目の中に注入したマイクロボットを磁力で操作して治療する技術「OctoMag」
大きさが1ミリメートル未満であるマイクロボットは、その大きさゆえ非常に限られた電源で動かさなければいけなかったり、電池やモーターを備えつけて動かすことが難しいため人間の体の内部を調べたり、治療するのにはあまり向いていないとされていました。しかしながら、スイスのチューリッヒにあるマルチスケールロボット工学研究所が、磁石で作成されたマルチロボットを磁力で外部からワイヤレスで操作する眼科手術用の新技術「OctoMag」を開発しました。
MRI-based Tracking in 3D Magnetic Steering Systems – Multi-Scale Robotics Lab | ETH Zurich
https://msrl.ethz.ch/research/past-research/mri-based-tracking-in-3d-magnetic-steering-systems.html
Minimally-invasive eye-surgery on the horizon as magnetically-guided microbots move toward clinical trials | Robohub
http://robohub.org/minimally-invasive-eye-surgery-on-the-horizon-as-magnetically-guided-microbots-move-toward-clinical-trials/
磁気操作システムであるOctoMagは、8個の電磁石から成る磁気コントロール装置で眼球に注入されたマイクロボットを外部からあらゆる方向に操作できるという画期的な発明。プロトタイプのOctoMagを使用した実験は、ブタの目を利用して進められ、網膜手術に必要なタスクを実行できるかどうかが確認されました。次に行われたブタの目よりも小さいウサギの目を使った実験では、髪の毛のおよそ4倍の太さである直径285マイクロメートルのマイクロボットをOctoMagでコントロールし、外科手術レベルでも使用できることが実証されたとのことです。
以下のムービーでは、OctoMagの仕組みや実際の装置などが説明されています。
OctoMag: An Electromagnetic System for 5-DOF Wireless Micromanipulation - YouTube
OctoMagを使った眼科手術をざっくり説明するとこんな感じで、まず磁石で作られたマイクロボットを針の中に含んでいる注射を眼球にブスリ。
眼球内に刺さった注射針の先からマイクロボットが飛び出します。
OctoMagが、飛び出したマイクロボットを磁力で遠隔操作して治療が必要な患部に直行。
マイクロボットの先端から針が出てきて患部に注射して薬を投与する、という感じ。
こちらが実際に使われている装置で8個のコイルが中心に向かって放射状に並べられています。これらのコイルが作り出す磁力を使ってマイクロボットをコントロールするわけです。
放射状に並べられたコイルの先にある物体が、磁石でできているマイクロボット。
OctoMagはマイクロボットを多方向に動かすことが可能で、クルクルと回転させることもできます。
下記の画像は、OctoMagでマイクロボットを操作して血管に注射するところです。
時間をかけずに素早い動きで血管に注射。
画像の左側がマイクロボットに装着されていた針で、右側にあるのがマイクロボット。
OctoMagが眼球のモデルに注入されたマイクロボットを網膜に向けてコントロールしている様子は以下のムービーから確認可能です。。
Untethered magnetic end-effector steered in model eye in OctoMag magnetic steering system - YouTube
磁石で作られたマイクロボットを操作するOctoMagは現在のところ臨床試験をもうすぐ受けるという段階であり、実用化にはまだ時間がかかりそうですが、MRIの技術にも応用できる可能性があるとのことで、さらなる発展が期待されているようです。
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