斜視の子どもが「誕生日パーティーに招かれない」などの差別を受け始めるのは6歳から

片方の目がもう一方の目と違う方向を向いている斜視の子どもは、6歳から同じ年齢の子どもたちの中で「誕生日パーティーに招かれにくくなる」が、6歳未満の年齢の子どもは、ほかの子どもの斜視に気付かず見た目による差別をしないということが実験により明らかになりました。斜視の手術をする場合、子どもが6歳になる前に行うのが正解のようです。

詳細は以下から。Young Children With Squint More Likely To Be Excluded From Birthday Parties

British Journal of Ophthalmology誌に掲載された、スイス・ザンクト・ガレンの病院Kantonsspitalの神経眼科医Daniel Stephane Mojon博士らによる研究では、6組の一卵性双生児の写真の片割れを、それぞれ内向きまたは外向きの斜視があるように見えるようデジタル加工し、118人の3歳から12歳の子どもに見せました。

118人の子どもたちは眼科を訪れた患者（斜視ではない）または患者のきょうだいで、「双子のうちどっちの子を自分の誕生日パーティーに呼びたいか」を選ぶように言われた後、4組の双子の写真（一方が斜視）を見せられました。「斜視に対する差別」がなければ、平均で、4人のうち2人は斜視の子どもが選ばれるはずということになります。

その結果、6歳未満の被験者は双子のうち斜視がある方と無い方に違いを見いださなかったのに対し、6歳以上の子どもでは、明らかに斜視の子どもを選びにくい傾向が見られたとのこと。写真の子どもたちのシャツの色や、内向き、外向きといった斜視の種類は、「誕生会に招かれるか否か」に影響しなかったそうです。

具体的には、被験者のうち4歳以上6歳未満の子ども31人と、6歳以上8歳未満の48人を比較すると、以下のような違いが見られたとのこと。

■誕生会へ招く4人のうち、斜視の子どもを1人も選ばなかったのは、6歳以上で18人（37.5％）、6歳未満で1人（0.3％）。

■誕生会へ招く4人のうち、4人とも斜視の子どもを選んだのは、6歳以上で0人（0％）、6歳未満で9人（29％）。

■選び終わった後に「双子について何か気付いたことは」とたずねられた際、眼位について指摘した子どもは6歳以上で48％、6歳未満で19％。

■写真の目をよく見るように言われたあと、眼位に気づき指摘した子どもは、6歳以上で77％、6歳未満で39％。

Mojon博士らは子どものころの斜視が与える長期的な影響について懸念し、「今回の調査結果は、斜視の子どもが斜視でない子どもと比べ、同年代の子どもたちから受け入れられにくい傾向を示しており、斜視の矯正手術は子どもが6歳になる前に行うべきであると示唆しています」と述べています。

アメリカでは年間約120万人が外眼筋の位置をずらす斜視の矯正手術を受け、この手術は眼科手術の中で3番目に件数が多いものとなっています。この手術は日帰り外来治療として受けることができますが、10歳未満の子どもの場合両眼を最善の位置に保つには複数回の手術が必要な場合が多いとのこと。他人から見た目の並び方という「外見」については手術で改善されても、本人の視覚については、両眼視はおおよそ2歳までに形成されるので、それ以降まで斜視状態で生活した場合、例え手術で矯正されても立体視能力を獲得するのはほぼ不可能とのことです。

なお、斜視の原因により治療法は異なりますが、眼鏡やコンタクトレンズなどで屈折矯正を行うことにより斜視を治療することができるケースや、視能訓練により斜視を治療できる場合もあるそうです。矯正手術の場合、健常者と見分けがつかない完ぺきな目の並びになって初めて両眼視が可能となるのですが、アメリカでは特に外見を改善することを重視する医師や患者、患者の両親も多いため、「健常者とまったく見分けがつかないほどには改善されていないが、言われてみないと斜視と気付かないレベルの目の並びになっている」状態、つまり外見は「改善」されているものの「完ぺき」ではなく、両眼視ができるようにはなっていない状態であっても、「外見が改善されたので手術は成功」ととらえられる場合もあるようです。