地球平面論はなぜ信じられ続けるのか?
By doug wells
「地球が平面だ」と証明するために地球平面論者たちは、「地球が平面だと証明するためのロケット」の打ち上げをFacebookでを予告したりTwitterで民間宇宙会社のスペースXの創業者と論戦を繰り広げるなど、インターネット上での活躍が目立ちます。しかし、地球平面論者が集うFlat Earth Society(地球平面協会)の創設は、なんと1950年代にさかのぼります。科学を疑う「陰謀論」は昔からあり、陰謀論に心酔してしまう理由は心理的メカニズムや環境が関係しています。
Flat Earth: What Fuels the Internet’s Strangest Conspiracy Theory?
https://www.livescience.com/61655-flat-earth-conspiracy-theory.html
地球平面論者たちにとっては、地球は「球形」ではなく「平らな円盤状の形」をして、そして周囲を氷で覆われています。また、一方通行で出発地点に戻ってくる地球一周旅行の旅行日程や宇宙飛行士の写真などはすべて、「大きな隠蔽工作の一部」という解釈です。
地球平面論者の1人である"マッド"マイク・ヒューズ氏は2018年2月に「地球は平ら」を証明するロケットを打ち上げる予定をFacebookに投稿したり……
「地球は平ら」を証明するロケット打ち上げが未遂に終わった男が新たに改良型ロケットでの再挑戦を発表 - GIGAZINE
地球平面協会の公式Twitterは、宇宙関連企業「SpaceX」の設立者であるイーロン・マスクと論戦を繰り広げたり地球平面論者による活動はソーシャルメディアなど、インターネット上での活躍が目立ちます。
「地球は平ら」と主張する「地球平面論者」にイーロン・マスクが反論、平面論者からはまさかの答え - GIGAZINE
心理学者たちによると「地球平面論はなぜ信じられ続けるのか?」という問題は、「なぜ人は陰謀説を信じてしまうのか?」という陰謀論に関する問題の根本につながるとのこと。根本は、多くの陰謀論者にとって「エリートである科学への疑い」と、知ったものを「自分の望んだとおりの証拠」として捉えてしまうのが理由です。
心理学者によると、この理由を引き起こすのは「陰謀論者たちが同じ陰謀を信じることによって満たされる3つのニーズ」があると言います。1つ目のニーズは大事件や大異変などに対して恐怖を解消して安心したいニーズ「不確かな世界への安心感」、2つ目のニーズは仲間との連帯感を求めるニーズ「社会的な親和」、そして3つ目のニーズは何事にも結論ありきの捉え方で「こうであるはず」と物事に対して自分の思う意図を当てはめて制御したいニーズの「意味付けを制御したい欲求」です。
By Rich Renomeron
1つ目のニーズ「不確かな世界への安心感」の例を挙げると、イギリスのカンタベリー大学の社会心理学者Karen Douglas氏によると「社会的に大きな危機が起きると陰謀論者の数が急増する」とのこと。根拠としては、2001年9月のアメリカ同時多発テロ事件のあとで陰謀論者が「増加した」という、2017年のMemory Studiesの報告が挙げられます。心理学者たちは常になぜ陰謀論が魅力的なのかについて研究してきており、2015年の心理学の研究結果では、人というものは常に「管理から外れたい」という誘惑があると発表されています。また、自分に自信がないと感じる人は陰謀論に引き付けられる傾向があり、この現象は規模の大小に関わらずに起きるので前述したアメリカ同時多発テロ事件後に陰謀論者が増加する事態が起きます。
By Kevin Dooley
2つ目のニーズである仲間との連帯感を求める「社会的な親和」としては、Douglas氏の仮説を挙げると、陰謀論者は「陰謀論者グループに属する」ことで自尊心と幸福感を得て社会的な親和性を満たします。さらに、これら2つは、3つ目のニーズである物事に対して自分の考え方を当てはめたいニーズ「意味付けを制御したい欲求」が満たされない場合に補うことが可能です。いくつかの研究によると陰謀論信仰と自己愛は関連付けがあると示されています。また、多くの陰謀論は世界を「良い人」と「悪い人」にわけます。例えば、良い人は真実を見つけようとする地球平面論者のYoutube、悪い人は政府や特定の民族で、陰謀論者たちは自分たちを「良い人」として自己愛にリンクします。
By tschundler
3つ目のニーズである何事にも自分の結論を当てはめたいニーズ「意味付けを制御したい欲求」としては、英国のウィンチェスターの大学の心理学の講師のMichael Wood氏によると、地球平面論者は2つのグループに分けることができ、一方の地球平面論者たちのグループは信仰によって動機づけられており、「聖書の世界」を引用して信仰しています。もう一方の聖書にもとづかない他の地球平面論者のグループは「月面着陸は捏造だ」など宇宙に関する陰謀論説が原因になっています。両グループの地球平面論者とも、インテリアのスノーグローブのように地球は人間のために完璧に作られたと想像するのが「理にかなっており」、彼らはにとっては、人々が宇宙が広大なものとして信じることは「驚くべきこと」と捉えています。地球平面論者が議論するFacebook「Official Flat Earth & Globe Discussion」を閲覧してみると、彼らはNASAについて話しており、宇宙に関する陰謀を話しながら実際にNASAを嫌っています。
By Nick Harris
アングリア・ラスキン大学の社会心理学者Viren Swami氏によると、地球平面論は最近の理論の再燃でソーシャルメディア由来に見えますが、1950年代に地球平面協会が生まれ、創立の歴史は19世紀にまでさかのぼれてイギリスの作家、Samuel Rowbothamにたどり着きます。振り返って現代の地球平面論をみると、アメリカの有名人である「ラッパーのB.o.B」「テレビタレントのTila Tequila」が地球平面論に傾聴し、陰謀論者たちに追い風となりました。
地球平面論に染まる理由の大部分として地球平面論者の多くが地球に働く物理学に納得できず、地球が平面であると信じており、そして科学を習得して理解する時間と金銭がある家庭に生まれてないからです。地球平面論者は複雑な事柄を全て単純な理論にし、科学と科学者を信頼しません。
子どもを対象とした研究では、子どもは地球が丸いことを直感的に信じないということを示しています。1970年代から1980年代の期間に実施された心理学の研究によると、調査対象者の小学生に「地球は丸いか?」と尋ねると「地球は丸い」という答えが返ってきました。しかしその後、小学生から成長した調査対象者に同じ質問を尋ねると、その答えついて迷いが出てきます。推測としては、彼らが「地球と宇宙は丸い」が自分たちが「歩いているの場所は明らかに平ら」だと考えるかもしれず、また別の子どもは、地球は丸くなく、端から落ちる可能性があると言い出すかもしれないとのこと。1985年の研究によれば、これらの地球に関する矛盾した考えへの疑問は10歳ぐらいまでで、13歳までにほとんどの子どもは地球の形に関する概念に納得するとしています。
そして、不運にも一度陰謀論にとらわれると考え方を変更するのは難しいとのこと。陰謀論にとらわれた人は議論とディスカッションを同じ陰謀論者の理論だけで組み立てる傾向があります。また、分析的かつ批判的な思想をもつ人は、陰謀論を退ける傾向が示されています。
By Vidal Enrique Cadena
地球平面論など陰謀論を信じないためには、育った環境や文化、経験などさまざまな要素からなるフィルターによるバイアスにとらわれず、物事への捉え方が批判的で議論分析力を持ち仮説検証・不確実性に関する考え方を正しく捉えるクリティカルな考え方を持つことが有効と考えられます。
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