独力で「テアニン」サプリの効果を確かめる盲検自己実験をした方法と結果とは?

健康にはさまざまな要因が関係しているので、1つの栄養素が効果を発揮しているかどうかを調べることは難しく、これまで多くの研究が重ねられているにもかかわらず、サプリメントの効果を調べた研究結果はまちまちです。日本の玉露から見つかったうまみ成分「テアニン」のサプリの効果を16カ月かけて検証した手法とその結果を、ブログのDynomightが公開しています。
My 16-month theanine self-experiment
https://dynomight.net/theanine/
テアニンサプリはインターネット上で人気で、不安や落ち込んだ気分を改善したり、記憶力を向上させたりする効果がうたわれているほか、人生が変わったと主張する人もいます。確かに、テアニンは神経伝達物質であるグルタミン酸に関連しており、血液脳関門を突破することも可能なので、テアニンがリラックス効果をもたらしてくれるというのは生物学的には妥当に思えます。
ところが、Dynomightが調べた限りでは、テアニンを対象とした研究の結果はいずれも「効果ゼロもしくはごくわずか」で、研究自体もあまり信頼性の高いものではなかったとのこと。唯一Dynomightが評価している研究は、伊藤園の研究者らが2021年に発表したものですが、これは高齢者の認知機能に焦点を当てたもので、ストレス緩和や安眠効果などは研究テーマではありませんでした。

コーヒーよりもお茶の方がリラックスできることに気がついて以来、10年以上にわたりテアニンサプリを愛用し、その効果も実感しているというDynomightの筆者は、自分でその科学的な根拠を検証することにしました。
実験にあたり、Dynomightはまずテアニンとプラセボを用意することにしました。そして、カプセルの見た目が似ていることや重さが同じこと、一定の歴史があるメーカーが製造していることなどの条件に合う市販品を探したところ、サプリメーカーのNow Foodsが製造しているテアニンサプリとビタミンDサプリがちょうど実験にぴったりでした。
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実験手順は次のとおり。
・3分の2の確率でテアニンを、3分の1の確率でプラセボを摂取するように、マグカップに「200mgのテアニンが入ったカプセル」を2つと、「25マイクログラム(1000IU)のビタミンDが入ったカプセル」を1つ入れる。
・ストレスを感じたら、主観的なストレスレベルを1~5で記録し、マグカップを振って中を見ないようにしつつカプセルを1つ取り出して飲む。
・1時間後のストレスレベルと、テアニンを飲んだという予測をパーセンテージで記録する。
・マグカップの中を見て、飲んだのがテアニンかプラセボかを記録する。
実験に使ったカプセルの見た目は以下のとおり。3つあるカプセルのうち上の1個がプラセボ用のビタミンDサプリで、残り2つがテアニンです。

実験は16カ月行いましたが、データポイントがなかなか増えないので、最後の2カ月はストレスを感じなくても毎日服用しました。これにより、最終的に94件のデータポイントが得られました。
その結果をグラフにしたのが以下。青色の線がテアニン、オレンジ色の線がビタミンDで、縦線は飲む前(小さな横線)と飲んだ後のストレスレベルの振れ幅を意味しています。テアニンでもプラセボでも、線の長さはあまり変わらないように見えます。また、ストレスを感じなくても飲むようにしてからは明らかに振れ幅が少なくなっています。

さらに、以下はストレスの増減を点にしたもの。上の図と同様の傾向が示されています。

そして、以下はテアニンを飲んだかどうかの予測結果のグラフです。実際にテアニンを飲んだ確率(66.67%)を示す点線と、主観的な予測結果を表す点の間に有意な関係はありませんでした。

Dynomightは、実験結果について「少なくとも最初にストレスを感じていた場合、私のストレスレベルは大抵に減少しましたが、それは摂取したのがテアニンかどうかとは関係ありませんでした。そして、私は自分がテアニンを飲んだかビタミンDを飲んだか摂取したかを言い当てることができませんでした」と振り返った上で、「テアニンには何の効果もないようです」と結論付けています。
ビタミンDを飲んでもストレスレベルが下がった主な理由は、「平均への回帰」だろうとDynomightは分析しています。また、ストレスがピークに達してから1時間もすれば、何を摂取してもストレスは下がるということも関係しているかもしれません。
他にも、「サプリが偽物だった」「テアニンとビタミンDの両方にストレスを減らす効果がある」「テアニンにはストレスを減らす効果があるが筆者には効かなかった」などの可能性も考えられますが、いずれにせよ今回の実験ではテアニンの有効性は確認できず、テアニンの効果を信じていた筆者の期待通りではありませんでした。見方を変えると、テアニンが効くはずだと考えて実験に臨んだのにそれが結果に反映されなかったので、バイアスの影響を受けていない中立的な実験結果だと評価することもできるかもしれません。
Dynomightの筆者は「この記事を読んでいる人の中には、テアニンを好んで使っている人もいて、その人には本当に効果があるかもしれません。しかし、テアニンの効果を検証した学術研究でも、実際に私が行った盲検試験でも有望な結果が出なかったことを考えると、効果があると主張する人には立証責任があると思います。この種のテストを行うのは難しくないので、テアニンであれ他のサプリであれ、効果があると確信しているなら、それを証明すべきです」と呼びかけました。
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in サイエンス, 食, Posted by log1l_ks
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