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eBayはなぜ傘下のPayPalと競合するBraintreeを買収したのか

By My Flickr30

インターネット通販やオークションの大手eBay社は2013年9月、オンラインおよびモバイル新興企業が利用する決済プラットフォームBraintreeを8億ドル(約800億円)で買収しました。すでにPayPalを保有し、オンライン決済機能を整えているはずのeBay社が行ったこの買収劇はいったい何を意味するのでしょうか。

Credit Card Processing is a Hard Business
http://blog.zactownsend.com/thoughts-on-braintree-paypal-stripe-and-payment-processing

「クレジットカード処理ビジネスはもはや、均質化がすすんだコモディティビジネスと化しました」と、クレジットカード決済サービス企業が抱える問題点を語るザカリー・タウンゼント氏。Standard Treasury社の共同設立者で、創業間もない企業に対し資金を供給する「エンジェル投資家」の一人です。


同氏によると、「決済手数料は取引額の2.9%」というサービスを提供しているクレジットカード決済サービス企業でも、実際にはその利益のほとんどは決済ネットワークの流れの中で関連する銀行などに吸収されてしまい、利益が減少してしまいます。また、パレートの法則が示すような一部の大口顧客によって大部分の決済処理が占められており、その際に適応される特別な割引レートが原因でさらに利益が圧縮されてしまうのです。その結果、最後に残る利益マージンはわずか0.5%程度と非常に低いものになってしまいます。

By Andy Thornley

PayPalが昨年一年間に処理したクレジットカード決済額は約1450億ドル(約14兆5000万円)でしたが、ここから得る利益マージンが0.5%だとしたら……その額はわずか7億2400万ドル(約713億円)と、PayPalにとっては取るに足らない額になってしまいます。実際にPayPalが2012年に得た利益は56億ドル(約5500億円)でしたが、その多くはACH(個人向け電子小切手支払い)を通じてのものなのです。このように、クレジットカード処理ビジネスには「うまみ」がほとんどありません。少ない売上高のために多額の設備投資が必要とされることと、大手の企業がほとんどの利益をかすめ取ってしまうからです。

今回買収されたBraintreeは昨年、クレジットカード決済以外の分野で120億ドル(約1兆2000億円)の処理を行い、多めに見積もった純利益は6000万ドル(約60億円)前後とみられていますが、タウンゼント氏はその見通しに懐疑的です。同社が提供するオンライン決済アプリ「Venmo」の価値を大きく見積もったとしても、その買収額は高すぎる疑いがあるというのです。

By SustainUS

タウンゼント氏が懸念材料にしているのは、Braintreeが新規顧客とGitHubAirbnbなどのメジャー企業との条件のあいだに大きな格差を設けている事実です。同社がオファーする決済条件は新規参入者にとってあまりに厳しいため、Stripe社のようによりよい取引レートを提供するサービスに流出していく傾向があるのです。

買収劇以来、タウンゼント氏には「この買収がStripeに与える影響は?」という質問が多く寄せられています。以前に同社に関わっていたこともあるタウンゼント氏は「Stripeは最高のシステムを持っていますが、私の答えは『イエス』であり『ノー』です。今後数か月のあいだ、Stripeには大型顧客が流入してきて、まずはその恩恵をうけるでしょう」と語ります。

一方で、Stripeの市場価値は短期的なものになる可能性も残ると語ります。Stripeは多くのベンチャーキャピタル系の企業よりも高い成長を示していますが、年間の処理高は10億ドル(約980億円)レベルにとどまっています。もしBraintreeの決済高が本当に120億ドル(約1兆2000億円)であれば、最終的にStripe社の市場価値は押し下げられてしまうといいます。Stripe社は多額の現金を保有しているため、影響は限られていると考えられていますが、この買収劇は、オンライン決済ビジネスの世界がいかに厳しい競争にさらされているかと言うことを表していると語ります。

By GlobalRepat

最後にタウンゼント氏は、先行きの厳しいクレジットカード決済ビジネスのフィールドにも2つの興味深いフィールドが残されていると語っています。ひとつは、個人同士が部屋をレンタルしあうAirbnbやタクシーやハイヤーの予約ができるUber、そしてイベント立案とチケット販売を行うEventbriteのようなサービスで、いずれもオンラインとモバイルのサービスを強化しているもの。もう一方は、Credorax社が提供しているような多岐にわたる決済サービスを提供できる企業だ、としています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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