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自由にパーツを組み合わせ好みのスマホにカスタマイズ可能なMotorola発「Project Ara」の問題点とは?


Googleの傘下となったMotorolaがProject Araというプロジェクトを提唱しました。このプロジェクトはスマートフォンの各パーツを脱着可能なモジュールとすることで、端末を各ユーザーごとの好みのものにカスタマイズできるようにする、というもの。スマートフォンの容量が足りないからストレージを増やしたり、バッテリーがすぐに減るので容量の大きいものに変更したり、と端末をより自由に自分好みにカスタマイズ可能になるこのプロジェクトですが、Jacob Miller氏が自身のブログの中で問題点を指摘しています。

dscout + Project Ara · dscout
http://www.dscout.com/ara

Mac Pros, Ara, and Modularity
http://jjcm.org/blog/mac_pros_and_modularity/

◆Project Ara
Project Araとは、ユーザーが自由にパーツを選択してスマートフォンを完成させるというオープンプラットフォーム。スマートフォンを構成するパーツは複数ありますが、これらのパーツを脱着可能なモジュールにして「endoskeleton(内骨格)」と呼ばれるフレーム部分に装着することで、ユーザーが好みの端末を組み立てたり、あとからパーツを変更することでディスプレイの解像度を上げたりカメラを高性能なものに取り換えたり、さらにはこれまでのスマートフォンになかったような機能モジュールを追加したりが可能になるというものです。


◆現在のスマートフォン
これに対して既存の製品たちは正反対のコンセプトで作られたプロダクトといえます。例えば最新のiPhoneを購入したい場合、カラー以外に選択できるのはiPhone 5sの容量16GB・32GB・64GB、もしくはiPhone 5cの容量16GB・32GBの5通りのみ。


スマートフォン以外の端末でもディスプレイの大きさ、プロセッサ、メモリ、ストレージを購入前に選択可能ですが、購入後に必要に応じて柔軟に端末の機能を拡張することができるものはごく一部のデスクトップPCくらいのもの。


一部のデスクトップパソコンではCPUを換装したりHDDをSSDに取り換えたり、メモリを増設したりするだけでなく、ビデオカードを追加したり光学ドライブや冷却装置を追加したりと、自由にパーツの追加や取り替えが可能。しかし、パソコンが持ち運び可能なノートパソコン主体になるにつれ、それらの拡張性は徐々に失われていった部分でもあります。この拡張性をスマートフォンに付加することで、スマートフォンのハードウェア開発事業への参入障壁を低くし、イノベーションを加速させるのがProject Araの狙いのようです。

◆Project Araの問題点
もちろんProject Ara的なパーツをモジュール化して組み替える、というアプローチにも問題点はあります。例えば各モジュールパーツを相互に連結させるために、余分な数立方ミリメートルの接続端子スペースが必要になります。これを小さくすれば、代わりにより多くのバッテリーを消耗することになるとのこと。時間の経過と共により小さく、より効率的に動作するよう進化してきた携帯端末ですが、バッテリーはその傾向に則って進化してきたわけではなく、ボタンサイズの電池が何日もスマートフォンを動作させる、といった光景を見ることになるのはまだまだ先のことでしょう。

By Rafe Blandford

さらに、エネルギー効率の面でも限界があります。プロセッサはより効率的にスケジューリングされ、回路はより小さくエネルギー効率のよい構造をもち、無線通信は低い電源周波数で稼働可能となってきましたが、ディスプレイはいくら効率的に電流を光に変換しようとも、他のパーツと比べて明らかに電力消費が激しいパーツのままです。ディスプレイは、0.5メートル以上(普段スマートフォンを使用する際のディスプレイから瞳孔までの距離)離れた場所から瞳孔に向けて十分な量の光を発する必要があり、スマートフォンのディスプレイにおいてこの基本原理が変わることはありません。最近のスマートフォンの電力消費で1番大きい割合を占めるのがディスプレイであり、当分の間はこれの所要電力が大きく下がるといったことはないでしょう。なので、Project Araの端末もバッテリーはある程度の大きさを保ったままになる、とMiller氏は予測します。

By Joseph Morris

現代のスマートフォンのプリント基板を見れば、なぜパーツのモジュール化が容易かわかるでしょう。iPhone 5sのプリント基板にはプロセッサ・1GBメモリ・そして16~64GBのストレージが配置されていますが、どれもかなりのコンパクトサイズ。


それに対して、Project Araのコンセプトの基で作られた端末は、各モジュールスロットと装備するモジュールパーツが、iPhoneなどと比べて大きくなるだろうと考えられます。


これは左からiPhone 5、5s、5cのカメラパーツ。Project Araの試作機よりもかなりコンパクトなサイズであることが分かります。分離するモジュールパーツは端末をカスタマイズするのに便利ですが、その代償にコンパクトさはなくなるのかもしれません。


◆データ送路
ISAは1981年にIBMが導入したATバス。マザーボードと拡張カードをつなぐパーツで、広く採用されましたが、速度と順応性を欠きました。


EISAはその次に登場した32ビットコンピュータバスアーキテクチャですが、すぐにPCIに取って代わられます。32ビットのPCI拡張スロットは16ビットのISAよりも10倍速いスペックでしたが、後にCPUを介せず直接グラフィックコントローラでメインメモリの読み書きが可能なDIME機能を搭載したAGPが出現。


そしてPCIとAGPの後継規格としてPCI Expressが登場、これの速度はISAの約3000倍とのこと。


これらのデータ送路規格は、技術的にはより小さくすることが可能とのことですが、PCIとPCI Expressのレーンサイズが1mm、2012年4月24日に正式に製品化が発表されたプロセッサであるIntel Core i7(Ivy Bridge)のレーンサイズは22nm(ナノメートル)。レーンサイズが22nm以下になったとしても個々のレーンを通るデータ量には限界があり、より速くモジュール間のデータ処理が行えるようにするには、レーンの数を増やす必要があります。また、モジュール形式で端末を構成すれば各モジュールをつなぐ接続端子部分のサイズには限界が出てきます。

魅力的なコンセプトのProject Araですが、ここまでに挙げられた複数の要素を満たしながら、コンパクトなサイズ感のモジュールパーツを製作することは果たして可能なのでしょうか……。

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in モバイル,   ハードウェア, Posted by logu_ii

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