シリーズのセオリーを破壊した「エースコンバット アサルト・ホライゾン」の演出技法、PREVISが大きく貢献


1995年にシリーズ第1作が発売されて以来、累計1100万本以上を売り上げた世界的人気を誇るフライトシューティングゲーム「エースコンバット」シリーズの最新作「エースコンバット アサルト・ホライゾン」が10月13日に発売されます。

多くの場合、人気ゲームシリーズ最新作は従来のシリーズを踏襲していますが、同作は従来のシリーズファンをターゲットとしつつ、昨今流行しているFPSやTPSをプレイするユーザーを意識したシステムを取り入れるなど、新たな試みを取り入れています。

そんな同作の制作スタッフが日本最大のゲーム開発者向けカンファレンス「コンピュータエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2011(CEDEC2011)」において、「『エースコンバット アサルト・ホライゾン』ビジュアルワークの俯瞰」というタイトルで講演を行ったため、全内容とスライドを合わせてお届けします。

菅:
今日は宜しくお願いします。CEDEC三日間、一番最後のセッションとなります「『エースコンバット アサルト・ホライゾン』ビジュアルワークの俯瞰」始めさせていただきます。本日三名で進行させていただきます。


ちょっと先に、本日の講演内容から説明させていただきます。まず講演者紹介。その後に製品内容を簡単に説明させていただきます。その次にビジュアル表現の変革、これについてはちょっと多岐に渡るんですけれど絞りまして、「破壊表現とシェーディング」について説明させていただきます。


あと演出フローの変革、これは「エースコンバット アサルト・ホライゾン」が今までのシリーズ作から大きく変わるということで、演出手法や演出フローに関して大きな変革をほどこしましたので、その点を説明させていただきます。最後にまとめをさせていただきます。


じゃあ、講演者紹介。ちょっと前に出ましょうか。改めまして、こんばんは。菅野昌人と申します。バンダイナムコゲームズでビジュアルアートディビジョンに属しております。アサルト・ホライゾンについてはですね、アートディレクションを担当しておりました。エースコンバットシリーズは僕が大学に在籍していた時から、最初の作品から担当させていただきまして、16~17年かな。長きにわたって担当させていただいてます。宜しくお願いします。次に反町の方から。


反:
皆さん、ご来場ありがとうございます。反町です。私はアサルト・ホライゾンではカットシーンの背景のリードをしつつ、シェーダーの設計をプログラマーと一緒にして、アーティスト視点で描画表現全般をサポートしていました。宜しくお願いします。


菅:
じゃあ最後に糸見くん、お願いします

糸:
はい、糸見です。宜しくお願いします。私はですね、インゲームの方のカメラおよびカットシーンの演出、キャンペーンの構成、ストーリーの構成など、全般的に演出の方を担当しております、映像ディレクターをやっております。宜しくお願いします。


菅:
今日はこの三名で講演させていただきます。宜しくお願いします。


本公演の目的です。開発者は自らシリーズ作のセオリーを破壊しています。「エースコンバット アサルト・ホライゾン」は今までのシリーズ作とちょっと違うんですね。新たなビジュアル表現へ変革したアサルト・ホライゾン、10月13日に発売となります。


開発の初期から今に至るまで、さまざまな描画技術や演出フローが検証されました。今セッションではそれらの取り組みを俯瞰して、日本のゲーム開発者が目指した世界展開への試みをビジュアルの視点から紹介いたします。

これは別に、画像としては間違っていないんですけども(笑)、エースコンバット アサルト・ホライゾンにナガセ・ケイというキャラクターがいるんですけども出たがりでですね、「ナガセブログ」というものを自分でやってるみたいで、「是非今回のCEDECでも自分も出たい」ということで、登場してくれました。


製品概要です。誰に向けた製品かと言いますと、FPSやTPSといった戦闘や破壊が好きなアクションゲームファンに向けました。もちろんACシリーズのファン、非常にたくさんいらっしゃるんですけども、これらのシリーズファンも、もちろんターゲットにしています。


で、「はじめての方」とありますけれども、シリーズ作を長く続けているとですね、どうしても「新しく始めたいと思っていらっしゃる方々がいるんだけども、なかなか手に取りづらい」というのがありまして、ちょっとその方々にも興味を持って欲しいなと思って製品内容をいろいろと変えてみました。

どんな製品内容か。言葉で表すと「目まぐるしく攻守を奪い合うドッグファイトと、眼前で敵を木端微塵に破壊する爽快感が味わえる。現実世界を舞台にしたリアルな戦争ドラマにより、行もつかせぬ没入感が体験できます。戦闘機だけじゃなくって、攻撃ヘリや爆撃機などさまざまな航空兵器で飛び回り、個性豊かな大火力での破壊の爽快感を楽しめる」という製品内容になります。

この他にもオンラインを充実させたりだとかいろいろと取り組んだことはあるんですけれども、今回強調しておきたいのはここのところですね。「超音速・大破壊シューティング」として、まったく新しく生まれ変わりました。製品の動画をご覧ください。

ACE COMBAT ASSAULT HORIZON - YouTube


はい、以上でございます。今までのエースコンバットシリーズをご存知の方、いらっしゃるかと思うんですけど、結構印象が大きく変わったんじゃないかなと思います。やっぱり「破壊に関して力を入れた」ということと、ゲーム中のカメラの取り扱い方なども、先日「インゲームカメラ制作事例」ということで弊社の西田、多田、相川から説明させていただきましたけれども、大きく「経営のそのものを変えていこう」という意思が固まってできています。

引き続きまして、描画表現の変革。ここについては破壊表現だけ私の方から説明させていただきます。


まず破壊表現について、製品の方向性を大きく変えました。今まで「フライトもの」という「飛行機で戦場空間を飛ぶ」っていうのを一番のゲームの主題に置いていたんですけども、ちょっとそれから軸足を変えていきまして、破壊表現に注力することになりました。これはライセンスものとしてはある意味タブーで、航空機メーカーはやっぱり自分たちが作っている航空機が傷つけられたりとか、建物に突っ込んだりとか、そういったところに対しては非常に敏感です。

それはもう当然、記憶にもまだ新しい2001年9月11日、アメリカで起きたテロがまだ記憶に新しいということで、非常に厳しいチェックというものがありまして。こういうタブーに果敢に挑戦しようという風に思いました。大きな枠で見た場合、シリーズをソフトさせる方向はシューティングゲームであると判断したからです。

ライセンサーと共に覚悟を決めて取り組むことが必要となりました。ライセンサーの協力もですし、各種レーティング機関との調整も当然必要でした。全ては「シューティングゲームとしてありたい」という風に考えました。

昨今は「Battlefield(バトルフィールド)」など、破壊表現を取り入れたゲームも増えてきました。最近のシューティングゲームで破壊表現を取り入れてないのはまず無いことだと思いますけれども、そうした中でも「エースコンバット」がどういう位置づけで表現をしていけば良いのか。現世代的な破壊表現のトレンドを取り込みつつ、自分達なりの味付けに昇華することが必要であるんだと判断し、「Steele Carnage(鋼鉄の虐殺)」というコンセプトに挑みました。


戦闘機の破壊についてですが、ゲーム中に登場する戦闘機をバラバラに破壊する場合、当然課題となるのは、「1つの機体をどれくらいの数に分割するか」という分割粒度です。これは当然メモリやCPU負荷も影響しますけれど、作業量にも比例しています。細かくなればなるほど作業量は増えていくし、CPU負荷もかかるということですね。


1フレーム中にプレイヤーが同時に攻撃する機体数は多くて4~5機と仮定しました。これは割と初期の段階です。実際にはもっともっと実は多かったんですけれども、4~5機と当初仮定していました。だいたい1つの機体につき10パーツ程度、計算精度を簡略化した小さな部品も合わせて30パーツくらいの分割としました。


当初ですね、西川善司さんなんかもWEBどで推測されていましたけれど、着弾地点に応じたノンリニア破壊をやろうかなって検討していましたが、実際にやってみると見た目が変になりました。戦闘機という推進する構造体、エンジン積んで燃料積んで飛行していく機体がバラバラになりながらずっと飛行し続ける……というのが非常に見た目に納得度の低いものになったので、検証を重ねて以下の通りになりました。


一つは機銃やミサイルなどの着弾時に被弾痕と小破片の発生、二つ目にちょっと航空機に詳しくない方は分からないかもしれませんが、フラップやエルロンといった要は揚力を発生させる小さい翼みたいなものがどんどん脱落していきます。三番目はダメージ最大となった時点で主翼や機首、本体をバラバラに破壊していくという風になっております。

さすがにちょっと大型機や翼が大きいものはノンリニア破壊に近いことはやっております。右の翼をずっと撃ち続けたりしてると、ずぼっと壊れて、中心が傾いていって爆発……という動きもやっております。


そして「ベイクアニメーションの併用」について。ゲーム中に登場するものは戦闘機や爆撃機だけでなくて、戦車などの車両や大型艦船、ターゲットとなる建造物などもあります。それらすべてをリアルタイムでシミュレーションするのが、プログラマーとビジュアルとで大きな課題になりました。


紆余曲折があったんですけれども結果としては艦船や大型建造物などの破壊のスケールの大きいものはMayaのダイナミクスを用いてアニメーションベイクしております。ここに物理演算を用いて破壊表現とは切り分けて、作業分担をメモリやCPUの負荷を抑えたりしています。その時の一番重要なところは、「1つの物理エンジンで多彩なスケールでの最適解を見つける」ということです。

物理エンジンに取り組んだのは、内製のエースコンバットでは実際のところ初めてになりますけど、そういったパラメータの最適値みたいなもの、最適解を見つけるのは非常に難しいという風に考えまして、高いハードルを現実的なところまで下げて注力するところにしぼりこみました。

ここまで入って、プロデューサーから「なんか普通じゃね?」とツッコミが入りました。実際にゲームを遊んでみて、戦闘機がバラバラになったり建物が壊れたりするっていうのは、普通他のゲームでもやってますし、「じゃあ、なんかもうちょっともげたりちぎれたり、メカのスプラッターにしてよ!」と。


「メカのスプラッター」って言葉は外国人から大笑いされたんですけど、「もげたりちぎれたり、航空機の機体をFPSみたいに擬人化しようということかな」と考えていると、中村プログラマーから「複雑な骨構造を持たなくても、ゾンビの取れかけの腕みたいにブラブラできるかもしれないですよ」という提案があって。


で、エフェクトデザイナーの藤井くんが「オイルとか血みたいにズピャズピャやっちゃいましょう!CEROの18禁狙っちゃいましょう!」という風に、非常に勢いを出して頑張ってくれまして。


考え方をまとめて、物体を「破断」することにしました。破断という言葉ですが、この会場で破断という言葉を日常的に使っている方はどれくらいいらっしゃいますか?多分一般的な破壊表現の中に入っちゃってるところもあると思いますけど、これを僕らは別だとして考えました。破断(Rupture)という言い方は「金属などの構造物が、衝撃や疲労などの原因で破壊すること、されること」を指します。

物体の「破断」表現、「破壊」表現じゃなくて「破断」表現という風に言うことにしました。実際のところ航空機がミサイルで撃ち落とされてバラバラになるって様子を実際のドキュメンタリー映像で見た方はあまりいらっしゃらないと思いますけれども、こういうのは実際に存在します。高速で移動する航空機がダメージを受けるとすると、ミサイルや機銃でバーッと爆発やダメージを受けて、空気抵抗や機体のひねりによって翼がちぎれこんでいきます。

「鉄がねじ切れる際」としましたが、ある程度の硬性を持った物体がねじ切れる際の破壊挙動を、どのように実現すればいいのか?これがエースコンバット アサルト・ホライゾンの破壊表現の中で一番悩んだところでして。

有限要素法などの塑性体変形シミュレーションは経験がありませんし、実際に行うには計算負荷がかかりすぎるだろうということは見えていたので、じゃあこの鉄のねじ切れるような振る舞いをもっと簡易的に表現できないだろうかと、模索しました。


これは当時、中村くんと岩切さんだったかな、バンダイナムコにいたプログラマーと話し合って決めていったことですけど、簡単に言うと戦闘機がバラバラになるようにあらかじめ分割してるんですけれども、それらにこうした緑色の点でジョイントを設けてます。


それがミサイルが直撃した場合、重心が移動して3つだったら3つのうち1つが取れていきます。それで姿勢がどんどん変わっていきますが、変わっていくと同時に回転していったりと、ひねりなんかも入っていきます。そして取れた後どうなるかっていうと、そこから先は通常の剛体物理にバトンタッチという形になって、「翼が揚力によって取れて、空気抵抗を受けてくるくると飛んでいく」ような動きを実践していきました。


実際これが物理的に正しいのかといったら「いいえ」としか言いようがなくてですね。物理シミュレーションに関するセッションも今回のCEDECでたくさんあったと思うんですけど、そこでよく耳にすることは「結局ゲームに都合の良いように扱われやすい、変更されやすい」というところ。それはアサルト・ホライゾンについても同じですね。何に対して依存しているかというとカメラなんです。カメラが捉えきれるように都合の良いようにパラメータで調整しています。


今作で最も大事なところは「プレイヤーに伝わること」と考えました。従来のエースコンバットって、敵やっつけたらもう見ないんですね。どっか行っちゃいます。ミサイルに当たるまでの間にもう別の敵を見つけに行っているので、画面に対して敵は映ってないし、破壊された様子っていうのも見えない。

でもそれじゃあシューティングとしてのやりごたえ、リアクションというものは得られていないという風に考えまして、それをカメラで映すようにしました。破壊されていく模様を映すのは大体3秒くらいです。その短い時間の間に「やった、やっつけた!自分はこの航空機、戦闘機をバラバラに破壊した!」という気持ちよさっていうのを得られるように、パラメータを調整していきました。


この手法をとった利点というのがですね、複雑な骨構造を持つことなく、極めて航空機的な破断表現が再現できた、っていうことですね。


手前味噌な話ですけど「バトルフィールド3」を最近動画で見て、敵航空機がやられたときに、普通に剛体物理に委ねられてパーンとガラスのように飛び散るような感じの動きが見えてて、「あ、エースコンバットってまだまだ、そういう面白い表現で先に行ってるな」と自慢してるんですれども、そういう「航空機的な壊れ方」は再現できたかなと思います。

これを担当したのはエフェクトの藤井君なんですけれども、欠点としては自分たちが求めるものになりやすくはなったものの、ひねりや曲がる角度、時間など細かくパラメータで調整できるようになったせいで偶発性が薄らいだことが挙げられます。

物理シミュレーションはそういった「偶発的なところの楽しみ」があったりするのですけども、そこが薄らいだのがちょっとだけ問題だったかなと思います。とはいえ、これによりガラスのような脆性材料が単に炸裂するのみの破壊表現から、航空機らしい特徴のある鋼材的破壊表現が実現できました。私の方はこれで終わりで、次に「描画表現の変革」ということでシェーダーの話になります。近接表現の導入と広域表現への融合です。じゃあ、反町。

反:
はい、お疲れ様です。
それでは「描画表現の変革2」ということで、近接表現の導入と広域表現への融合という話をさせていただきます。株式会社バンダイナムコゲームスの反町です、宜しくお願いします。


まずご存知の通り、これまでのエースは中景遠景が中心で、近景は弱点でした。開発内でも自らの限界を設定していたところがあり、シリーズを通してゲームとデモが表現的に違うため、「ゲーム中と地表のドラマが地続きの世界と感じられない」という問題もありました。ゲームとデモを同じ世界の出来事として違和感なく表現することが課題でしたね。

解決策として接近戦を今回導入したこともあり、接近戦に対応しゲームとデモを地続きの世界として表現する近接用シェーダーの開発を行い、広域表現へ融合していきました。フローとしては近接、広域、ゲーム、デモ、すべてに共有できる基本シェーダーというものを構築し、あとは用途や質感に応じて拡張させて、さらに必要ならば派生させていき、それにより表現の統括、リソースの制御と共に効率的な各所の品質アップというものを実現しました。今回はそういうお話をさせていただきます。


まず基準となるライティングの設定ですね。既存のライティングの課題は空間の実在感やオブジェクトの立体感など、角度によって弱点のあるライティングがあったのですが、それらを解決する手法というものを検証し構築しました。それにより感覚による調整を減らして、世界観を統一させるレギュレーション(ルール)を構築しました。


そしてImage Based Lighting(IBL)による大局照明により立体感を強化しました。手法に関しては、輝度を表現しやすいライトを使用する方法も検証しましたが、私たちが試した手法には品質にちょっと問題があったんです。

あとはIBLとして機能するぐらいの複数のライトを置かなくてはいけないんですが、負荷が結構高かったんです。なので結果的には、品質も十分で負荷が低めのキューブマップを使用する手法にしました。実機データ上でキューブマップを撮影し、半自動処理でぼかし処理工程まで作成できるツールをプログラマーさんに作ってもらって、それを使用しています。


次、太陽光とシャドウですね。太陽光は感覚ではなく数字による明確な制御をしたいため、RGB intensity1.0を基本に、最大2.0を上限として強くできるようにしています。


シャドウについては今まで「ゲームはシャドウボリューム、デモはシャドウマップ」という風に手法が混在していましたが、今回は拡張性の高さからシャドウマップに統一しました。勝手に名前つけちゃったんですけど、深度計算で生成したシャドウマップを明暗描画時に加えて描画することで、シャドウの中が環境光で隠れる「環境光シャドウマップ」を使用しています。シャドウには環境光であるIBLI、IBLイメージが適用されると。

次、テクスチャーレギュレーションとHDRブルームについてですね。テクスチャーの固有色の明度は上限RGB210、下限RGB40として決めました。この値はポスト処理に対してポスト処理だけじゃなくシャドウ処理も含めたさまざまな最終処理に対して、白とび黒つぶれの一個手前の値です。


カラーテクスチャの元素材のガンマとかモニタガンマの補正に関しては、既存テクスチャ用素材を有効活用するために無視しました。データ的な精度というよりは、アーティストの基準として機能させること、そちらを重視しています。そこで決まったテクスチャの色にライトが乗っかったところが、RGB210を超えた値からピクセルからブルームしていく。そういう取り決めにしています。

次、基本マテリアルの要素設定ということで、基準となる汎用的なマテリアルを構築しました。この中には近接表現に必要な立体感を出して、さらにエッジの効いた絵作りに必要な要素を盛り込んでいます。ここには書いてないのですけど、基本マテリアルは、基本はCook-Torrance(クックトランス)なので、スペキュラの拡散値とかスペキュラの強度とかっていうのは入ってます。ここに書いてあるのはそれ以外の特筆的なところですね。


フレネルとリムライトなのですけど、これはみなさんご存知の通り、実際のカメラ方向とメッシュ、光線の角度がどんどん開いていくと、反射率が高くなるという物理現象の計算ですが、これを私たちは以下のように考えました。まずはフレネル。これは立体表現の要素として考えてます。なので環境光であるIBLを加えていくと視覚的には明るくなります。


リムライトはスペキュラ効果の援護として考えました。光によるエッジの補助、光の援護ですね。なのでこれは太陽光を一緒に加えていくと。


最後、Ambient Occlusion Mapですね。これは環境光シャドウマップとの併用で影の中の立体感を援護します。環境光シャドウマップだけだと、どうしても影の中が平坦になってしまうのですが、これがあるおかげで立体感を演出できると。Screen Space Ambient Occlusionよりも性能の高さと負荷の低さで、前作に続き採用しています。


これら基本ライティングと基本マテリアルの構築により、空間の中の実在感と立体感を増大し、統一した世界観を構築できるレギュレーションを整えることができました。


さらにですね、近接、広域、ミッション特性、デモ等のそれら全てのケースに対応するために、さらに基本シェーダーの機能の拡張を行いました。


質感バリエーションを拡大するためにどう拡張したかという話ですけれども、まず各マテリアルは2種類の環境マップを選べます。一つはくっきりした画像の環境マップ、もう一つはぼかした画像のマップ。手前の球体、右側の球体がちょうどくっきりした画像のキューブマップで、真ん中がぼかした画像のキューブマップです。一番奥の球体はIBLですね。ぼかした画像のキューブマップはIBLIとして併用しています。


次にフレネルとリムライトは、シャドウと描画順変更を選択できます。これはどういうことかというと、フレネル、リムライトの上にシャドウを描くのか、フレネル、リムライトの下にシャドウを描画するのかっていうのを選択できるシステムになります。


基本フレネルは立体表現の用途なのでシャドウの上に描画。リムライトはスペキュラ援護の用途なのでシャドウの下に描画、という風にしています。ただ基本はこうなのですが、ちょっと変更できるようにしています。上なのか下なのかじゃなくて真ん中とかちょっと上とか、そういうのもパラメータで調整できるようにプログラマーさんがしてくれました。それによって質感のバリエーションも変えられます。ただ、基本はこの通りです。

次ですね、シャドウ機能を拡張することによって広域や近接へ最適化していったという話です。これも勝手に「カスケード分離シャドウマップ」と名前を付けちゃいましたが、カスケードシャドウマップについては詳しい説明を省きます。


我々がやったのはカスケードされてるシャドウマップの距離を離せるようにカスタムしました。各シャドウマップの始点と終点に値を打ち込むことによって、任意に離せます。そしてシャドウマップの中だけじゃなくて、カメラからすでにはじまる一枚目のシャドウマップも離せるという形にしました。

これによってコックピット視点や望遠レンズを使用したカットシーンで遠距離に適用させる影の解像度を効率的に使用できるようにしたんです。この画像で言うと、右側がシャドウマップを分かりやすく視覚化したものです。赤が一番手前、緑が中景で二枚目、青が三枚目です。


赤はA-10のコックピット視点で左側を向いている視点ですが、まずコックピットの中だけで一枚使っていると。赤はちょっと見えてるんですね。その次に既に緑、中景の二枚目が来るんじゃなくて、次の翼分はもう捨てています。その翼が終わったくらいの距離から二枚目、三枚目をかけていくと。
これのおかげで、翼の分だけ適用範囲を伸ばすことができるので、解像度をその遠景分稼ぐことができるんですね。このような調整をできるようにしました。

続いてはシャドウの手法に関してですけれど、解像度だけでいうとLight Space Perspective Shadow Mapsが一番良かったんですけども、ジャギが凄い出るんですね。ジャギを直すために倍圧をかけるといった手法など、いろいろあるのですが、倍圧をかけたらかけたでまた何か問題が出てきたりとか、いろいろやってるうちにこの2つの手法に決めました。


1つは「Exact」。これは低解像度ですがカメラ移動ではジャギやフリッカーが全く出ないです。カメラ移動した時にちゃんとカメラ移動分シャドウマップ作る時のピクセルをちゃんと補完してくれるんですね。その位置を補完してくれるのですが、全くぶれないです。なので背景を大きく捉えるときに有効です。ただ、カメラ移動では出ませんが、ライトを動かしたりとかオブジェクトが動くと出ちゃうんですけど。もう1つが「Apporoximate」。これは解像度が割と高いので、キャラクターのアップとか動きのある画面向きです。これら基本シェーダーから派生したシェーダーをいくつか紹介します。

スキンシェーダーです。基本マテリアルは当然スペキュラ拡散値と強度を持っているのですが、それ以外にもう1つ持っています。それを皮膚の皮膜のような感じの感覚で広げるのですね。それとフレネルとかリムライトと組み合わせることで、SubSurface Scatteringの代用としました。これは負荷が低くて品質も十分なので、かなり効果的だったなと考えてます。


あとはWrinkle Map、しわシェーダーですね。これはキャラクターの表情効果の援護をしてくれました。感情移入しやすくなったと思います。あとは、骨移動に伴った法線の再計算。これも表情効果の援護をしてくれました。

次はクロスシェーターですね。これは基本マテリアルにディティールマップを加えたものです。
ディティールマップの中身は、リピートノーマルマップにリピートカラーテクスチャを乗算しているものです。リピートカラーテクスチャを乗算させず、リピートノーマルマップだけだと影の中に折角ディティールマップをかけてるのに詳細感が出ないんですね。


リピートカラーテクスチャを乗算させることによって、このでこぼこの、へっこんだところもつけてくれると。これで明るいところも暗いところも常に詳細感を保つことができるようになりました。
リピート数とフェード距離は「距離が離れるとどれだけリピートテクスチャを消すか」など、パラメーターで持ってます。

あとこの画像の右下の白黒のやつはマスクで、「ディティールマップをかけるのかかけないのか」というのをマスクしているテクスチャです。これはスペキュラマップのアルファチャンネルを仕込んでます。

まとめということなんですが、スケールレンジが広くて求める品質も高いと近接と広域2種類ゲームを作るようなものだったなと思います。シェーダーの種類や要素、パラメーターが多くなると限られたリソースの中、じゃあどうコントロールしますか?という問題が生まれました。


近接とか広域、ミッション特性、デモ、すべてのケースに対して局地的な対処をどんどんしていけば当然絵は散漫になり、シェーダーリソースは爆発すると。だからといって個々のアーティストの制御を極力抑えると、例えば天気パラメーターとか時刻パラメーターとか湿度パラメーターとか、材質の種類を選ぶだけとか、あとは全部プログラマーさんの方で隠してもらうといった風に行うと秩序ある描画表現は可能ですが、現実的には今回のように近接とか広域とか全てのケースに等しく高品質のシェーダーは現実的には難しいと。融通性もなくなってしまいます。

まずは、問題や要望が出てきたらレギュレーションに遡って考えました。シェーダー側、アーティスト側どちらの対応なのかにしても、レギュレーション調整なのか局所的な調整なのかをまず吟味します。「ちょっとこの辺明るくしたいよ」って時に、IBLIで撮りなおしをした方が良いのか、そこはもう基本マテリアルのフレネル計算を見直しましょうかとか、ちょっとそこはもうテクスチャで調整して良いですよとか、ここはもうシェーダー増やしましょうかとか、そういうことですね。


分散させてはいけない要素は、必要に応じてパラメーターの固定化やレギュレーションを変更。レギュレーションの中に調整や拡張の余地を残し、各ケースの特性に合わせる余地を残す。伸びしろを残しておくんですね。できるだけその中だけで済ます。それでも必要ならシェーダーを増やしていく。こういった流れです。


シャドウの例ですけど、基本はカスケード環境光シャドウマップ。影の濃度パラメーターはもう固定、1.0(100%)です。影の濃度、影をちょっと薄くしたいって時はそのパラメーターは絶対いじっちゃだめ。影を薄くしたいんだったら、その影の濃さを決めてるのはIBLとか、下に書いてあるテクスチャのレギュレーションが狂ってるんじゃないかとか、そのあたりを調べていくと。パラメーターはいじらない。分岐したところっていうのは、各カスケードの分離距離。これはもう自由にやって良いですよと。あとExactなのかApproximateなのかは自由に選んで良いですよと。


ハードによるソフトシャドウ処理の違い。これは負荷によるところが多いです。今回マルチターゲットなので、360はPCF使ってるんですけど、PS3はSSAA(Super-Sampling Anti-Aliasing)をソフトシャドウの処理に使ってます。

ゲームとデモでカスケードの3枚目の処理を変更しています。これはゲームの方では3枚目、カスケードをフェードさせています。当然ゲームのカメラはインタラクティブなので、影を常に背景に馴染ませたいということで3枚目をフェード、馴染ませてると。

デモに関してはカメラが決まってるということと、あとフェードさせると3枚目の影がどうしても薄くなるんですね。それを嫌って、3枚目もガチガチに使いきりたいってところではフェードさせない。そういう切り分け方をしています。

こういうバランスでスケールレンジの広いあらゆるケースに対して無駄な分岐を減らし、表現の統括、リソースの制御と共に、効率的な各所の品質アップを実現できました。最後になりますが、レギュレーション変更は、やはり大元の変更で影響範囲がとっても広いんですね。

私たちも、完全に成功してるとは言えないです。ここにも書いてありますが、量産後にいろいろレギュレーション変更がたくさんあって、いろんなところに協力してもらったことがありました。基本シェーダーは量産前に完全確定させておくのが理想。そのためにどういうクロークを実施してくのかをちゃんと考えた方が良いなと、そんなところですね。じゃあ僕の発表を終わります。糸見さんに代わります。


糸:
続きまして、演出フローの変革というお話をさせていただきます。すみません。時間が結構押してしまいました。少しだけ足が出るかもしれませんが、お付き合い頂ければと思います。宜しくお願いします。


最初菅野の方から製品のご紹介をさせていただいたと思いますが、エースコンバット アサルト・ホライゾンは今までのシリーズとは違って、全て生まれ変わるところから始まりました。これは最初に河野プロデューサーから言われたセリフですけど、「エースコンバットフランチャイズを再活性化させる」と。リバイタリゼーションってやつですが、ワールドワイドに向けた国内海外双方に向けた製品であることや、今席巻しているTPSおよびFPS市場で互角に渡り合える新しいフライトシューティングゲームを創出することといった、結構でかい題目が与えられました。


で、開発が開始を始めたんですが、まずコアシステムの開発ですね。先ほど映像を見てもらったと思うんですけど、ドッグファイトモードというコアシステムがありまして、それの開発、企画の方を進めてましたが、やっぱり企画の進行が難航してしまいまして。スケジュールが全体的にひっ迫して、プロジェクト自体が暗礁に乗り上げるという事態になっていました。プロジェクト進行の危機でしたね。


人数が多く、期間的な問題など、色々な理由がありましたが、その中で一番気になっていたのが「スタッフ間での感性イメージの共有ができていない」「そもそも実現手法が見えていない」という部分でした。

結果どうなったかというと、数枚の企画書があるだけで机上の空論だったんですね。ゲーム業界でよくある話かなと思いますが、「アイデアは面白いはずなのに、他の人に伝わらないのは何でだろう?」というところです。それでビジュアルの方で企画書から最終イメージを想像できる補完機能をもったものを作ろうと考えました。

それが「PREVIS(プレビジュアライゼーション)」の導入になります。この後説明させていただきますが、PREVISとは低コストでイメージ共有、検証フローに映画やCM等の撮影フローで用いられる映像プレゼンテーションのことです。このPREVISのワークフローの導入が大きな鍵となっています。


もう少し詳しく説明しますと、複雑なシーンの制作初期段階において、必要な制作工程・問題点を洗い出し、スタッフ間での最終イメージ共有を図り、実制作の作業効率を上げる為に低コストで作成された簡易イメージ映像、または画像のこと、と定義しています。定義は各自で違うと思うんですが、私はこういう風に定義しています。


じゃあその映像はどういうものなのか、というのを今からお見せしようかなと思います。この映像は開発初期に作られたものです。制作環境は、エースコンバット6のリアルタイムデモ環境の担当が作っています。

エースコンバット アサルト・ホライゾン 初期イメージ映像 - YouTube



制作に関してはビジュアル5人で1か月くらいですね。企画書4枚くらいだったと思います。それからコンテを起こしまして、どういう映像にするか、どういうゲームにするかというのを、ディレクターと話し合いながら作りました。見て分かるように今のゲームと全然違う部分もあるのですが、だいたいのコアのシステムの部分に関しては全く一緒の内容になってると思います。

この内容は特にインゲームカメラのセッションの方でも流された内容だと思います。実際企画書にないアイデアもいっぱい入れておりまして、追尾カメラなどもこの段階でカメラデザイナーと話しながら「もっとこういうの入れた方が良いよね」とか「こういう機能、ボタンで押してこういう風になった方が面白いよね」とか、ビジュアルから提案して企画に出しています。


このPREVISですけど、制作のポイントがありまして。制作のスタッフですが、実際の演出担当は私です。そしてカメラデザイナー。この2人がPREVISの制作を進行するのが重要だと考えています。作っている段階で工数や問題点などを理解できるほか、実装段階においての問題点がもうわかってるわけですね。それをプログラマーと話すときに、スムーズにできることが利点です。また、演出担当とカメラデザイナーのコンセンサスもとれるので、実際カメラデザイナーに「ここのところのカメラをお願いします」となったときに、意見が食い違うことがありません。

次にこれはミッションイメージアートになります。PREVISの画像版みたいなものですね。コンセプトアートに関してはみなさんよく描かれると思うんですが、こちらもシナリオ会議を円滑に進める為に制作したものです。


イメージ映像やイメージアート両方に言えることですけど、このポイントはアングル、構図をなるべくプレイ画面に近くなるように制作するように指示しているところです。カッコイイ画面をどうしても選びたがるんですけど、僕もビジュアルアートの人間なんで「こっちの方が見た目カッコイイな」と思うのですけど、そうすると最終的なスタッフの完成イメージがずれてしまうので、なるべく実際のプレイイメージ、プレイ画面に近い形でつくってもらうようにしています。


続きまして海外作家・海外スタジオとの共同制作の方です。これも大きい施策の一つです。今回「世界市場に向けた製品である」ということを掲げていましたので、まずは欧米ユーザーから見ても不自然でないシナリオとキャラクタービジュアルというのが必要になりました。


最初日本人スタッフのみで作っていたのですが、やっぱり各国特有の文化とか人種とか、細かい人種の部分や言語もですが、微妙に合ってるのか合ってないのかわからない状態で続けていました。それにシナリオやストーリーのプロットに関しても現実世界を舞台にして、例えばアメリカ軍とかロシア軍とか出てくるのだけど、この設定は本当に合ってるのかなとか、調べることが多くなりました。

アメリカ人、~系アメリカ人、キューバ系アメリカ人とかアフリカ系アメリカ人とか、あとフランス人ロシア人、様々な国のキャラクターを出したいのですが、「どうやってビジュアルの差を作っていけば良いんだろう」とすごく悩みました。

これも簡単な解決方法があったのですが、自分たちだけで調べていても埒が明かないと。その国の人たちに聞いて、その国のアーティストにお願いした方が良いんじゃないかというところで、始まりました。ですが直接やるにも難しいところなのですね。僕は英語を一切しゃべれませんし。


解決策として、ENSLAVEDのプロデューサーをしていた社内のアメリカ人スタッフにお願いしまして、まずグローバル開発プロデューサーとしてその人を起用しました。キャラクタービジュアルやシナリオのスーパーアドバイザーも担当してもらいます。その彼を窓口にしまして、海外作家、海外スタジオとのコラボレーションを行いました。


シナリオ制作に関してはアメリカ軍事小説家のJim DeFeliceさんと共同でシナリオ制作を行ってます。凄いカッコイイ写真が載っていますが、ジムさんには軍事アドバイザーとしても参加していただいています。シナリオ制作に関してはこのあとフローをご説明しますが、ジムさんに全てお任せするのではなく、あくまでチーム主導で行っています。


これがフローになります。ちょっとわかりづらいんで説明していきますが、左側のオレンジの部分がチームの作業になります。青い部分がジムさんの作業です。まずチームはですね、インゲームのシチュエーションのアイデアブレスト(ブレインストーミング)を行いました。

例えば先ほど見ていただいた「ビルの間をすり抜けて敵をやっつける」とか「ハリケーンの中に突っ込んで空戦をやってみたい」とか、言いたい放題ブレストを出します。それと同時にこちらからコンセプトやゲームの内容を伝えて、ジムさんにプロットを数案書いてもらいます。それをまとめまして、チーム内で簡易プロット、「1面から最後までこういう構成で、こういうゲームが入って……」という仮のミッション構成をブレストとプロットから合わせて作っていきます。

だいたいまとまって、アイデア的にこれくらい入ってたら面白いなという話になって、それからシナリオ会議を行いました。これはサンフランシスコで4日間、合宿形式ですね。毎日毎日顔を合わせて朝からやっておりました。ここで先ほど私たちの方で作った簡易プロットと仮のミッション構成をジムさんと話し合って「ここが良いか悪いか」というのを全部決めていきます。

ミッション1から最後までですね。ストーリーの大枠もここで全部決めていきます。このキャラクターをどこで出すとか、例えばカットシーンはここはつながるかつながらないかとか、そこも全部決めていきます。4日間なんで大忙しです。それを持ち帰りまして、次にキャンペーンモードの構成表、あとカットシーン・各ミッションの仮コンテの作成、各ミッションの概要書の制作と、細かい話になっていきます。ただこの段階ではまだスクリプトはできていません。

この段階で先ほどお見せしましたミッションイメージアートや、このあとお見せしますコンテがあるのですが、各ミッションの重要なシーンをコンテ化してあったりとか、カットシーンの部分も、シナリオはないまま「こんな感じで進めたい」っていうのをざっと書きました。

コンテはだいたい1ヶ月くらい書いています、一人で。それをジムさんにお渡ししまして、イメージ共有をここで図ります。PREVISに当たるところなんですけど。なるべく密にしまして、何回か、凄いやりとりをしました。Excel形式で渡してますので、コンテとかに直接ジムさんが書き込んでいきます。資料が間違っていたら「その資料も貼っといて」とジムさんにお願いしていますので、例えば服装が違うと、ジムさんが「この兵士はこんな服を着てない」と、参考画像をペタペタ貼ってくれます。結構これが助かります。

それを終えまして、次にミッション会議ですね。細かいミッションの話になっていきます。これはSkypeでやってました。1ヶ月と書いてありますが、多分3ヶ月くらいはちょこちょことやっていたと思います。時間が合わないので「超早く」という話なのですけど。

ここで全ミッションの細かい概要書から、どういうミッションになるのかなど、配置を含めて細かい話をしていきます。ストーリーラインに関しても細かい詰めをここの内にしておきます。ミッションの中にストーリーが入ってる場合が多いので、ここで詰めます。

これでまたそれぞれの作業に分かれるのですが、例えば無線スクリプト。エースの方では戦闘機中なので、無線でセリフがどんどん流れて会話とストーリーが進んでいきます。それは内部の方で作ってます。それからメインスクリプトの方をジムさんが進めています。これは相互に見せ合っている状態ですね。なるべく無線スクリプトに関しても軍事アドバイザーとしてジムさんの方で全部チェックを入れてもらっています。これが合わさって、全スクリプト完成となります。

これがジムさんとのやりとりに使った絵コンテですね。これはちょっとジムさんのコメント入れてませんけど。バンダイナムコゲームスのロゴがあって、エースコンバットのタイトルが出て、でゲームが始まって、こういう風なコンテを書いてます。


これはカットシーンじゃなくてゲームですね。ゲームのコンテを描いてます。どういうことが起きて、どういうシーケンスが挟まって、何が起きて、戦闘そしてカットシーンに入っていく……これを全部シームレスにやっており、こういった内容の絵コンテを描いてます。これに対してジムさんが付け加えていくかたちになります。

やっぱり国内でやるにしても「ゲームシーケンスに合わせたシナリオ制作」っていうのはもの凄く難易度が高くて毎回悩むところなんですね。シナリオライターさんにゲームの内容を理解していただかなければいけませんし、うまい話がなかなかないと思うんです。


興味深いストーリーというのも必要なのですけど、「ゲーム中の体験をいかに面白くするか」「ゲーム中の体験の中にいかにストーリーを盛り込むか」というのが重要になると思いますので、先ほどのワープロにもあったように、スクリプト作成に入る前にPREVIS素材を使用してチーム内外でシーケンスの構成イメージを共有しておくってことが大事です。

「チーム内外」というのが結構重要で、シナリオライターさんとやりとりする時にチームの人間を忘れてしまうと「そんな話聞いてない」となってしまうので、ああいうコンテがあると、日本語版英語版両方あるんですけど、両方に送って「こうなるよ」「こうしたいと思ってるんだけど」って話を双方で進めていきます。これをやることで各担当者間での刷り合わせが結構うまくいくので、インゲームでの体験を重視しつつ、ストーリーラインを構成することが可能になりました。

続きましてはキャラクターデザインに関して。キャラクターデザインをMassive Blackという、サンフランシスコの会社にお願いしてます。制作のアートディレクションを担当したのはCoro Kaufmanさんという方ですね。inFAMOUSのデザインを手がけられている方です。


最終的なアウトプットに関しては、こうやって人種と国籍がバラバラなキャラクターが出てきたのですけど、こういう風に細かいデザインまで盛り込んでいただいたんです。そして先ほどのグローバル開発プロデューサーのジェームズにチェックしてもらって、僕の方はビジュアルをチェックし、あとはモデルを作りながらジェームズの方でチェックをしてもらっています。

次はパフォーマンスキャプチャーに関してです。今回のカットシーンに関してはモーションキャプチャーを全部、ロサンゼルスでパフォーマンスキャプチャーを行ってきました。演出監督に関してはKris ZimmermanとGordon Huntというお二人にお願いしてます。Gordonに関しては、アンチャーテッドのカットシーンの演出もやっていました。


パフォーマンスキャプチャーを海外でやる理由というのは、これはうちの会社でも初めてのことで大事だったんですけど、つまりは文化の違いの部分ですね。動きの部分や喋りの部分、表情だとか、日本人スタッフで全部作るのは不可能だと思ったので、その辺が自然に見えるように海外の方でやっていますと。

写真を見ていただくと、(真ん中に)突っ立ってるのがジェームズですね。その前に大きなモニターがありますが、動画コンテと簡易CGで作ったこれからキャプチャーするシーンのPREVISを流しています。この辺も多分ワーフロー的には結構基本的なやり方だと思います。


これを流しながら、監督やアクターと細かい演技プランを決めていきます。必要であればセリフやアクションはその場で変更していきます。結構ガチガチにやってないので、シチュエーションと動きに関してはこちらから指示を出しますが、基本的に「その場でセリフも直してオッケー」という風にしました。


これはやはり文化の違いによる違和感をなくすためということと、自然な演技を撮るためですね。ここにも実は別の軍事アドバイザーがいまして、兵士や軍人としての所作、言動の確認というものを行ってもらっています。ここで文化の違いというものが1つありました。キャラクター同士が「冗談を言ってツッコむ」というシーンがあるのですが、ツッコミのシーンが頭をはたいてたのですね。これにクリスが嫌な顔をしましてですね。「ソンナコトハシナーイ!」と言われました。日本のツッコミが通用しなかったです。

話は変わりますが、先ほどのカットシーンでバーチャルカメラを導入しているんです。実は以前イマジカさんにCMの制作で使うPREVISの制作システムを紹介してもらって、ちょっと面白かったのでそのシステムをイマジカさんの協力で利用させていただきました。ちょっと映像をお見せしますね。

エースコンバット アサルト・ホライゾンのバーチャルカメラ - YouTube


今モーションキャプチャーで撮ってきたデータをファインダーに映し込んで、位置情報をカメラと合わせてですね、カメラでアニメーションデータを撮ると。そこにいるカメラマンの方のカメラの動きがそのままCGの動きに反映されてます。

ちょっと動いてないですね。こうやってVcamを使用するので、プロのカメラマンさんに依頼して。
これもPREVISの一個の形ですね。本来はCMを簡易的に作るためにやってるらしいです。まぁ手でカメラアニメーションを作ってるとどうしても時間がかかるので、これだと一発で撮ることができるんです。

まとめに入ります。新規の製品開発や海外との共同作業に関しては、やっぱりじっくり検証できるスケジュールとコミュニケーションを十分に取る時間ですね、あと当たり前ですが語学力ですね。それが必要ですけど、やはり開発期間は限られています。なのでどうするかというと「なるべくイメージ共有を強化して、その場で活発な意見を交わせるスピーディーなコミュニケーションツール」が必要になってきます。


弊社で取り入れたのがPREVISですね。このワークフローは凄く高い効果を発揮してて、応用や活用方法が結構色んなところであると思います。またそれぞれの現場、人材などもあると思うので、PREVISだけじゃなく現場にマッチしたコミュニケーションツールを発見すると、効率化の鍵になっていくと考えています。それぞれの得意分野を生かせる手法で見つけるのがベストかなと思いますね。

私たちのチームはフェードのカメラのデザインをやる人間が多かったので、今回のPREVISという方法を使いました。他で見たのは、コミックアーティストの方がチームの中にいると、コミックを描いているのがありましたね。本にして見せてくれると。それはちょっと面白かったです。あとはそういう技術もない状態だと、実際にアクションゲームを作るときに「誰かが走ったり跳んだりしてそれを後ろから撮影して、ゲームの映像として見せる」ってことをやってました。それでもやっぱり伝わるものですね。

そして海外アーティストや異業種との共同制作っていうのを今回行っていますが、やはり海外の市場に向けてというのもありますけど、「チーム内でのスタッフだけでは出来ないこと」ってあると思うんですね。あと新しいアイデアの発掘や技術交流っていうのも目的としてます。なのでこちらの意図だけで制作しては共同制作する意味がなくなってしまうので、重要なポイントをPREVISで示し、それ以外は自由にアイデアを出してもらうバンド幅が必要です。先ほどのモーションキャプチャーで「セリフ変えて良いよ」「アクション変えて良いよ」というところですね。これはサジ加減が難しいのですが。


最初に仕様や演出をガチガチに固めてしまうと、何か狂ったときに収拾つかなくなってしまうのですね。でもそっちの意図も分かるとなると「どうしよう」となり、それで時間を取られてしまうので、なるべく「変えて良いところ」と「変えちゃダメなところ」をはっきりさせておかなくちゃいけないんです。で、なるべく柔軟に対応できるようにするってところですね。

そのあとお互いのアイデアを練りながら、新しいアイデアが出てくると思うんです。PREVISにして「こういうのも面白いんじゃない?」って話になってくると、それもまたPREVISに取り入れて、常にアップデートをかけていくことで、また新しいアイデアが出てきて……そういうのも面白いところなので、PREVISは是非活用してはいかがかな、と思います。私の方の発表は以上になります。最後に菅野の方からまとめをお願いします。

菅:
長い時間お付き合いいただきまして、ありがとうございます。最後に一言、お伝えしたいことがあるのですけれども「エースコンバット アサルト・ホライゾン」、開発はあともう少しで終わりなのですけれども、この間にシリーズ作のセオリーっていうものに、非常に引き寄せられていました。

自分たちは変えたいと思っていて、それは全員同じなんだけれども、エースコンバットシリーズが今まで築き上げてきたルール、お約束事、これはエースコンバットだけに限らず今会場に来て下さってる会社の方々っていうのは全員同じ考え方だと思うのですけど、「シリーズ作のセオリー」っていうのは非常に強い重力なんですね。

「こういう仕様ってどうしようか」「細かい仕様なんだけどどうしようか」「それはもう前と同じで良いよね。だって前良く出来てるし」。凄くそれが強いのですね。それを突破しようと思うと非常に覚悟がいります。開発内でも意見が違う人間ももちろんいますし、味方が見つかると非常に嬉しい。

この覚悟を持って僕らは開発をしていきたいと思っていましたし、これからみなさんも一歩踏み込むときには覚悟を決めて欲しいですね。ちょっと気を付けていかなきゃいけないのは、お客さんの期待していることは決して前と同じ体験ではないという点。

開発内部は「どういう風に変えるか」と言いがちです。「前はこうだったけど今回はこういう風に作るから」というのが、開発内部ではだんだんそれが繰り返されていくと「前からこういう風に変えれば良いんだ」と思いがちで、それが非常に落とし穴というか、間違いを起こしやすいです。

一番重要なところは「どのような製品なのか」ということをはっきりさせることです。これはPREVISによる方法でも良いですし、コンテによる方法でも良いですけど、どういう製品になるのか。「前から比べてこういう風に変えます」じゃなくて、「どういう製品なのか」をはっきりさせていければなと。できれば早い段階で。

現世代のゲーム開発は、糸見の方からもお話がありましたけれども、世界各国に向けた取り組みが必要です。「国内市場が縮小している」という現実があって「世界に踏み込みたい」と思っていると、ありがたいことに色んな国々の方々が意見をくださいます。これは弊社だけではなく、複数の外国人スタッフさんがいらっしゃる開発会社さんていうのは同じ状況だと思うんですけれども。

「こういう風にしたいんだけど」と、そうすると「良いよ良いよ、この僕の意見聞いてくれよ。何故ならば、僕はこの地域について非常に詳しいから」って言ってくれるんですけど、そうすると「うんうん、ありがとう。それじゃあその意見をどんどん取り入れていくよ」っていう風にやっていくと、まるーい誰にも見向きもされないような製品になっちゃうんですね。

これは誰に向けた製品なのか。どこの国の人たちに対してというよりは、こういうターゲット、こういうお客さんの層があります。シューティングが好きな人たちがいます。シューティングの中でも破壊が好きな人たちがいます。そういった人たちに向ける製品なんだよ、と明らかにしていきます。

それによって技術や描画技術だったり演出のフロー、それらも変わってくるんじゃないかなと思って、それを選択していけば良いかなと思います。最後にですけれども、これは僕の強い、今回開発を進めていって思ったことなんですけど、20代の若い開発者がチーム内にもたくさんいましたが、彼らが素晴らしい活躍をしたんですね。

20代の方々はここにもいらっしゃるし、学生さんの方もいらっしゃると思うんですけど、あなた方のフットワークの軽さというのは、今30代40代の開発者にとっては憧れです。フットワークの軽さ、常識にとらわれない発想力。シリーズ作を繰り返していると本当に結構陥りがちです。昔はこういう風なルールが当たり前に機能していたから「今回もオッケーでしょう、これでいきましょう」となりがちですけども、変えようと思ってる時にはそれが足かせになってしまうんですね。

今の開発には20代の若い開発者の考えが非常に重要じゃないかなと思ってます。ベテランはですね、僕も含めて、彼らにどんどん自分の仕事を渡して、サジェスチョンしてあげてください。組織の力を上げていってくれればなと思います。


一番最後になっちゃうのですけど、今日はこれで終わりにします。「ビジュアルワークの俯瞰」というタイトルを付けたので、もしかしたらゲームの中で一番大きな画面を占めるマップの制作についても話すんじゃないかなと思われたかもしれませんが、すみません、時間の兼ね合い上今回は割愛させていただきます。

ただし、これからですね、ゲーム開発を進めて飛躍していくであろう皆様方の気持ちを代弁する形で、ちょっと映像をご覧ください。これは今後、製品発売後に公開される予定の「東京マップ」と呼ばれるものですけど、今までのシリーズと同じく今回も衛星写真を使っていますが、1メートル分解度の衛星写真を50%使用して、作らせてもらってます。

エースコンバット アサルト・ホライゾンの「東京マップ」 - YouTube


で、これらのたくさんの建物を制作するのに非常に労力がかかっているんですけれども、最も手間のかかるところ、建物の配置とか、そういったものに関して、今回新しいチャレンジっていうものを行っています。

今までピクセルのデータのもとにした建物の配置を中心に据えていたのですけれども、今回、ベクターデータを用いて建物の配置などを検討してみました。建物の数も今までと比べて飛躍的に増えているのですけど、「その場所に現実の建物がある」という説得力は、今作ならではの魅力なんじゃないかなと思います。

長い時間、オーバーしてしまいましたけれども、今日の発表を終わらせていただきます。最後までご清聴ありがとうございました。

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