ウェブサイトで、Googleやビルゲイツ財団からも支援されています。コンテンツの体系化と教え方が秀逸と言われるカーンアカデミーとピクサーが共同して作ったとあってPixar in a Boxは技術面でのアニメーション作りを一から学べるようになっており、アニメーション作りに興味がある人はもとより、数学ってどう役立つの?という子どもの疑問に答える一例としても非常に興味深いものとなっていました。
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