第六の味覚「脂味」の存在が肥満予防の鍵となるかもしれません
人間の味覚は化学物質の受容に基づく感覚で、5つの基本味(甘味・酸味・塩味・苦味・うま味)が味蕾の味覚受容体細胞の先端にある化学受容体を介して膜電位の活性化を引き起こすことにより、「甘い」「酸っぱい」などと認識し、「食べられない」「毒である」と判断したり、基本味を他の要素(嗅覚、視覚、記憶など)で拡張した「風味」を「おいしい」と感じたりします。
その5つの基本味のほかに、第6の基本味である「脂味」が存在することが明らかになりました。この「脂味」に敏感かそうでないかが体重と関係しているとのことで、肥満対策の鍵となると期待されています。
詳細は以下から。Discovery of 'fat' taste could hold the key to reducing obesity
オーストラリア・ディーキン大学のRussell Keast博士によって率いられたディーキン大学・アデレード大学・オーストラリア連邦科学産業研究機構とニュージーランドのマッセー大学による共同研究で、人間は第六の味「脂味」を感じることができ、「脂味」に敏感な人はそうでない人にくらべ脂っこい食物の摂取量が低い傾向があり、体重過多になりにくいことが明らかになりました。論文はBritish Journal of Nutrition誌の最新号に掲載されています。
「わたしたちの研究は、アメリカで以前行われた動物モデルを使って『脂味』の存在を示した研究結果にもとづくものです」とKeast博士。「人間の舌は甘味・塩味・酸味・苦味・うま味(タンパク質に富んだ食物の味)の5つの味を検知できることがわかっています。今回の研究結果をふまえて、わたしたちは人間が6つ目の味覚『脂味』を持っていると結論づけることができます」
研究では食品に含まれる一般的な脂肪酸の数種類について、人間がその「味」を感じることができるかどうか実験しました。その結果、人々には「脂味」を感じる閾値(いきち)があり、その閾値に個人差があることが明らかになりました。閾値が低い(敏感な)人ではわずかな量でも脂肪酸の味を感じられるのに対し、閾値が高い(鈍感な)人は同じ量でも脂味を感じられないというわけです。
「また、面白いことに、脂味に敏感な人々は鈍感な人々とくらべ、脂質の摂取量が低くBMIも低いということも明らかになりました」とKeast博士は語っています。
「この結果は、脂質が簡単に手に入り広く摂取される現代においては、脂味に対する感受性が鈍感になり、結果的に脂っこい食品を食べ過ぎるリスクにさらされている人々がいるということを示唆しています。今後の研究では、なぜ脂味に敏感な人々がいる一方で鈍感な人々がいるのかということに焦点を当てていきます。その理由が解明できれば脂質の摂取量をおさえたい人々の助けになり、低脂肪食品の開発などにも役立つでしょう」
「苦味」「酸味」などは「毒である」「腐っている」「食物ではない」などを判断するために重要で、敏感であることが生存にかかわってきた基本味ですが、食品が豊富に簡単に手に入り栄養失調より過食におちいりやすい現代においては、どの味に敏感であることが健康で長生きするために有利かということも変わってきているのかもしれません。
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