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65万人の登録ユーザーを抱えるディープフェイクポルノ共有サイト「MrDeepFakes」の背後には何者がいるのか?


ドイツの公共放送局・ARDとZDFが共同で資金を提供しているプロジェクト「STRG_F」と、オランダの調査報道機関・Bellingcatが、共同で行ったディープフェイクポルノに関する調査の結果を発表しました。

MrDeepfakes: Wer steckt hinter meinen gefälschten Bildern? - YouTube


Faking It: Deepfake Porn Site’s Link to Tech Companies
https://www.bellingcat.com/news/uk-and-europe/2025/01/28/deepfake-porn-sites-link-to-tech-companies/

ディープフェイクポルノ産業で特に悪名高いサイトとして、若手記者を中心とした調査報道プロジェクト「STRG_F」とBellingcatは「MrDeepFakes」を名指ししています。65万人以上の登録メンバーを抱える「MrDeepFakes」には何万もの画像や動画がホストされていて、月間アクセス数は数百万に上るそうです。STRG_Fによると、「MrDeepFakes」には2018年2月以降、2024年12月までに合計で5万8123本の動画がアップロードされ、累計で20億回以上閲覧されたとのこと。


今回、このディープフェイクポルノに関する調査を行ったリポーターのパトリツィア・シュロッサー氏は、「MrDeepFakes」で自らのディープフェイクポルノも30本以上作成・公開されていたことに当初は衝撃を受け、本物ではないものの恥ずかしかったとのこと。しかしその後、黙っているのではなく反撃しなければならないと思い直したと語っています。

この「MrDeepFakes」がいったい何者の運営するサイトなのかはベールに包まれています。お金の流れからたどろうにも、有料メンバーシップは仮想通貨で購入可能なため追跡が事実上不可能となっているほか、PayPalによる決済も検証不可能な名称で多数のアカウントにリンクされているそうです。


そこでSTRG_FとBellingcatは、サイト上で目立つようにPRされている「DeepSwap AI」と「candy.ai」という2つのアプリに着目しました。

「DeepSwap AI」は「MrDeepFakes」のサイトのトップ部分からリンクされている、月額9.99ドル(約1540円)でリアルなディープフェイクを制作することができるというアプリです。


「DeepSwap AI」はGoogle PlayとApp Storeで配信されていましたが、いずれも記事作成時点では配信停止となっています。「DeepSwap AI」公式サイトからは引き続き、App Storeで公開されている「DS Pro」というアプリへのリンクがありますが、アプリの説明は「パーソナルアウトフィットギャラリー」となっています。

DS PRO - AI Fashion on the App Store
https://apps.apple.com/us/app/ds-pro-ai-fashion/id6730112967


また、「DeepSwap AI」はアプリ開発元がGoogle Playでは「Meta way」、App Storeでは「Metaway Intellengic Limited」となっていましたが、「DS Pro」は「Genzone Future Intellengic Limited」という企業に代わっています。

Bellingcatによると、香港では企業の登記情報は一般に公開されていて手数料を支払えば閲覧可能であり、調べたところ、香港の対岸・深圳市に住む張という人物が唯一の取締役として登録されていたとのこと。そして、Metaway Intellengicは「Deep Creation Limited」という会社の100%子会社であり、Deep Creation Limitedはイギリス領ヴァージン諸島に拠点を置く「Virtual Evolution Limited」の100%子会社という構造になっていました。

さらに名前の出てきた3つの会社を調べたところ、深圳に拠点を置く「深圳市新国都支付技術有限公司(Nexgo)」との関連が明らかになりました。Nexgoは香港証券取引所に上場してブラジル、ドバイ、インドでも事業を展開する上場企業であり、財務諸表の中でVirtual Evolution LimitedとDeep Creation Limitedを関連子会社として扱っていました。NexgoはBellingcatによるコメント要求には応じなかったとのことです。

もう1つのアプリ「candy.ai」は、「ユーザーが独自のAIガールフレンドを作成できる」というもので、2024年12月17日まではリンクがなく、12月20日になるとリンクが加わっていたことがわかっています。

candy.aiを所有するのはマルタに拠点を置くEverAI Limitedで、CEOはアレクシス・ソウロポロス氏。ソウロポロス氏はオーストラリアのペットシッターマッチングサービス「Mad Paws」の共同創業者でもあります。Bellingcatからの問い合わせを受けて「MrDeepFakes」から「candy.ai」へのリンクは削除されており、EverAIは問い合わせに対して「ディープフェイクの作成を容認しない」という姿勢を示したとのことです。

世界的にディープフェイクへの対応が進められており、たとえばイギリスでは2024年にディープフェイクポルノの制作・共有を取り締まる法律ができていて、「MrDeepFakes」のようなディープフェイクポルノサイトへのアクセスもブロックされています。

性的に露骨な「ディープフェイク」の作成と共有は犯罪になるとイギリス政府が発表 - GIGAZINE


なお、本件について「MrDeepFakes」はBeelingcatからの問い合わせに反応しなかったとのことです。

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in ネットサービス,   動画, Posted by logc_nt

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