映画

「史上最悪の映画」に選ばれたインド映画の知られざる真実とは?

By Yash Raj Films

ジョン・トラボルタがドレッドヘアのエイリアンを演じる「バトルフィールド・アース」、「トロル2/悪魔の森」、北米のビデオレンタルでしか見られない「イシュタル」、第24回ゴールデンラズベリー賞の最低作品賞を始めとする8部門にノミネートされ、7部門を受賞した「ジーリ」など、「最悪の映画」と呼ばれるさまざまな映画が存在しています。映画情報サイト「インターネット・ムービー・データベース(IMDb)」によって「歴史上最悪の映画」を決定する投票が行われ、投票結果だけではわからない深刻な問題が潜んでいることが判明しました。

The Story Behind the Worst Movie on IMDb | FiveThirtyEight
http://fivethirtyeight.com/features/the-story-behind-the-worst-movie-on-imdb/

IMDbのレートは10段階の評価を投票する仕組みとなっています。IMDbのデータベースの中から「史上最悪の映画」を決定する投票を募ったところ、4万4000の投票を獲得し、なんとIMDbレート「1.4」ポイントという類いまれな低評価を受けた史上最悪の映画が、2014年のインドボリウッドアクション映画「Gunday」に決定しました。


以下のページに詳しい書評が記載されています。

【Gunday】 : ポポッポーのお気楽インド映画

ストーリー
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1971年、バングラデシュ独立戦争で孤児となったビクラムとバーラーは難民としてカルカッタに流れ着く。2人は生きるために何でもやり、やがて列車から石炭を盗み、それを売って生計を立てるようになった。

それから10数年後、成長したビクラム(ランヴィール・シン)とバーラー(アルジュン・カプール)はカルカッタの闇経済を牛耳る大物になっていた。大きな倉庫を持ち、さまざまな商品を取り扱う経済マフィアだが、貧しい者には味方となり、庶民の英雄的な存在だった。


ビクラムとバーラーに手を焼いた警察は、2人を摘発するため敏腕刑事のサティヤジート(イルファーン・カーン)をカルカッタに赴任させる。サティヤジートは2人の本拠に乗り込み、2人に戦線布告する。

ビクラムとバーラーはキャバレーで見かけたダンサーのナンディター(プリヤンカー・チョープラー)に一目ぼれをする。しかも、2人同時に。固い友情で結ばれた2人はナンディターにどちらを選ぶか答えをもらい、選ばれなかった方は潔く身を引くと約束し合った。だが、ある出来事をきっかけにして、ナンディターを巡って2人の友情に亀裂が入り始める。
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なお、Gundayのトレーラームービーは以下から見ることができます。

GUNDAY - Trailer - Ranveer Singh | Arjun Kapoor | Priyanka Chopra | Irrfan Khan - YouTube


IMDbには現在23万5000本もの映画が存在し、その中で平均IMDbレートは6.31ポイント。その内の半分の映画を見ても5.5~7.2ポイントのレートが付けられているため、「1.4」という数字はIMDbの中でも断トツの低評価です。しかし、ブログの投稿者David Goldenberg氏は「Gundayの説得力のないキャラ設定などは否めませんが、ダンス・シーンは紛れもなく一流で、衣装も愉快です。イルファーン・カーンが演じた『世の中に嫌気がさしている警官役』は、ファンの期待通りの役柄です」と、評価と内容がかみ合っていないことを指摘しています。

また、New York Timesのレイチェル・サルツ氏はGundayについて「紛れもなく愉快」とレビュー記事を投稿しており、映画評論家のロジャー・イーバート氏は公式サイトのレビューで最高4星の中で3星と高く評価しています。他にも「陽気なエンターテイメント犯罪ドラマ」と呼ばれたりと、IMDbの投票結果とは異なる評価を得ています。


Goldenberg氏によると、いくつかの著名な評論家の高評価にも関わらず、GundayがIMDbで「史上最悪の映画」の名を獲得するほどの低評価を得たのには、あるグループの恨みを買ってしまうストーリーが原因であるとのこと。調査の結果、IMDbのGundayに対する4万4000の投票のうち3万6000はアメリカ国外からのものであることが判明。また、その内91%が「レート1ポイント」で投票しており、ソーシャルメディアに精通したグループによって人為的に最低評価へと操作されていたとのこと。

操作による抗議を行ったグループは、1971年のバングラデシュ独立戦争民兵組織の一員として何百人もの民間人を殺害したとして絞首刑に処されたイスラム教徒リーダーのAbdul Quader Mollaによって設立された「Gonojagoron Moncho/National Awakening Stage」と呼ばれるバングラデシュ民族運動で有名なグループということがわかっています。


反感を招いた原因はGundayの冒頭11分間にあり、今なお続くインドとバングラデシュの対立を招いた「第三次インド・パキスタン戦争」において、インドがパキスタンに単独勝利したことが主張されており、バングラデシュの独立はこの戦争の勝利によるものであることが示唆されているとのこと。これに憤慨したGonojagoron MonchoがIMDbへの操作投票を行ったほか、「もしあなたがバングラデシュ人なら、私たちの独立の歴史をねじ曲げるインドの下らない映画をボイコットしよう!!」と呼びかけるFacebookグループも出現。


ダッカ大学ジャーナリズム学のFahmidul Haq准教授は、「1971年の戦争におけるインドの役割をボリウッド映画で過剰に演出することは、活動的な『宗教支持派』『パキスタン支持・反インド派』のオンラインユーザーを刺激します。IMDbについては双方のグループから操作投票を受けたと考えられます」と推測。バングラデシュの外務省は、Gundayに対して正式の抗議を申し出るなど、数々の問題が起こっています。

映画を制作したYash Raj Filmsは「このフィクションが人々の感情を混乱させているなら間違いなく我々の不注意です。心からの後悔を明らかにしたいと考えています」とコメント。IMDbの担当者はこの騒動について、「今回のことを参考に投票システムの改良を行う必要がある」と話しており、Goldenberg氏は「クラウドソーシングは時に世界を誤解させる強力なツールになり得ます。今回のようにサンプルが巨大であれば、人々はそれが真実であると仮定してしまいがちです」と警告しています。

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in 動画,   映画, Posted by darkhorse_log

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