サイエンス

バイオ3Dプリンターで実物大の耳をプリントすることに成功


人間の組織を3Dプリントする技術「3Dバイオプリンター」の技術が進化し続けており、ついに独立支持できる耳介(耳殻)を3Dプリントできるレベルに到達しました。今この技術をもとに今後は、欠損した体の部位を再生したり、損傷した箇所を素早く直すための「補強材」として、3Dバイオプリント技術が活用されることになりそうです。

A 3D bioprinting system to produce human-scale tissue constructs with structural integrity : Nature Biotechnology : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/nbt/journal/vaop/ncurrent/full/nbt.3413.html

This 3D bioprinter can make human-sized ear, muscle, and bone tissues | The Verge
http://www.theverge.com/2016/2/15/10995730/3d-print-human-tissue-ear-muscles-bone

ウェイクフォレスト大学の研究チームは、3Dバイオプリント技術を使って、耳介を再現することに成功しました。これまでにもオーストラリアの研究者によって脳の組織を3Dバイオプリントする技術は開発されていましたが、生成できた細胞があまりにも小さく、不安定なため人間に移植できるものではありませんでした。しかし、ウェイクフォレスト大学の作成した耳介は実物大サイズで、形が崩れることなくそれ自体で支持できるほどの強度を安定性を持っており、すでにマウスの背中に移植することに成功しているとのこと。


研究者たちがマウスの背中の皮膚に耳を移植したところ、2カ月後も形状は保持されました。詳しく調査すると、耳介を支持できるように軟骨組織が形成されていることが分かりました。

3Dバイオプリントでプリントする様子はこんな感じ。動物由来の細胞を含むゲルと生分解性プラスチックを用いてプリントする以外は、一般的な3Dプリンターと大きな違いはないように見えます。


3Dバイオプリンターによって作られた耳介は、人間への移植についてはまだ着手されていませんが、移植に無事成功すれば事故などで耳を欠損した人に移植することで、外観を整えるだけでなく音の反射を使って聴力を向上させられるなどの利点があるため、実用化が待たれています。

また、3Dバイオプリント技術によって作った組織は、耳介のようにそれ自体が形状を保ち続けることを目的とするものだけでなく、プリントアウトした当初は物理的に安定性を保っているものの時間が経つにつれて自然に分解するものを作ることも可能だとのこと。そのため、細胞の形成を促しケガから回復したり、欠損した部位を再生したりする再生医療にも活用が期待されています。


すでにウェイクフォレスト大学の研究者たちは、他にも3Dバイオプリントした筋組織をラットに移植して、神経の形成が促されていることを確認しており、ヒト幹細胞を用いて3Dバイオプリントした骨インプラントを移植したラットが、5カ月後には血管の形成を引き起こしたことも確認しているそうです。

急速に技術が進化する3Dバイオプリント技術ですが、この技術に強い関心を抱いているのは軍事産業で、今回のウェイクフォレスト大学にもアメリカ軍から資金提供がされています。アメリカ軍は、3Dバイオプリント技術によって、戦場で負傷した兵士を戦場で回復させる技術の開発を期待しているようです。

今後は3Dバイオプリントされた組織が人間に移植して安全性が保たれるのかなどを調べる人体実験が行われることになりそうです。カーネギーメロン大学のアダム・フェインバーグ博士は、「SFの世界の技術であった3Dバイオプリント技術によって、今後2、3年のうちに患者は効果的な治療を受けられる可能性がある」と述べています。

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in ハードウェア,   サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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