ネットサービス

2020年にTikTokが禁止されたインドではInstagramの「Reels」がTikTokに取って代わっている


アメリカでは「アメリカ人を外国の敵対者が管理するアプリケーションから守る法律(通称:TikTok禁止法)」に基づき、2025年1月19日にショート動画共有SNSのTikTokが配信停止されました。記事作成時点では、TikTok禁止がアメリカにどのような結果をもたらすのかは不透明ですが、2020年にTikTokが禁止されたインドではInstagramのショート動画共有機能である「Reels」が台頭するなどの変化が起きたと、大手日刊紙のワシントン・ポストが報じています。

TikTok bans in other countries have led to disparate outcomes - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/technology/2025/01/18/tiktok-ban-russia-india-nepal/


2020年6月、インドと中国が国境を争っているカシミール地方両国軍が衝突し、インド国軍部隊の17人を含む20人の死者が出る事態となりました。これを受けてインド政府は6月29日、データセキュリティ上の懸念を理由にTikTokを含む59個の中国製アプリの使用を禁止しました。

当時のインドではTikTokが圧倒的な人気を誇っており、TikTokにとって2億人ものユーザーを抱える世界最大の市場のひとつとなっていました。しかし、インド政府は迅速にTikTokの禁止を実行し、アプリストアからTikTokをインストールできなくなっただけでなく、インターネットプロバイダーもTikTokへのアクセスを完全に遮断。市場に明確な代替製品がなかったことから、その他のアプリにとって「数十億ドル(数千億円)規模のチャンス」が生じました。


インドのテクノロジー系メディア・MediaNamaの創設者であるニクヒル・パーワ氏によると、TikTokの禁止はショート動画の投稿で生計を立てていたインド全土のクリエイターに打撃を与えたものの、大衆による大規模な抗議活動には発展しなかったとのこと。

インドのTikTok禁止から3カ月以内に、MetaがInstagramの動画共有サービス「Reels」を立ち上げたほか、GoogleもYouTubeショートを開始しました。いずれもTikTokを意識したショート動画共有機能となっており、TikTok禁止から4年以上が経過した記事作成時点では、Reelsが「完全な勝者」になったとパーワ氏は語っています。

しかし、ReelsもTikTokほどインド人の心をつかむことはできなかったとのこと。その理由についてパーワ氏は、TikTokではレンガ職人や農家など田舎に住む大勢の人々も、地元の視聴者向けに家庭的な動画を投稿していましたが、Reelsはあらゆる場所がインフルエンサーで埋め尽くされ、より国際的で商業的なプラットフォームになっているためだと考えています。インド在住のテクノロジー系ジャーナリストのシェファリ・バット氏は、ReelsはTikTokに最も近い代替品であるものの、田舎に住む人でもスターになれるかもしれないという夢を見せたTikTokの「名声の民主化というユニークな現象」を模倣できたアプリはないと指摘しました。

いずれにせよ、インドではTikTok禁止から数年が経過しており、TikTokは過去のものとなってしまいました。パーワ氏は、「インドはTikTokから離れてしまいました。もう誰もそれについて考えていません」とコメントしています。


インドによるTikTok禁止から数年の間に、アメリカやカナダ、ヨーロッパの国々を含む世界中の政府機関で、政府職員のデバイスでTikTokを使うことを禁じる動きが活発化しました。また、一時的な措置がほとんどではあるものの、少数の国ではTikTokの禁止が実行されています。

実際にネパールでは2023年11月、「社会の調和を乱す」としてTikTokが禁止されました。この措置の具体的な動機は不明ですが、部分的には国内の宗教的・民族的な緊張に対応するためだったとみられています。ネパールでも多くのユーザーがReelsに流入しましたが、2024年8月にTikTok禁止が解除されると、再びTikTokの人気がReelsを上回ったとのこと。

デジタル権利を擁護する非営利団体・Access Nowによると、近年は少なくとも12カ国でTikTokの全国的なブロックが行われたものの、そのほとんどは抗議活動や政情不安を鎮めるための一時的な措置だったそうです。記事作成時点でTikTokの禁止を続けているのは、インドの他にヨルダン、キルギスタン、アルバニアが含まれており、特にアルバニアでは1年間にわたりTikTok禁止を続けることが決定されました。

カリフォルニア大学アーバイン校の法学教授であるデビッド・ケイ氏は、TikTokが今後アメリカで再開されるかどうかにかかわらず、一度でもTikTok禁止法がアメリカで可決されたという事実により、他の国々でも同様の禁止措置が導入される可能性が高まるとみています。ケイ氏は、「アメリカは言論の自由について、世界中の多くの国々のモデルになってきました。私の推測では、多くの国がアメリカ人の大多数を不快にさせたTikTok禁止に追随することになるでしょう」と述べました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
アメリカ最高裁がTikTok禁止法を支持したことでTikTokが正式に「1月19日にサービスを終了せざるを得ない」と発表 - GIGAZINE

「TikTok禁止法」施行に伴ってTikTok・CapCut・Lemon8・MARVEL SNAPなどがアメリカで配信停止に - GIGAZINE

アメリカで禁止されたTikTokのサービスが復旧へ、トランプ次期大統領の働きかけにより - GIGAZINE

TikTokのタイムリミット「2025年1月19日」が到来したら何が起きるのか? - GIGAZINE

TikTok禁止法の施行を前にTikTokはユーザーに「Lemon8」への脱出を推奨している - GIGAZINE

TikTok難民が中国製SNS「小紅書(RedNote)」に大移動もTikTokと同様の規制がかかる可能性があると専門家が釘刺し - GIGAZINE

TikTok禁止の影響によりDuolingoで中国語を学ぶユーザー数が前年同期比で216%増加 - GIGAZINE

TIkTok終了が迫る中Instagramがショート動画機能「Reels」に2つの新機能を追加 - GIGAZINE

Instagramが独自の動画編集アプリ「Edits」を発表、TikTokの「CapCut」対抗 - GIGAZINE

in モバイル,   ネットサービス, Posted by log1h_ik

You can read the machine translated English article Instagram's 'Reels' has replaced Tik….