ローソンと麺屋一燈店主の熱すぎる想いが込められた「冷しつけ麺」
全国のローソンで7月26日から発売予定の「冷しつけ麺」に賭ける開発者の熱い想いが尋常ではないということで、監修を行った店舗「麺屋一燈」のつけ麺と新商品を食べくらべつつ、一燈の店主と開発担当者にその開発秘話を聞いてきました。
今回ローソンで発売される「冷しつけ麺」の特徴は、全国につけ麺文化を広めるべく、日本全国各エリア毎に異なるお店をモデルにしたつけ麺が販売されるのが特徴。今回訪問したのは、関東・東北・沖縄エリアで販売される「麺屋一燈 監修 冷しつけ麺」の監修を行った「麺屋一燈」です。
ローソン つけ麺文化創造プロジェクト2011|冷し麺|商品・おトク情報|ローソン
http://www.lawson.co.jp/recommend/static/hiyashi/tsukemen/
◆麺屋一燈「特製つけ麺」試食レビュー
東京・新小岩にある「麺屋一燈」。JR新小岩駅から徒歩5分ほどです。
まずは食券を購入します。もちろん注文するのは「特製つけ麺」。
麺の量は特(500g)、大(400g)、中(300g)、並(200g)の4種類。今回はローソン版も同時に食べるので、並にしておきました。
これが麺屋一燈の「特製つけ麺(並)」。
麺は太く、味付け玉子のほかに、鶏チャーシューと豚チャーシューが乗っています。
スープは鶏白湯ベース。とっても濃厚な香りです。
味に変化をつけるための特製唐辛子油。
麺はコシの強い極太麺。スープは濃厚ながら鶏のうま味がまろやかで、魚介系と動物系がうまく調和した、非常にバランスの良い味わい。
鶏チャーシューはプリプリとした食感が魅力的。普通のチャーシューとはまるで違う、とても豪華な感じのするチャーシューです。
特製辛子油を投入。
まったりとしたバランスの良いスープに、ピリッと辛い強めのインパクトが加わります。夏にはもってこいの辛さです。
スープ割りを入れてもバランスの良さは崩れることがなく、非常に安定したおいしさをスープでも味わうことができます。
◆ローソン「麺屋一燈 監修 冷しつけ麺」試食レビュー
そしてこれが今回発売される新商品「麺屋一燈 監修 冷しつけ麺」。
お店にはこんな感じのパッケージで並んでいます。(写真はイメージです)
鶏肉がぎっしり。
もやしと味付け玉子も乗っています。
そして隠し味の「秘伝しょうが」。ローソンの開発担当者によると「必ずスープに入れて食べてください」とのこと。
ほぐし水を使って、麺をほぐして食べるタイプです。
そしてこれがスープ。
とろみのある、非常に濃厚なスープです。
ほぐし水でほぐした麺。ソフト麺とはまるで異なる、つけ麺独特のコシが感じられる中太麺です。
「秘伝しょうが」を投入。
先ほど食べた麺屋一燈のスープとはまったく違うタイプの味で、濃厚なスープの中にさわやかな酸味とさまざまな香りが感じられ、エスニック風の香り豊かなスープに仕上がっています。麺はさっき食べたばかりの麺屋一燈の麺に比べればやや柔らかいものの、コンビニの麺とは思えないくらいの強いコシを持っています。
鶏肉は非常に食感が良く、コンビニで買う麺類のつけ合わせにありがちなパサパサとした食感をイメージしていたため、その違いに驚きました。
◆麺屋一燈店主 坂本幸彦さんインタビュー
早速、麺屋一燈の店主である坂本幸彦さんに、今回の商品開発について聞いてみました。ラーメン研究家の石山勇人さんと合同でのインタビューとなっています。
GIGAZINE(以下、G):
一燈さんではラーメンとつけ麺の両方がメニューにありますが、どちらが多く注文されるんでしょうか。
麺屋一燈店主 坂本幸彦氏(以下、坂本):
圧倒的につけ麺です。7割~8割がつけ麺ですね。ここ2~3日は9割がつけ麺です。
G:
麺屋一燈のつけ麺の特徴とはどんなところでしょうか?
坂本:
やはり鶏白湯(パイタン)がベースというところですね。
G:
かなり濃厚な感じのスープでした。2006年、2007年にラーメン・オブ・ザ・イヤーを受賞した六厘舎などは食べたことがありますが、六厘舎とはまた違った感じの濃厚さですね。
坂本:
時代のトレンドというのがまだ「濃厚」なので。一時期ほどの超ドロドロというのは、僕の感覚では少し下火かなと思いますね。どちらかというとバランスのいい濃厚系が多くなっているのかなと。
G:
つけ麺というと、1年くらい前までは魚介系がすごくはやっていたイメージがありますが、一燈さんのスープは魚介がガッツリというより、本当にバランスが取れている感じでした。
坂本:
動物のうま味を押し出すスープに少しずつシフトさせてきています。僕自身がいろんなお店を食べて回った感覚として、魚介の味を全面に押し出しているものよりは、うま味を強く感じる方が、お客様に感動してもらえるんじゃないかという考えがあって、少しずつシフトしている感じですね。
G:
いつ頃からシフトし始めたんでしょうか。
坂本:
今年の冬くらいからですね。
G:
つけ麺全体のトレンドとしても、そのように変わりつつあるのでしょうか。
坂本:
これまではどこのお店も魚粉を後からスープにかけたりしていたのですが、その量がだいぶ減りましたね。その代わり、原価は上がるんですが、本体のスープの方に魚介を多めに入れて、馴染ませるという。その方がスープ全体に馴染むんです。
G:
麺屋一燈さんのスープへのこだわりというのは、どんなところなのでしょうか。
坂本:
お店を出すに当たって、つけ麺を食べ慣れていない人にも食べてもらいやすいように、まずは薄いスープから入ってもらおうと考えました。それから少しずつ濃厚なスープに引き寄せていくような、そういうイメージを最初から持っていました。開店当初に「何か新しいお店ができたよ」とやって来たお客様が、いきなり今のようなスープを飲むと「こんなすごいところは無理かも……」となるかもしれませんよね。そこで、最初はラーメンに馴染んでいるお客様に合わせた薄いスープをお出ししておき、だんだん濃いスープにしていって慣れていただこうと。そうすることで、常習性が出てくるんです。
G:
一燈さんのつけ麺を初めて食べる方に対して、こういうところを味わって欲しいということはありますか?
坂本:
やはり今は豚骨魚介が主流ですけれども、そんな中でうちは豚骨魚介に近い濃度を白湯スープで出しています。なので、濃厚なんですけれど後味さっぱりです。
G:
鶏ベースで豚骨魚介に近いということですね。
坂本:
最初は女性のお客様だと「わー、すごい濃いね」って言うんですけど、意外とさっぱりしていますので、あっさり食べていただけているようです。
G:
ベースが鶏の強みですね。コンビニでお店の商品を模した商品を作りたいと聞いた時はどんな感想を持たれましたか?
坂本:
正直、うれしかったです。僕の作ったつけ麺がそういう形で販売していただけるのなら、すごくうれしいなと。ただどうしても「コンビニさんで買うのは美味しくないな」という印象はありましたね。
G:
不安もあったのではないかと思いますが。
坂本:
不安ではないですけど、本当に自分が納得できるものが作れるのかなと。
G:
商品開発には一燈さんも参加されたんでしょうか?
坂本:
はい。ローソンさんの作ったサンプルを試食して、意見を出して。何度も試作を重ねました。
G:
特に「ここにこだわった」というようなことはありますか?
坂本:
当初は「一燈らしさを前面に出しましょう」という中で、一燈のつけ麺に近いものを目指していました。なかなか難しかったのですが、大まかなベースが決まった時から、自分の中で「もうちょっと何か欲しいな」という気持ちがずっとありました。
G:
一燈らしいものにはなったけれど、何かが足りない、と。
坂本:
もともとの商品の土台が冷しつけ麺ということで、動物系のスープが一切使えないわけです。そこが一番難しいところでしたね。
G:
そこはどのようにして解決したんでしょうか。
坂本:
どちらかというとエスニックのような感じに持っていきました。今の形の商品ができた時を振り返ると、「坂本さんに満足いただける商品になったと思います」って自信満々で来てくれたので、本当かなと思って食べたら、本当にすごいものになっていました。「これはいける」と。僕はあんまり褒めるほうじゃないんですが、「これはいけます」と言えるものになりましたね。
G:
今回完成した商品について、感想をお願いします。
坂本:
暑い時期にもっと食べたくなるような食欲をそそるものに出来上がっていると思います。
ラーメン研究家 石山勇人氏(以下、石山):
スープに関して、最初の試作品はどんなものだったのでしょうか。
坂本:
スープについては、最初3種類提案をいただいたのですが、その中でひとつはあまりにも和風で、ざるラーメンのつゆみたいな感じでした。もうひとつは冷やしゴマしゃぶダレみたいな感じ、最後はその中間でゴマに少し魚介が合わさったような感じでした。「まあ、こんな感じかな」というのがスタートでしたが、最終的には食べやすくて、いろんな人に受け入れてもらいやすいスープの仕上がりになったと思います。
石山:
最後にお店としての「一燈さんらしさ」とはどんなものか、聞かせてください。
坂本:
他のお店はブランドで売っている中で、どちらかというと僕のお店は「人間を売るお店だ」とよく言っています。商品というよりも、内側から何かにじみ出てくるような物語を感じてほしいと思います。
G・石山:
ありがとうございました。
◆商品開発担当者インタビュー
続いて、商品開発を担当した江原SMDにも、開発の裏側を聞いてみました。
G:
つけ麺をコンビニで出そうと思ったのはいつ頃からなんでしょうか。
関東ローソン支社 関東商品部 江原 秀和氏(以下、江原):
具体的には去年の4月からですね。某有名店とタイアップして、スマッシュヒットを出すことができました。かつてないぐらいの単品の販売実績ができたので、「つけ麺はいけるな」ということで、「全国の有名なつけ麺屋さんと組んでやりましょう」という流れができてきました。
G:
全部で7店舗ということですが、各エリアのつけ麺は、そのエリアでしか販売されないんでしょうか?
江原:
そうなりますが、東北と沖縄は、関東と同じ麺屋一燈さんになります。
G:
今、ローソンがつけ麺に注目する理由とはどんなものなのでしょうか。
江原:
ラーメンの文化があるところまで熟成して、つけ麺が新たな文化を作る可能性があるという所にチャンスを感じたからですね。
G:
ラーメンの進化が限界のところまで来ている、ということでしょうか。
江原:
限界というか、例えば有名なフランス料理店とかでスープが出てきて、それを飲んで、ラーメンが好きな人がラーメンのスープを飲んで比べたら「ラーメンのスープの方が美味しいよ」って言うレベルにまで来ているんじゃないかと思ってます。こんなにぜいたくに、上手くダシを取っているところというのは他にないですから。
G:
ラーメンという文化が完全に成熟してきていて、その中から新たな子どもとしてつけ麺というものが生まれてきたと。
江原:
そうですね。そして、まだこれは進化をすると思いますね。
G:
関西などではまだ東京ほどつけ麺文化が定着していないようですが、関東圏以外ではつけ麺は普及しにくいのでしょうか?
江原:
エリアごとの特性はいろいろあると思いますが、各地で定着する可能性はあると思います。まずスタンダードなつけ麺スタイルで、各エリアで開発した商品を発売して、ローソンとして新たな定番商品として定着させたいとの思いが今回の形です。
G:
今回、各エリアに存在するラーメン屋さんをモデルにしたというのは、やはり各地のラーメン文化に沿ったつけ麺のほうが受け入れられやすいだろうという意図があったんでしょうか。
江原:
東京以外にもなんとか全国に広げる発端にならないかなというところから始めています。去年、4月につけ麺でスマッシュヒットを出したと言いましたが、コンビニにつけ麺が常時あるということではありません。これを、常にコンビニに置けるようにできればと考えています。ラーメン、冷し麺があって、ホット麺があって、パスタがあって、焼きそばがある。今度はつけ麺をそこに加えよう、と。
G:
コンビニの麺類の棚に、常時つけ麺が並ぶようになるということですか。
江原:
はい。夏は冷し麺、冬はあつもりができるので、非常にやりやすいなと。特にホット麺は、冷し麺に比べてぐっと売り上げが縮小するんです。そこの売り上げも、冬のあつもりで持って行けないかなと期待していますね。
G:
つけ麺には可能性があるということですね。
江原:
あると思います。先ほど言ったように、北海道から味噌のつけ麺が出てくるかもしれないですから。と考えると、面白い文化がコンビニから花開くことも考えられます。コンビニがある日突然、替え玉付きのつけ麺を出すということがあるかも知れないですよ。そんな飛び抜けたことができるのはコンビニだけですから。
G:
全国に販売網を持つコンビニエンスストアだからできる、と。
江原:
だから今回はむちゃくちゃ真剣にやっているんですよね。
G:
現在、地方にもつけ麺専門店とか、つけ麺の名店のようなものというのはあるのでしょうか?
江原:
あると思います。ただし非常に少ないですね。関東ほど有名なつけ麺屋さんは無いと思います。そういう意味では、地方でつけ麺を新たに始めるというよりは、現在東京にあるつけ麺屋さんが地方に進出するというパターンがあるんじゃないかと思っています。そういう場合も、コンビニの全国網が生きてくるんじゃないかと。
G:
コンビニでそのお店の商品が出て、お店も同時に出店という展開が考えられますね。
江原:
協力してくださっているお店としても、そうした狙いがあるのかもしれません。
G:
今回、関東では一燈さんがモデルに選ばれていますが、対象になった店舗というのはどのようにして選ばれたのでしょうか。
江原:
実は候補はいっぱいありました。名前は出せませんが、いろんな有名店が候補に挙がっていたんです。その中で、実際にホームページを見て、一番面白そうだったのが一燈さんだったんです。すごくいろんなことにチャレンジしていて、何かとんでもないことをやりそうな内容が書いてあるサイトで、可能性を感じました。
G:
なるほど、最初のきっかけはホームページからだったんですね。
江原:
そのほかにも、テレビで自分のところの厨房を全部公開したり、鶏のガラだけで全部スープを作ったりだとか、とんでもないことをしていたので「ここしかないだろう」と。絶対にここは人気が出ると、なんとなくインスピレーションで思ったら、それが当たりました。いいインスピレーションだったなと(笑)
G:
すごいですね(笑)
江原:
めちゃくちゃラッキーだったなと思います。でも、当時からホームページにはパワーを感じましたよ。何かをやりそうな感じがすると。多分、自信があって燃えていたんでしょうね。書いてあることがすごく面白かったです。何かすごいことをやっているなと。
G:
開発担当というのは、かなりの数のつけ麺を食べているのでしょうか?
江原:
食べていますね。もうあらゆるものを食べています。
僕らはつけ麺だけではなくて、レストランにラーメン屋に、仕事としてあらゆるお店に食べに行っています。そういう機会を多分に与えてもらっているわけですね。とにかく美味しそうなものがあったら、そこへ実際に行って食べていますから。
G:
それだけ舌が鍛えられているというわけですね。
江原:
面白いものを見つけようと思ったら、それを食べてみないと分からないじゃないですか、こればっかりは。行ったらびっくりするようなマズイものもあります。
G:
今回、麺屋一燈さんのつけ麺の、コンビニ販売版の開発を担当されたということで、先ほど一燈さんのインタビューで、スープについて最初は3種類を出されたという話がありましたね。「一燈さんのつけ麺をコンビニで出すならこういう風にしよう」というイメージは最初からなにかあったのでしょうか。
江原:
実は、僕がつけ麺の商品開発をやるのは、一燈さんで3店目だったんですよ。前の2店も成功したのですが、どちらもやはり「似せる」ということで成功した商品だったわけです。だから次も似せようとして、12月くらいからいろいろ作っていたんですが、ちょうど震災があったころから1ヶ月半くらい違う仕事をしていてすごく忙しかったんですが、それで頭が切り替わって、少し落ち着いてきた時に、その段階のサンプルを食べたらとてもマズかった。似せているはずなのに、すごくマズイじゃないかと思って、開発会議で突然「マズイからやめよう」と切り出したんです。
G:
12月から春ごろまで開発を進めて、そこからいきなり方針転換した、と。
江原:
「この3ヶ月はなんだったんだ」みたいな感じにみんなを唖然とさせてしまって。「なぜ」と聞かれて「やっぱり坂本さんは満足していないと思うよ」という話しをしました。「全然違う方向で攻めて、こちら側の坂本さんの指示を全く無視して、僕らの一燈を持って行ったらどうだろうか」ということを言いました。「またイチからやるのか」みたいに、皆に文句を言われましたよ(笑)
それでも、その結果良いものを作れました。麺も一燈用にオリジナルで作りました。それを持って行ったら、坂本さんが「もう一つ何か物足りない」という顔をするんですね。あの人は優しいから「いいんじゃないですか?」と言ってくれるんですが、絶対に「おいしい!」とは言わなかった。絶対に「おいしい!」といわせてやろうと思って。すごくこちらに気をつかって「いいんじゃないですか?」と言うんですが、絶対、良くないだろうと。
なんとか坂本さんに「おいしい」と言わせられないかなと思って、最後の最後に「なにかもう一つ、風味かにおいがあったらいいな」ということを提案しました。そこでたまたま持っていた秘蔵の生ショウガがあったんです。別の商品に使おうと思って確保していたものなんですが、「これをスープに入れたら旨いんじゃないだろうか」と思って、スープの中に調整して入れてみたら、抜群でした。これは絶対に勝てると思いましたね。
開発チームの1人と「今日は勝とうね」と言って、2人でそれを持って行って、坂本さんに食べさせてみたら、本当にびっくりしたみたいで。最初はけげんな顔で食べていたのですが、「うん?」と言って、突然すごい勢いで食べ始めて、最後は麺にスープをかけて、最後の一本まで食べてくれましたね。それで初めて「うまい!」と言ってくれました。2人でガッツポーズしました。本当に子どもみたいでしたけど、あまりのうれしさに(笑)
G:
先ほど坂本さんが言っていた「自信満々で来てくれた」という話ですね。
江原:
もう悔いはないなくらいにやり切った感じですね。一燈さんは、これからさらに面白いことをやってくれそうなので、また組みたいですね。「まだまだ違うことをやるな」と思っています。「ラーメン燈朗」という新しいお店も出たし、まだまだ奥の手がいっぱいあるようなので、ぜひやりたいですよね。人間的にも組みやすいし。「うまい!」と言わせる喜びをもう一回味わいたいなと。これ、至極の喜びなんですよ。相手にうまいと言わせるのは(笑)
G:
「うまい!」と言ってもらえるのが、開発担当としてスゴイ喜びだ、と。
江原:
もう何もいらないです。初めて「うまい!」と言ってもらった時に「最初はコンビニならこんなものかと思っていたんですけど、ここまで出来るものなんですね」と言われた瞬間がものすごくうれしかったです。
G:
先ほど試食しましたが、びっくりしますよね。これをコンビニで売り出すのか、と。
江原:
ありがとうございます。
G:
やはり決め手は秘伝しょうがですか?
江原:
坂本さんから「オドロキ」が欲しい、「風味」が足りない部分が有るなどの意見を頂いて、徹底的にこだわって作った薬味です。非常に有効な組み合わせになったと思います。
G:
食べた中で気になったのは鶏肉ですね。一燈さんで出てくるような半生の鶏にかなり近い食感が出せているんじゃないかと。
江原:
最初は僕らが鶏肉にこだわり過ぎていて、スープにも鶏を使おうと思っていたのですが、コンビニで売り出す鮮度基準の中だと、動物系はどうしても合わなかった。でも一燈と言えば鶏なので、何かやっぱり残したいなと思って、鶏はびっくりするくらいたくさん乗せました。コンビニで売り出す場合、食材はコンビニの流通量に合わせて大量に仕入れなくちゃいけないので、その調達も大変です。今回、一燈さんは間違いなく売れるから、その分の食材調達は必死でした。半分泣き落としみたいにして集めましたよ(笑)
G:
それほど熱くなっている商品だと。
江原:
皆が熱くなってくれていて、うれしいですね。開発だけじゃなく、お店の指導員たちも、本当ならありえないオーナー勉強会を、一燈のために開いてくれたりして。かつてない量のサンプルを出してくれていますよ。だからほとんどの店舗のオーナーが食べていると思います。あと麺屋一燈自体にもオーナーが大挙して来てくれました。18人ぐらいローソンの制服を着た人が店に入っちゃったりとか。それで坂本さんのインタビューを勝手にビデオで撮って、勉強会で流したりとか。皆でそれをやってくれているので、かなり盛り上がっていると思います。今度のは味に自信があるので、出したらリピーターがつくという思いもあります。
G:
1回食べてもらえれば、もう1回買ってもらえる力を持った商品だ、と。
江原:
それだけ力を入れて作ってます。
G:
開発担当の方がそこまで言うというのはすごいですね。
江原:
長らく開発をやっていますが、手応えを久しぶりに感じていますね。「これ以上はもうできないぞ」というところまでやったつもりなので。なるべく万人に受け入れられる味にしてあります。そこは坂本さんにも言われたんですが、偏った味にならないで、誰が食べても「うまい!」と言ってもらえるところを目指しましたね。極端にすると、一部の人においしいと言われても、一部は全然ダメだとなっちゃいますからね。これは難しいです。
G:
今回、かなりボリュームもありますよね。お昼にお腹が空いていて、お弁当を買おうかなという時に買っても満足できそうな量です。
江原:
大丈夫だと思います。困ったことに飲料以外で買い合わせが要らない商品なんですよね。コンビニ側としては買い合わせをしてもらった方がいいですけどね(笑)
G:
一燈の坂本さんが言うには、最初は麺がソフト麺みたいだったということですが、完成品を食べてみたところ、かなり食感も良い麺になっているなと感じました。
江原:
最初に坂本さんに食べてもらった時は、通常麺を持って行ったんです。「こういう麺なんです」と言ったら「麺が柔らか過ぎる」と。製麺屋さんといろいろ研究して、新しく作って持っていっても、それでもOKにはならない。「まあこんなもんじゃないですか」みたいな感想です。「ああ、いいんじゃないですか」と言われたので、「これはもう違うな」と。絶対にダメだと言わない方なので。
G:
スープの時と同じ感じですね。
江原:
「いいんじゃないですか」と言いつつ、「もうちょっと硬い方が」とか「もうちょっと締まっている方が」とか、ちょこちょこ言われていたので、これをどんどん突き詰めていって、可能な限り締まった感じにできるような粉を目指して、最後につけ麺専用の粉である「傾奇者」を試させてもらったところ、ビックリするくらいおいしくて、コシがありました。それを一燈さんに持って行ったら大絶賛でしたね。まさに締まっているので。
江原:
今、ローソンの流通では、工場でオーダーを入れてもらってから、製麺して切って麺にしています。だから麺の鮮度が高いわけです。注文が来てから麺を打っています。それで、その翌日にはその商品が店舗に入る。麺に関してはかなりこだわっています。
G:
しかも麺屋一燈用に作った麺ですね。
江原:
そうですね。だから麺屋一燈ラインを組んであるんですよ。バックグラウンドがとんでもないですよね。
G:
本当にとんでもないですね(笑)
江原:
とんでもないことばかりやっていますよ。思えば、坂本さんに「うまい!」と言わせたいがためでしたね。
G:
「いいんじゃないの?」ではダメだと。
江原:
「いいんじゃないすか?」という言い方でしたね。何回あの言葉を聞いただろう(笑)
G:
最終的には「うまい!」と言わせることができた、ということですね。
江原:
「本当にうまい!」と絶賛してくれました。感動しましたよ「いけるもんだなあ」と。これでお客様にも「うまい!」と言っていただければ、「生きてて良かった!」という感じですね。
G:
ありがとうございました。
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