生き物

地球上の全アリの数は「2京匹」


アリは大量の個体と複数の社会階層からなるコロニーを形成し、森の中や公園、歩道の隅まで至るところに生息しており、「地球全体ではどれほどのアリが生息しているんだろう?」と不思議に思っている人もいるはず。米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された新たな論文では、「地球上に生息するアリの総数は控えめに見積もっても2京匹」と試算されています。

The abundance, biomass, and distribution of ants on Earth | PNAS
https://doi.org/10.1073/pnas.2201550119

Earth harbours 20,000,000,000,000,000 ants – and they weigh more than wild birds and mammals combined
https://theconversation.com/earth-harbours-20-000-000-000-000-000-ants-and-they-weigh-more-than-wild-birds-and-mammals-combined-190831

Earth has 20 quadrillion ants, new population study says - The Washington Post
https://www.washingtonpost.com/climate-environment/2022/09/19/ants-population-20-quadrillion/

アリは人間から見れば非常に小さな昆虫ですが、土壌を掘って空気を通したり、植物の種子を広げるのに役立ったり、さまざまな有機物を分解したり、他の動物たちのエサになったりと、自然界にとって重要な役割を担っています。また、一部の鳥はアリの行進を手がかりに獲物を探しているほか、アリを使った農作物の害虫駆除が農薬と同じくらい効果的なことも示されています。アメリカの著名な昆虫学者であるエドワード・オズボーン・ウィルソン氏は、アリを「世界を動かす小さなもの」と呼びました

アリは高度な社会集団を形成することで世界中のさまざまな環境や生態系に適応し、これまでに1万5700以上もの種と亜種が命名されているほか、科学者によって命名されていないものも多く存在するとみられています。世界中の生態系を支えているアリの個体数を正しく推定することは、環境変化がアリにもたらす影響を評価する上で重要です。しかし、これまでの「地球上に生息するアリの数」の推定は曖昧な仮定に基づくものが多く、体系的でエビデンスに基づいた推定値は不足しているとのこと。


そこで香港大学の研究チームは、世界中の昆虫学者によって行われた489ものアリの個体群に関する調査結果を分析し、地球上に生息するアリの個体数を推定しました。研究に用いた個体群調査はすべての大陸や森林・砂漠・草原・都市を含む主要な生息地にまたがっており、落とし穴トラップや落葉のサンプルなどからアリを収集する標準的な手法を用いていたとのこと。なお、調査結果は英語文献に限らず、スペイン語・フランス語・ドイツ語・ロシア語・北京語・ポルトガル語など複数の非英語文献も含んでいたそうです。

分析の結果、研究チームは「地球上に生息するアリの個体数は、控えめに見積もっても2京匹」と算出しました。この数字は、従来の推定値の2~20倍の数だとのことで、アリの個体数はこれまで想定されていたよりもはるかに多い可能性が示唆されています。研究チームは、「以前の数字は、アリが世界中の昆虫生息数の1%を占めると仮定した『トップダウン』のアプローチを採用していました。対照的に私たちは、実地で観察したアリのデータを使用し、仮定が少なくより信頼性の高い『ボトムアップ』の推定値を出しています」と述べています。


また、地球上に生息するアリの総バイオマス(炭素の乾燥重量)は「1200万トン」に相当すると推定されています。このバイオマスは野鳥と人間以外の哺乳類を合計したものより多く、人間のバイオマスの約20%に相当するとのこと。さらに、アリは生息地によって分布量の差が大きく、一般に熱帯地方で最も多いほか、森林や乾燥した地域で豊富にみられることもわかりました。

なお、研究チームは注意するべき点として「データの収集地点が地理的に不均等に分布していること」「サンプルの大部分は地上で収集され、樹上や地下のアリに関するデータが少ないこと」などを挙げており、結果はやや正確さに欠ける可能性があるとのことです。

近年は大量の昆虫が絶滅の危機瀕していることが問題視されており、アリの個体数も減少している可能性があります。論文の共著者であるSabine Nooten氏は日刊紙のワシントン・ポストの取材に対し、「アリの個体数について時間的変化を示す試みはまだ行われていません。これは次の課題です」と述べました。

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in サイエンス,   生き物, Posted by log1h_ik

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