IKEAが導入予定の充分な生活賃金を算出できる「MIT生活賃金計算方式」とは？

By SoundTransit

多くの国で法律によって最低賃金が定められていますが、生活する場所の物価や人によって必要な生活賃金は異なり、時には合法的な最低賃金が貧困率を高めることもあります。そんな人や家庭ごとに必要な生活賃金を算出できる「MIT生活賃金計算方式」が開発されました。2015年からIKEAがこのツールによる新しい賃金体系の導入を予定しており、アメリカのIKEAで働く数千人の従業員の最低賃金がアップすることになります。

Meet the woman behind Ikea's living wage calculator - Marketplace
https://www.marketplace.org/2014/08/06/meet-woman-behind-ikeas-living-wage-calculator/

2015年にIKEAはアメリカの店舗で新しい賃金体系を採用する予定であることを発表しました。IKEA従業員の平均最低時給は10.76ドル(約1100円)となり、以前より17％の増加になる見込みです。最低賃金はMITの教授の研究プロジェクトのツールである「MIT生活賃金計算方式」が使用されており、何千人ものアメリカ人に影響を与えるとのこと。

By Noodles and Beef

この計算方式はMIT経済地理・地域計画学部のエイミー・グラスマイヤー教授のアイデアが元となっています。彼女は趣味で旅行に出かけた際に地域の食料雑貨店やアパートのの価格設定を調査しており、特定の場所に高い貧困率が生じることに気づきました。そして調査結果から貧困率の高い地域では、州法が定める最低賃金の仕事が多いことが判明。グラスマイヤー教授は「それは人々が生活するために充分な金額ではありませんでした」と話します。

◆MIT生活賃金計算方式とは？

By eFile989

グラスマイヤー教授は生活する場所ごとに必要なコストを割り出すため、優秀な大学院生を選抜して巨大なスプレッドシートを作成。シートには政府および工業統計の中から最も有効な地域データを用いて、住宅・食費・育児・医療費・交通費などのコストが列挙されています。次に算出されたコストを合計した数値を、1年間に1人が働く時間で割って時給に換算することで、人それぞれに必要な最低賃金を正確に把握でき、家族数による調節も可能となります。

グラスマイヤー教授によると、この計算方式が算出する最低賃金は、あくまで生活必需品を充分に入手できる金額として算出しており、「中流階級」をモデルにしていないため、1年に1度のハワイ旅行といったコストは含まれていないとのこと。

By liz west

この計算方式が発明されて以来、政策通・労働組合・小事業主に至るまで複数の組織からひっそりと反響がありましたが、IKEAがこの計算方式を使った賃金体系の導入を検討していることが大きく報道され、一躍知名度を上げました。アメリカのIKEAのロブ・オルソン社長は「我々はMIT生活賃金計算方式によって正しく従業員への気配りができると信じています。正当な最低賃金が支払われることで、従業員のやる気を引き出すことができ、売上げを増加させる機会となるでしょう」と話しています。

計算方式の導入が予定されている2015年1月からは、物価が高いワシントンD.C.で働くIKEAの従業員の1時間あたりの最低賃金は13.22ドル(約1350円)となり、比較的生活費が安く済むピッツバーグでは8.29ドル(約840円)になる予定で、州法の定める最低賃金より約1ドル(約100円)多く支払われることになります。ただし、現状の計算方式は2010年～2012年のデータに基づいたものであるため、グラスマイヤー教授はIKEAに対して、「物価の上昇などを考慮した最新版を2014年9月ごろに公開する」と伝えています。