かつて建造された中で史上最大のコンピューター「SAGE」とは?
1950年代から1980年代まで主に北米に向かって侵入してくるソ連軍の原爆を搭載した爆撃機などを発見・追跡・迎撃するために作られた超巨大コンピューターシステム、それが「半自動式防空管制組織(Semi-Automatic Ground Environment)」、略して「SAGE」です。
The largest computer ever built | Locklin on science
https://scottlocklin.wordpress.com/2013/03/28/the-largest-computer-ever-built/
これが外観、窓は一切なし。
そもそもなぜこのような巨大なシステムが必要になったのかというと、それまでは爆撃機が侵入してきたのを検知してから迎撃機を離陸させ、人力で迎撃地点を手動計算、それから無線で誘導を行っていたわけですが、これだとあまりにも遅く、特に低空ギリギリで侵入されると検知が遅れてしまい、しかも相手がジェット爆撃機であった場合はわずか数分で対応せねばならず、核攻撃を前提とする場合、あまりにも無防備に等しい状態であったわけです。
また、すべてのレーダー施設から検知の報告が殺到するとそれをさばくオペレーターが大量の報告で過負荷になって迎撃できなくなるという事態も予想されました。
これらの問題を解決するには全自動化しかなく、そのためにも全レーダー施設から検知を1つのコンピューターに集中させて処理、オペレーターは迎撃目標と迎撃方法をコンピューターに指示してすべての通信を高速化、リアルタイムに迎撃するシステムが必要になったわけです。
結果、インターネットがまだ無かった頃に米国本土をすべてカバーするためにあちこちのレーダー施設とネットワーク接続するため、世界初のモデムを搭載、世界で初めてネットワークに接続されたコンピューターになりました。
また、初のCRTモニターを搭載しており、ライトガンと呼ばれるライトペンでモニター上の標的をタッチすることによって情報を得たり攻撃の指示を与えられるようになっており、世界初のタッチスクリーンインターフェースでもあったわけです。
使っているところはこんな感じ
さらに世界初の磁気コアメモリーを使用することでリアルタイム性能を高め、150人までの同時使用を可能にする世界初のコンピューターでもありました。
システムは全部で27基のコンピューターによって構成され、各コンピューターは6万本の真空管・17万5000個のダイオード・1万2000個の最新式トランジスターを使っており、毎日数百本の真空管を交換することに。
これがSAGEを構成するAN/FSQ-7
真空管は実際には1時間に1本ずつしか故障しないものの、診断プログラムによって危なそうな真空管を予防的措置として交換、「各センターには真空管交換専門のスタッフがいて、交換部品を満載したショッピングカートを押してマシンの中を行ったり来たりしていた」とのこと。
白いハンドルを引き出すことによって真空管の詰まったラックを外に出して交換していたわけです
しかもシステム全体が二重化されており、予備のシステムは常に電源が入って稼働しているホットスタンバイ状態であったため、SAGEがダウンするのは年間わずか2時間か3時間程度だったそうです。
最終的にSAGEは1958年に稼働し始め、1984年まで動き続けることになり、計画全体では80億ドル(約7545億円)から120億ドル(1兆1317億円)を使用、核爆弾開発のマンハッタン計画よりも多大なコストを費やしたとのこと。
底面積ではSAGEよりも地球シミュレータの方が多いのですが、単一プロセッサーのシステムとしては史上最大、今後も破られることはないと予想されています。
なお、このSAGEが実際にどのように動いていたのかというムービーをYouTubeで見ることができ、ここから操作マニュアルを読むことが可能、設計と製造はIBMが担当し、後々のIBM飛躍の一因となっています。
Cold War Computing - The SAGE System - YouTube
また、以下のIBMによるムービーも見応えがあります。
On Guard! The Story of SAGE : IBM Corporation, Military Products Division : Free Download & Streaming : Internet Archive
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