劇団四季の創作の拠点とも言える稽古場、「四季芸術センター」見学レポート~前編~
横浜・あざみ野にある「四季芸術センター」は、まさに四季の“創作拠点”。ここからいくつもの舞台作品が発信されています。一般公開はされていないこの施設を、今回特別に案内してもらいました。
前編ではバレエと発声のレッスン編で 四季の俳優さんたちが主に利用する施設を紹介します。食堂やトレーニングジムなどの体作りの基礎となる施設から、資料室のように役作りに必要な施設まで、さまざまな面からスキルアップをサポートする体制が整っていました。また、食堂ではメニューの一部を実際に食べてみました。
詳細は以下から。四季芸術センターに到着。
玄関までは階段で向かいます。
エスカレーターもありますが、これは主に劇団へ来訪したお客さんのためのもの。普段は階段を利用するそうです。今回、編集部員はてくてくと階段を上っていきました。
堂々たる「劇団四季」の文字。
玄関には現在上演中の公演ポスターがずらり。
共有の傘も置かれていました。
玄関脇には来客応接用とおぼしきフリースペースが。
その反対側には俳優さんたちが利用する下駄箱が設置されています。
ぱっと見ると、まるで学校の下駄箱みたいです。俳優さんの名前がきちんとシールではられているのがさらにそれっぽい。
スリッパも置かれていましたが、下駄箱の上にあるということはちょっとキャパシティを超えているのでしょうか。
当日のレッスンの予定はホワイトボードに書き込まれ、これをもとに劇団員は自分が受講するレッスンの稽古場に足を運びます。
入って少し奥へ進んだところには、「慣れだれ崩れ=去れ」というフレーズが掲示されていました。これは劇団員へ対する戒めの一つ。舞台に立つ中で、知らず知らずのうちにくる自らの“慣れ”を改めずにいると、やがてそれは“だれ”となり、最終的には“崩れ”てしまう。そのような自分自身を省みない者は劇団を去れ、という厳しい内容です。また、隣にある「一音落とす者は、去れ」も同様で、俳優にとって最も重要なことは台本に書かれた台詞を明晰(めいせき)に客席へ届けることであり、これを守れずに1音でも落とすような者は去れというものだそうです。
それぞれ志す役割ごとに「俳優心得」というものが存在します。これは「歌志望心得」。
「ダンサー心得」は「俳優と同じ訓練」をした上でバレリーナはジャズダンスの基礎を、ジャズダンサーはバレエの基礎を学び、広く実力をつけていくことを教えています。
これが「俳優心得」。まず第一に「歌手と同じ訓練をすること」という項目が来るなど、他のジャンルの役割同士がリンクしていて、完全な分業となっているわけではない様子。そして、レッスン編で見学した腹背筋を使った呼吸法は、どの分野の人にも必要な基礎力として挙げられています。
歌とセリフを扱うに当たって身につけるべき能力が書かれています。
先人の言葉は印刷したものもはられていました。
浅利慶太氏(劇団四季代表)が率先してエコ活動に取り組んでいるため、館内には大きな掲示が。
ペットボトルキャップを集めてポリオワクチンを提供する取り組みにも積極的に参加しています。浅利さんもわざわざ家からキャップを持ってきているのだとか。
廊下は広く、一歩稽古場を出ると抜けのある空間が広がります。
中にある設備は大体同じですが、こぢんまりとまとまっている印象の小規模な稽古場。それと、こちらの方が使われている木材のせいかちょっと温かい雰囲気を醸し出しています。
稽古場の広さに合わせてか、こちらにはグランドピアノではなくアップライトピアノが置かれていました。
音響設備はぬかりなくそろえられています。
トレーニングジムの中へと入っていきます。
肉体を鍛えるのに必要な機材がずらり。
乗馬マシンもあり、結構利用者は多いそうです。
マッサージの治療院もジムの中に併設されていました。
料金表などが机に置かれています。
一時期流行したバランスボールも転がっていました。体幹を鍛えるのに便利なので置いてあるのだとか。
鏡やバーもあり、ここでフィットネスやダンスをすることもできそう。
定番のランニングマシーンもあります。
かなり整ったジムだな、と思いきや、入り口付近に学校を思わせるものが。掃除用の流しだそうですが、どこか懐かしい雰囲気を持っています。
劇団四季だけでなく、演劇全体にまつわる資料が置かれています。
劇団を支えてきた方々をしのぶスペースも。
歴史がよく分かる展示物がいろいろと飾られていました。
芸術資料センターに飾られていたような、時代を感じるポスターがここにも。
先ほどレッスンを見せてもらった稽古場は広かったですが、より小ぶりなものもありました。
廊下には長野の倉庫で見せてもらったようなセットの一部も置かれていました。
「ライオンキング」で使われる小道具の稽古用。印象的なメスライオンの頭部が置かれていました。
稽古用とは言っても、ほとんど本番同様作り込んであるものがほとんど。
しまうまのパペット。
一部のガゼルは逆さづりになっていました。
これは「草」役の方が使う布ひも。一度舞台を見たことがある人なら「あ、あの場面で使われていたものか」とピンと来るくらい、印象的に使われる小道具です。
こちらは劇中「王様になりたい」というシーンで用いられる道具の練習用。舞台で使われるものと全く同じ大きさ・形で廊下のすみに鎮座していました。これは純白のキリンですが、本番の物はこれにペイントが施されています。
館内には個人レッスンのための個室がいくつも用意されていました。利用には予約が必要ですが誰でも使えるとのこと。
入ってすぐはこんな風になっています。
電子ピアノと簡易机が設置されています。
コンポもあるので、ピアノ伴奏だけでなく音を流しながらの練習もできます。
バーと鏡もあるので、自分の動きをしっかり確認することもできそうです。
「ライブラリー」「俳優サロン」が併設されています。さっそく中へ入っていきます。
CATSの記念碑も置かれていました。
四季や演劇に関する資料が所蔵されていて、ここで貸出・返却ができるようになっています。
「ライブラリー」の真上あたり、2階部分に食堂はありました。食堂の入り口にはメニュー見本と今週のメニュー一覧が。営業時間は11:30~15:00までということで、昼食の時間帯に利用できるようになっているようです。
小鉢類も充実、ご飯も白米と雑穀米から選べるようになっていました。食堂に着いたころには雑穀米は売り切れてしまっていたのでかなり人気がある模様。健康を気遣う俳優さんが多く利用するからかもしれません。
食券は社員さんが利用するオフィスで購入できます。上の写真のメニューを見ても分かるように支払いには金額ではなく「点数」が採用されていて、幹部俳優や社員さんが1点あたりの値段を少し多めに払い、研究生の食事を金銭面からサポートする形になっています。
お盆を取ってカウンターへと進みます。
手前にあるサラダや小鉢はセルフで取り、メインディッシュやご飯はお店の方に言ってよそってもらう形式。お盆を乗せるレールもやはり学食を思わせます。
カウンターの真後ろには調味料BARという、ドレッシングやマヨネーズが大胆に置かれている場所がありました。
水・お茶はセルフサービス。
実際にここで昼食をとることにしました。手前がシーフードカレーとサラダ、奥がビーフストロガノフとご飯、ココアプリンです。
サラダはおかかがかかっていたので、調味料BARからごまドレッシングをチョイスしてかけました。ちゃんと量があって、野菜を食べたという気持ちになれます。
シーフードカレーの辛さは一般的な中辛程度で、食堂の雰囲気のせいもあるかもしれませんがいつかどこかの学食で食べたものを思い出しました。
ビーフストロガノフは野菜やパスタもつけあわせられておしゃれな感じ。味はハヤシライスの中にがっつり牛肉だけ入っているような感じですが、脂はあまり感じずさっぱり食べられました。ご飯とも相性がいいですが、パンを添えて食べてもよさそうです。
ココアプリンはなめらかな舌触り、クリームもたっぷり乗っていて、食後のデザートとしては満足度が高いものでした。
食べた後の食器も自分で返しにいきます。
自販機ではドリンク類だけでなく、お菓子やサンドイッチなども売っていました。コンビニはちょっと歩かないとないので、食堂が閉まった時間帯には心強い味方となりそう。
開放的な作りで、太陽光がさんさんと降り注ぎます。もうピークの時間帯は過ぎてしまっていたのですが、みなさん思い思いに利用していました。
社員さんのオフィス正面にあるフリースペース。ここで俳優さんたちがミーティングをすることもあるそうです。
観客を増やすための方策を検討する「動員委員会」の事務局。
その事務所の前にはチラシがずらり。駅構内のポスターや電車の中吊り広告で宣伝されている演目も多いので、見たことがある人もいるのでは。
他の公演のチラシを友人に配ったり、近隣店舗に上演中の公演のポスターなどをはって回ったりするのも俳優さんの仕事の1つ。地道なところからの宣伝が、観客動員数の増加につながるのかもしれません。
ウッディルームという、用途が名前だけでは分からない部屋を発見。
温かみのある内装の会議室となっていました。
医務室に突入。
入ってすぐはこんな感じ。
俳優さんのカルテがずらっとそろえられていました。
いろいろと常備されていますが、包帯や湿布などをもらいにくる人が大多数とのこと。
ここで横になって休むことも可能。
診察を受けることもできるようです。
来客用と思われるイスとテーブルが。
身長と体重を一度に計れる機械も。年に一度、外部の機関に委託して健康診断を行っているそう。
続いて、スタッフさんが作業にあたる各部屋を見ていきます。有名演目の小道具や衣裳を製作する現場がそこにはありました。
・つづき
劇団四季の創作の拠点とも言える稽古場、「四季芸術センター」見学レポート~後編~ - GIGAZINE
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