膨大な量のソフトウェアを扱う「Vector(ベクター)」に行ってきました
フリーソフトのダウンロードからシェアウェアの販売まで扱うソフトウェア・ライブラリサイト「Vector」に取材に行ってきました。
ソフトウェアのダウンロード販売はいったいどれぐらい売れるのか、転送量を維持するためのシステムはどうなっているのか、また評価システムの導入やVectorのソフトにコメントすると最大3000円がもらえる「ベクターコメントラリー」キャンペーンを開催した真意など、利用していて気になった点を色々と聞いてきました。
衝撃の内容は以下から。
これがVectorの入っているビル。
5階にあります。
受付には大きくロゴが。
オフィスの様子。
Web of the year受賞履歴の盾が飾ってあります。
オフィス内をグルッと見回したムービー。
■ブログサービスmaglogについて
GIGAZINE(以下、Gと省略):maglogは月額課金のブログですが、今後はどのような展開を?
小林(以下、小と省略):マーケット的に使っていただく場を整備したいと思っています。現状だとブログは横移動がしにくいので、デジタルコンテンツを横断的に売買できる場にしたい。イメージとしては既存のVectorに近いものを考えていましたが、もうちょっと研究する必要がありますね。たとえば同人誌などをデジタルコンテンツとして販売したいと思ったときに気軽に利用できるようにしたいので、売りたいと思ったときに売れるように、初期費用は無料にしています。売れなくてもかかる費用は重荷ですから。実際Vectorでのダウンロード販売でも全ての商品が売れているわけではありません。売れるソフトはガンガン売れるんですけどね。なので、取り敢えず登録しておこうという気軽さで、使っていただきたいと思っています。
G:月額課金機能を実行している状態でのアドセンス広告についてはどうなるのか?
小:将来的には広告を消す機能を実装予定です。今回は課金式サービスの開始を優先したので、後から整備する形になります。
G:独自ドメインでの運用は考えていますか?
小:独自ドメインでの運用もできるようにしたいと考えています。広告と独自ドメインサービスはメインで今考えているもので、最低限この2つはやります。あとは容量について優遇できるようにしたいと思っています。
■評価システムについて
G:評価システムを導入した理由は?
高根(以下、高と省略):まず、以前のVectorは、ユーザーの方から「ただダウンロードするだけの場所」という認識が強く、ソフト作者とユーザー間の情報交換がない状態でした。そこで、実際にソフトを利用したユーザーの方の意見を反映させることができれば、ソフト作者とユーザーの双方にメリットがあるのではと考えたからです。
G:デザインも変わりましたね。
高:評価システム導入と同時に、ダウンロードするだけの場所という認識から脱却すべく、ダウンロードをするために来たユーザーの方にベクターのサイト内を横移動しやすく、使いやすくしようということでデザインも変更しました。
G:コメントをつけると電子マネーがもらえるキャンペーンがありましたよね?
高:コメント評価機能をつけたものの、なかなかコメントがつかなかったので。プレゼントを導入することでコメントを活発につけてもらって、ユーザーさんが理解しやすいようにしたかったんです。
G:コメントを付けたことによって何か変わりましたか?
高:やはりソフトに対するユーザーの方の生の声ですから、関心は高いようで、利用者数増につながっています。
小:コメントがつけばそれだけ使いやすくなるので、自然と人数が上がるのではないかという目論見はあったんです。その効果の一端が出ているんじゃないかな。ロケットスタートという狙いとしてはキャンペーンは成功だったと思います。
濱中(以下濱と省略):キャンペーンについては社内でも議論していたんですが、トップから「すぐにでもやろう」というプッシュがあったので始まりました。普段はもっと議論が煮詰まってから始まるのですが、1発目のアイデアが実現するというVectorとしては珍しいパターンなんです。
G:ではmaglogを始めるに当たってはいろいろと議論が長引いたということですか?
小:スクラップアンドビルドというと大げさになっちゃうんですけど、まずはどこに一番大きなマーケットがあるかという議論でした。最初はストレートに売るということを意識していて、ショップ機能にブログがつくという所から始まったんです。でもそれだとスタートアップしないだろうということで、ブログの部分を重視していくようになりました。Vectorはもともと個人と個人でのやりとりができるシェアウェアを扱っていたので、それを生かさない手はないと思いました。
■Vectorの仕事場
G:社員の数は全部で何名ぐらいになるんですか?
濱:61名ですね。38名が正社員で、23名がアルバイトやパート。サイトに書いてある内容そのままです。
G:出勤体制は?
高:フレックスですね。10時~15時30分までがコアタイムになっています。
G:昼食はどこでとっていますか?
高:僕の場合は、妻にお弁当を作ってもらっています。他の人は外食が多いですね。
小:まあ社内に食堂などがないので昼食は買ってくるか、外に食べに行くしか選択肢が無いですね(笑)。幸い周りに少々高いがおいしい食べ物屋さんが多いので、財布を圧迫しますが利用していますね。
ベクターのオフィスグリコではジャイアントコーンが大人気らしい
電子レンジや冷蔵庫にポットも完備。
G:他の会社に負けないと言えるイベントなどはありますか?
高:1年に1回社員旅行があります。高級旅館で。今年は有馬温泉でした。
小:上の人間の趣味も大分入ってますね(笑)。1回ぐらいはいい所に行きたいねというノリで毎回いいところに行ってます。
G:ほかに変わったところはありますか?
高:オタクの人が多いですね。PC関係で困ったことがあれば、すぐに解決してもらえるので助かっています。
濱:発足時のメンバーたちがパソコン通信の時代からの人間で、非常に知識も深く新しいものも好きなんです。だから助けてほしい事は、ほぼ100%解決してくれますね。何かあると必ず出てきて。
高:自分の仕事以上に頑張ってくれます(笑)
G:伝説のエピソードがありますか?
高:あまり言いたくはありませんが、昨年のウイルス騒動が大変でした。もう発覚した時にはすぐにダウンロードを止めて、一台一台マシンをチェックするという作業に追われました。
濱:社内でウイルスが広まってしまってそれを配布したという前代未聞の事態だったので、対応に苦労しました。ウイルス定義ファイルが更新された結果発覚したという形ではなく、今回は我々に甘い部分があったのでかなり反省しています。
■Vectorの歴史と現在
小:もともとVectorという会社は練馬にあった会社で、フリーソフトをCD-ROMに収録させていただいて販売していた会社だったんです。でも収録するソフトが増えるたびに、どんどんCD-ROMの枚数が増えて12枚になってしまいまして。このまま増え続けると売り物にならないぞ、というタイミングでちょうどインターネットの隆盛もあったことから、98年に雑誌からの転換を図りました。出版社からIT企業になるというもので、失敗は許されないという綱渡りでしたが、かなり思い切って方向転換しました。
G:なるほど。確かにそれは凄い。
小:ソフトも最初は「有料で公開すればいいんじゃ」と言っていましたが、インターネットというのは無料であることがほとんどなので、結果、今のビジネスモデルに落ち着いたんです。
棚にはかつて出版社だった頃に出した遺産が。
G:主な利用者層は?
高:30代半ばの技術関係の男性が多いですね。8割が男性です。
G:Vectorはライブラリの配布がメインだと思いますが、転送量はどれぐらいいっていますか?
濱:月間で10TB以上です。
小:一日のダウンロード数は40万を越えていますね。
G:Vectorのサイト構成はどういうような利用法を想定しているのですか?
高:トップページからの流れでは、ソフトナビをまず利用していただいて、そこからレビューやランキングなどを参考にしてもらう利用法を想定しています。
濱:ソフトの紹介は、新しく入ってきたソフトを実際にチェックして、面白そうなものをピックアップして記事を作っています。作者さんの紹介文やレビューなども見て書いています。
G:掲載までの期間はどれぐらいですか?
濱:ソフトを決めてから、最短でだいたい一週間ですね。
G:書く人によって傾向はありますか?
濱:書くライターさんによって得意分野がありますので、分野に合わせてライターさんにお願いしています。そのソフトを動かすのにかなり特殊な環境が必要なものもありますが、さまざまなライターさんが参加してくれていますので、ほとんどのソフトに対応できます。
特殊環境に対応するため人によって全く違うデスク。
G:サーバーなどの運営なんですが、どんなシステムになっていますか?
高:約40台のサーバで運営しています。
濱:システムは複雑で状況に応じて変えるので、我々でも把握しきれていないときがあるんですよ。
小:システム担当の部署がこまめにメンテナンスしていて、サーバーやデータセンターを切り替えて安定性などを調整しているんです。
G:ダウンロードをFTPとHTTPに分けた理由は?
小:ダイヤルアップ接続の時代だとFTPとHTTPでは転送速度が違いましたので、導入していました。FTPだとレジューム機能などもありましたので。今ではそれほど問題はないですね。
高:会社などからですと、FTP接続ができないところもあることから、4月中旬からはHTTPのみになります。
■ソフトウェアの動向
G:有償ソフトが一時期から増え始めましたが、売れていますか?
小:1998年から始めましたが、おかげさまで売上は順調です。シェアウェアだけでなく、市販ソフトのダウンロード販売も年々伸びています。ソフトを買ってもマニュアルやCD-ROMなどはないので最初の頃は拒否感があるかと思っていたのですが、お店に行かずに自宅からすぐに手に入るという利便性が受けたんでしょうね。それがもっとも顕著にでるのは年賀状の時期で、書かなきゃと思った瞬間に買ってプリントアウトできますから。また、年賀状ソフトは店頭だと12月始めに売れ行きがピークを迎えますが、ダウンロードだとそこから伸びてきますね。一番多いのは12月31日で、1月3日になっても売れています(笑)
あとウイルスソフトなども売れますね。危ないなと思ったら購入する人が増えているみたいです。欲しいと思った時にすぐに手に入らないといけないソフトは需要が安定していますね。
ダウンロードされるソフトの値段帯を傾向的に見るとシェアウェアだと平均2000円、メーカー製ですと平均4000円ほどで売れています。
G:よく売れるシェアウェアのジャンルはありますか?
小:ジャンルというよりはバリューネームのあるソフトに集中していますね。秀丸エディタやBecky!などは強いです。
G:ダウンロード販売の売り上げは年々伸びていますか?
小:2000年からは伸びてきていましたが、最近は落ち着いてきて微増といったところですね。初心者ユーザーは増えていますが、最近はソフトを購入しなくてもいろいろな事がネットで出来ますから。パソコンも以前のように「ソフトがないとただの箱」という状態になることがなくなってきているんでしょうね。そういったお客様にも受け入れられるような新しい商品をどんどん揃えていきたいと思います。
■今後の方針や展開
G:今後の方針としては、どのような展開を予定しているのでしょうか?
高:濱中が担当しているWEBAPIをマッシュアップした「Mashupedia(マッシュペディア)」というサイトを作ります。APIを提供した企業やユーザーなどが議論できるフォーラムになる予定です。3月29日にプレオープンという形で、マッシュアップを作ってくれそうなユーザーさんにメールでお知らせしたほか、近日中に一般オープンすることを予定しています。
小:Vectorの方向性でいうと基本的に収益のベースはソフトウェア事業がメインですが、ライブラリは堅持しつつ、maglogみたいなものやオンラインゲームなど、さまざまな事業を手がけていこうと思っています。基本的にVectorの売りは一日に訪れる人数の多さなので、maglogのようなブログであったり、オンラインゲームであったりを幅広く提供していくことを考えています。
G:本日はありがとうございました。
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