ソフトウェア

Firefox開発のMozillaが「Appleの代替ブラウザを認める新規則は可能な限りの苦痛を強いるもの」と批判


AppleはEUのデジタル市場法を順守するため、iOS向けのブラウザエンジンをWebKitしか認めなかったこれまでの姿勢を崩し、サードパーティー製ブラウザエンジンを許可する新規則を発表しました。しかし、Firefoxを開発するMozillaは、Appleの新規則は開発者に不必要な負担をかけるものだと主張しています。

Mozilla says Apple’s new browser rules are ‘as painful as possible’ for Firefox - The Verge
https://www.theverge.com/2024/1/26/24052067/mozilla-apple-ios-browser-rules-firefox


Apple's plan to allow browser competition dubbed unworkable - Open Web Advocacy
https://open-web-advocacy.org/blog/apple-dma-changes/


EUのデジタル市場法はコアプラットフォームを運営する巨大IT企業を「ゲートキーパー」と認定した上で厳しい規制を課す法律で、2023年5月に施行されました。ゲートキーパーに認定されたAlphabet(Googleの親会社)、Apple、Amazon、ByteDance、Meta、Microsoftの6社は2024年3月6日までにデジタル市場法への順守が義務付けられます。

Amazon・Apple・Google・Microsoftなど大手テクノロジー企業7社がEUのデジタル市場法における「ゲートキーパー」であることを認める - GIGAZINE


これに対応するため、AppleはiOS 17.4からWebKit以外のブラウザエンジンを許可し、iOS上でFirefoxやChromeなどをWebKit以外の代替ブラウザエンジンで動作することをEU圏限定で認めると発表しました。

AppleがついにChromeとFirefoxのフルバージョンをiPhone上で動かすことを許可 - GIGAZINE


これまでiOS向けにもFirefoxやChromeはリリースされていましたが、ブラウザエンジンはWebKitを採用したバージョンでした。新規則の導入により、EU圏内限定ではありますが、2024年3月からはiOS上でも独自のブラウザエンジンで動作することができます。

しかし、Mozillaの広報担当者であるダミアノ・デモンテ氏はIT系ニュースサイトのThe Vergeに対し、「事態の推移については非常に残念に思います」とコメントしています。


AppleがこれまでChromiumやGeckoなどの代替ブラウザエンジンを認めてこなかったのは、ウェブブラウザ上で行われるユーザーのパフォーマンス体験やアクティビティを保証する目的があるとAppleは述べています。つまり、オンラインアクティビティに大きく関わるウェブブラウザでサードパーティー製ブラウザを完全に認めてしまうことはセキュリティリスクにつながるというのがApple側の主張です。そのため、今回の代替ブラウザエンジンを認める動きは、あくまでもEUのデジタル市場法順守のためであり、EU圏以外では従来通りWebKitしか認めない姿勢を崩していません。

AppleがEU圏内にしか代替ブラウザエンジンを認めなかったということは、Firefoxを開発するMozilla側からすると、「iOS向けにWebKit版FirefoxとGecko版Firefoxの2種類を同時に維持しなければならない」ということになります。デモンテ氏は「新規則の影響で、Firefoxのような独立したブラウザが異なる2つのブラウザ実装を構築して維持することを強いられます。この負担は、Apple自身は負わなくていいものです」と述べています


デモンテ氏は「Appleの提案は、Safariの代替となる競合ブラウザを提供する他社に可能な限りの苦痛を強いるものであり、消費者に実行可能な選択肢を提供できていません」と述べ、Appleの姿勢を強く批判しています。

オープンウェブの未来を目指すソフトウェアエンジニア団体のOpen Web Advocacyは、デモンテ氏の意見に同調してAppleを批判しながらも、「デジタル市場法によってAppleがついに重い腰をあげたことは重要な一歩です」とコメントし、将来的にすべてのユーザーが自分のウェブブラウザを選択できるようにしたいと語りました。

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
Apple・Google・Microsoftが自社ブラウザよりもFirefoxを冷遇するために設けている技術的問題点をまとめたページ「Platform Tilt」をMozillaが公開 - GIGAZINE

Appleがデジタル市場法を受けてEUでのサイドローディングとApp Store外決済を認めるも厳しい条件や新しい手数料が追加される - GIGAZINE

AppleがiOSアプリに課す1インストール当たり約80円の「コアテクノロジー料」が無料アプリやフリーミアムアプリの開発者を破産させる可能性 - GIGAZINE

Appleが「iOS・iPadOS・macOS用に3つの異なるウェブブラウザが偶然『Safari』という名前で提供されている」というトンデモ主張でEUの規制を回避しようとしていた - GIGAZINE

GoogleはSafariのデフォルト検索エンジンになることで得ている収益の36%をAppleに支払っている - GIGAZINE

in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

You can read the machine translated English article here.