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「充電池より使い捨ての方が高性能」「単三電池は重い電池ほど長持ち」など単三アルカリ電池に関する俗説を徹底検証した結果が公開中


量販店の店頭やネットショップで電池を買おうとして、どれがいいのか迷ってしまった経験がある人は多いはず。アルカリ電池は、マンガン電池に比べて長時間安定した電圧・電流を維持できるので、特に一般的な規格の単三アルカリ電池は懐中電灯や携帯オーディオ機器、おもちゃやゲームのコントローラーなど幅広い製品の動力源となっています。そこで、太陽光発電や電化製品の専門家が、市販されているさまざまな単三アルカリ電池や充電池の性能を実際に計測して、その分析結果を公開しました。

Great AA Alkaline Battery Test – Pt 1: Battery Testing Fundamentals | Gough's Tech Zone
https://goughlui.com/2016/12/19/great-aa-alkaline-battery-test-pt-1-battery-testing-fundamentals/

Great AA Alkaline Battery Test – Pt 2: The Contenders | Gough's Tech Zone
https://goughlui.com/2016/12/19/great-aa-alkaline-battery-test-pt-2-the-contenders/

Great AA Alkaline Battery Test – Pt 3: The Results | Gough's Tech Zone
https://goughlui.com/2016/12/19/great-aa-alkaline-battery-test-pt-3-the-results/

オーストラリア・ウエスタンシドニー大学でエンジニアリングを研究しているGough Lui氏によると、一口に電池と言ってもその性能は千差万別とのこと。例えば容量の場合、「容量が1000mAhで電圧が1.5Vの電池と500mAhで3Vでは同じエネルギーを持っている」ことになるため、一概に容量の値が大きければ高性能というわけではありません。電流と電圧を掛け合わて「ミリワット時(mWh)」を計算すれば電池の電力量を把握できますが、公称電圧は温度をはじめとするコンディションによって大きく変動するので、メーカーの情報や簡単な測定だけでは電池の実力を知ることはできないのだそうです。

そこでLui氏は、以下の条件で市販の単三電池を片っ端から測定して比較する実験を行いました。
・エアコンで室内温度を21度に設定
・電圧降下による誤差が出ないようAWG16の電線を使用
・自分でレビューして信頼性を確認した電力テスターであるB&K Precision Model 8600で計測
・一般的な2000mAhの1.2Vニッケル水素電池と同じ「5時間で400mAの放電」を想定して0.48Wの条件で測定
・一般的なデバイスが必要とする電圧の下限である0.8Vでテスト終了


テストには、Lui氏が入手できた47種類181本、総重量4.26kgの電池を使用。かかった費用は電池代だけで約350オーストラリアドル(約2万9000円)で、総テスト時間は556時間もかかったとのことです。


そして、テスト結果の要約を表にまとめたのが以下。画像をクリックするとオリジナルサイズの画像(348KB)を見ることができるほか、ここをクリックするとPDFファイル(317KB)の表をダウンロードできます。表の項目のうち「m」がついているものは平均を、「s」がついているものは標準偏差を意味します。また、網掛けの色は緑ほど優れていて、赤になるほど性能が悪いことを示しています。なお、電池の価格やコストパフォーマンスも記載されていますが、電池の価格は変動が激しいのであくまで参考値とのこと。


例えば、テストを受けた電池のうち唯一の日本製である三洋電機のエネループ トーンズは、他の使い捨て単三アルカリ電池とは違って充電式のニッケル水素電池なので単純に比較は出来ませんが、負荷をかけていない状態の電圧である開路電圧の平均値(OCVm)が最も低い一方で、容量(mAh)やミリワット時(mWh)などは他を圧倒する成績でした。


このことから、Lui氏は「ニッケル水素電池の充電池はすべてのアルカリ電池の性能を上回りました。この結果は、高負荷時のエネルギー密度が高いと信じてアルカリ電池を使い続けている一部の人の主張を裏切るものです」と述べて、充電池は使い捨て電池より性能が悪いという俗説に反する結果が出たことを指摘しました。

なお、充電池以外で最も優れた性能を見せたのは、パワーチェック付きのDuracell Ultraでした。以下は、ミリワット時の測定値の上限と下限を表した表で、右の方にあるほど優れていることを意味しています。


また、電池に関する俗説の中には、「重いほど多くの材料が詰まっているので性能がいい」というものがあるとのこと。そこで、ミリワット時の測定結果(縦軸)に重量(横軸)も加味して、作成したグラフが以下。かなりばらつきがあるものの、若干の相関関係がみられるという結果になりました。


重さと電池の性能の関係について、Lui氏は「そもそも単三電池は軽いので、各メーカーが使用しているパッケージなどによって重さが左右されます。そのため、店頭で電池の重さを量ってどれが一番いいのか調べるのはあまり得策ではありません。ただし、同じメーカーの電池同士であればそうした要因を考慮する必要がなくなるので、重い電池ほど中身が多く性能も高いということもできそうです」とコメントしています。なお、Lui氏自身も子どもの頃にスーパーに重量計を持ち込んで電池の重さを量り、店員に変な顔をされた経験の持ち主とのこと。

同様にミリワット時(縦軸)と有効期限(横軸)をとって「有効期限が長い電池ほどいい電池」という俗説を検証した結果が以下。これについて、Lui氏は「全ブランドの電池の容量と期限をプロットしてみると、弱いながら若干の相関があるようにも見えます。とはいえ、有効期限はメーカーによって3年から12年と振れ幅が大きく、電池に使われているテクノロジーもメーカーごとに違うので、明確な関係があるともいえません」と指摘しました。


またLui氏は、調査全体から得られた知見をまとめて「0.48Wの負荷で使う上では、充電式のニッケル水素電池はテストしたすべてのアルカリ電池を上回る性能を示しました。電圧の維持にも優れており、使い捨ての電池よりコストも安く済みます。充電池以外では、Duracell Ultraが最も容量に優れる電池の座を獲得しました。また、アルカリ電池の平均放電電圧は、頭一つ抜けていたパナソニックのEvolta以外は似たようなものでした。さらに、重さは同じメーカーの電池である場合に限り容量の予測因子となることが分かりました。一方有効期限は、同じブランド同士で比較するならともかく、メーカーが違う場合は容量との間に明確な関係を見いだすことはできません」と結論しました。

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in メモ, Posted by log1l_ks

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