3Dプリンターで完璧に機能する目「バイオニックアイ」を作り出す研究
ミネソタ大学の研究チームが、世界で初めて3Dプリントで半球面上に完全な光受容体を配置することに成功しました。この技術は、盲目の人を目が見える状態に回復させたり、目が悪い人の視力を回復させたりすることにつながる「バイオニックアイ」を作るための重要な一歩となります。
Researchers 3D print prototype for 'bionic eye' -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/08/180828172043.htm
ミネソタ大学の研究チームによる半球面上に光受容体を3Dプリントする技術は、材料科学系の科学誌であるAdvanced Materials上で発表されました。研究に参加したマイケル・マカルパイン氏は、「バイオニックアイはこれまではサイエンスフィクションの中のものと考えられていましたが、現在、我々は3Dプリンターを用いることでそのすぐそばまでやってきています」とコメントしています。
研究チームが取り組んだのは、「半球状のガラス表面に電子機器を3Dプリントする」という課題です。研究チームは独自の3Dプリンターを使用し、銀粒子をベースとしたインクを用いたところ、曲面を流れることなく定位置にインクが留まり、均一に乾燥させることに成功。研究チームは光を電気に変換するフォトダイオードを印刷するために半導体ポリマー材料を用いていて、これらの印刷プロセスには約1時間もかかるとのことです。
マカルパイン氏によると、研究チームが開発した技術の驚くべき部分は、完全に3Dプリントのみで作り出された半導体の「光を電気に変換する効率」がなんと25%もあった点だそうです。マカルパイン氏は「アクティブな電子機器を確実に印刷できるようになるにはまだまだ長い道のりがありますが、我々が3Dプリントに成功した半導体は、微細加工設備で製造された半導体デバイスの効率に潜在的に匹敵する可能性を示し始めています」と語っており、3Dプリント技術の進化により、通常の設備で製造された半導体と同等のものが作れるようになりつつあると主張しています。
マカルパイン氏らの研究チームは、3Dプリント・電子機器・生物学といった要素をひとつのプラットフォームに統合することで知られています。数年前にはバイオニック耳を3Dプリントすることに成功して世界的に注目を集めました。その後、研究チームは外科手術に用いることができる3Dプリンターで作られる人工臓器や、電子ファブリックとして機能するバイオニックスキンなどさまざま。
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マカルパイン氏らは研究の次のステップとして「より効率的な光受容体を備えたプロトタイプを作成すること」を挙げています。加えて、実際の目に移植することができる柔らかな半球状の材料に光受容体を3Dプリントする方法についても研究が続けられることとなるそうです。
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