中国で全く同じ遺伝子を持つ2匹の「クローン猿」がついに誕生
中国科学院の研究チームが、元の個体と全く同じ遺伝子を持つ「クローン」のカニクイザルを2匹誕生させたことをアメリカの科学誌に発表しました。少なくとも公表された結果としては、ヒトと同じ「霊長類」に属する動物として初めてのクローンによる個体の誕生となっており、その是非を問う議論がさらに高まりそうです。
Cloning of Macaque Monkeys by Somatic Cell Nuclear Transfer: Cell
http://www.cell.com/cell/fulltext/S0092-8674(18)30057-6
クローンサル2匹誕生 中国チーム、倫理問題も :日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO26084340U8A120C1CR8000/
中国科学院は、アメリカの科学誌「Cell」の電子版2018年1月24日付けにおいてクローン猿の成功を発表しました。体細胞クローン技術を用いることで「作り出された」2匹のサルは既に誕生から40日から50日が経過して生存しているとのこと。2匹はそれぞれ「Zhong Zhong」と「Hua Hua」と名付けられているのですが、その語源は「中国という国」や「中国人民」を意味する「中華」からとられている模様。そのため、漢字の表記は「中中」と「華華」になるはず。
研究チームはカニクイザルの胎児の細胞核を注入し、成長を促す遺伝子を加えた卵子79個を、雌のサル21匹の子宮に移植。このうち6匹が妊娠し、最終的にZhong ZhongとHua Huaの2匹が生まれました。
クローン生物をめぐっては、1996年に誕生して世界に衝撃を与えたクローン羊「ドリー」をきっかけにさまざまな議論が巻き起こっています。その焦点は、いわゆる「神の領域」とされる生命誕生のプロセスに人間が介入すべきなのかという問題と、それによって誕生した生物のアイデンティティについて十分な議論が行われていないという倫理的な問題です。特に、ヒトを含む生物を「人工的」に作ることで生命が軽視される事態につながることが強く危惧されます。しかし一方では、純粋な科学の発展としての価値を損なうべきではないとする考え方も強く、その是非をめぐって議論が交わされている真っ最中です。
今回のカニクイザルのクローン誕生について中国科学院神経科学研究所の蒲慕明所長は記者会見で「目的はクローン人間をつくることではなく、人類の健康、医療に貢献することだ」と話しているとのこと。また蒲氏は「クローン猿の病気治療に対する有用性を実証することで、西洋社会の考え方が徐々に変わっていくことを期待している」と述べています。
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