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「無」を形ある物で表現するという「0(ゼロ)」の概念はどのように誕生し、人類の発展に大きく貢献したのか


今では当たり前のように日常生活で使われるなじみのある数「0(ゼロ)」は、その概念が受け入れられたのはほんの数百年前で、0の発明によって数学や科学が大きく進化したことが知られています。形のない「無」の世界を形ある物(数字)で表現することにどんな意味があったのかがムービー「What is Zero? Getting Something from Nothing」で解説されています。

What is Zero? Getting Something from Nothing - with Hannah Fry - YouTube


「無」を形ある物で表現できるでしょうか?これは非常に重要な数でありながら、古来から常に「数」としては捉えられてこなかった「0(ゼロ)」の話です。


0は1500年もの長い時間にわたって、人類の歴史で行ったり来たりという数奇な運命をたどってきました。


0には2つの役割があります。1つは空位を表す「記号」としての役割。


位取り記数法ではその位に何らかの数字を入れる必要があるので、便宜的に0を使うという意味づけです。空位を示す0のおかげで、300>30>3という大小関係を表現できます。


そして、もう1つの役割が、「何もない」という状態を示すもの。


0はニュートラルな存在として、正と負の数を分ける役目も果たします。


0は足しても引いても数に変化を与えず、かければ必ず0になるという性質を持ちます。


しかし、0で割ることは許されません。


限りなく0に近い小さな数で割ると数が巨大になることから、かつては0で割れば「無限」になるという考えがありました。


しかしこれは誤り。無限は概念であり数ではありません。0で割ることは許されないのです。


数学は物を数え上げるために発達しました。例えば、過ぎ去っていく日数を数えたり……


手に入れたニワトリの数を数えたり。


人類は文明ごとに独自の数のシステムを持っていました。例えばバビロニアでは、2つの記号を組み合わせることで、1から60までを表現することができました。


古代ギリシアやマヤでも独自のナンバーシステムが開発されていました。


そして、どの文明にも空位に入れるための記号としての0の概念は生み出されていましたが……


何もない無を表現する数そのものとしての0を最初に発明したのはインドだと言われています。


インドは1から9までの数字と、「・」によって無(0)を表現しました。


7世紀の数学者ブラーマグプタは、0という用語を使い……


0を使った加算、減算、乗算を発展させました。


しかし、除算だけは苦しみ……


ブラーマグプタの時代から数百年もの間、0の除算は解決することなく時が過ぎました。


インドで生まれた数そのものとしての0は、中国やイスラム圏、アラビア圏に広がっていきました。


0は貿易での計算に非常に便利だったからです。


しかし、ヨーロッパ圏ではローマ帝国が確立したナンバーシステムと相いれないため、インド式の0という概念はなかなか受け入れられませんでした。


しかし13世紀にイタリアの数学者フィボナッチがアラビア数字のシステムを完成させたことで……


ついに0はヨーロッパのナンバーシステムにも取り込まれました。


その後、400年間は数学の時代。


自然現象や物理現象を説明するために数学が用いられ、0はフル活用されて人類の文明が大きく発展します。


宇宙のような巨大な世界から、原子のような極めて小さな世界まで表現できるようになると、微積分法によって0の世界が探求されましたが、やはり、0で割ることだけは聖域として残されました。


0は数学上の強力な武器として、人類に貢献しています。


そして、0と1で表現するコンピューター時代の到来で、0はますます存在感を強めています。


このようにして0という「無」は、数字という形あるもので表現されるようになったのです。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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