NASAが土星の衛星「エンケラドス」の氷下に眠る海から水素を検出、生命体生存の条件がそろう
NASAが土星の衛星「エンケラドス」の海から水素が噴出していることを発見しました。豊富な水素が確認されたことで、原始的な生物が生存するための諸条件がそろったとのこと。この発見によって、今後は太陽系内にあるエンケラドスに地球外生命体が生存しているのかどうかに天文学者の関心が移っていくことになりそうです。
NASA Missions Provide New Insights into 'Ocean Worlds' | NASA
https://www.nasa.gov/press-release/nasa-missions-provide-new-insights-into-ocean-worlds-in-our-solar-system
NASAが土星の衛星エンケラドスに水素が存在することを明らかにしました。この研究成果は、科学誌Scienceで2017年4月14日に発表される予定です。
NASAによると探査機カッシーニが、エンケラドスの表面から噴出する水素分子を検出しました。エンケラドスは土星を周回する直径約500キロメートルの衛星で、表面が氷で覆われていますが氷下には海が存在し熱活動があることがわかっています。これまでエンケラドスからは二酸化炭素、メタンなどが検出されており、水素が加わることで原始的な生命体の生存に必要な条件がそろったことになり、地球外生命体発見の期待が一気に高まっています。
水素が検出されたことでエンケラドスに地球外生命体が生存する可能性が出てきたことについて、論文の共同執筆者のHunter Waite氏が以下のムービーで解説しています。
NASA: Ingredients for Life at Saturn’s Moon Enceladus - YouTube
2015年10月28日に探査機カッシーニがエンケラドスの回りに漂うプラズマに飛び込みました。
Ion and Neutral Mass Spectrometer(INMS)と呼ばれる機器を使って水素ガスを検出することに成功。エンケラドスに水素があることがわかりました。
では、なぜ水素の検出が重要なことなのでしょう?
「地球の海洋システムにおいても水素分子の存在は生命体にとって重要です」と述べるWaite氏。
原始的な生命体である微生物は、海中の水素と二酸化炭素を体内に取り込んで合成しエネルギー源とすることで生きています。
つまり原始的な生物にとって、水素は生命活動に必要な物質なのです。
カッシーニは、エンケラドスの表面にある氷の層の下に、塩分を含む「海」が存在することを発見しています。そして、エンケラドスの海には熱源があることも突き止めています。
地球の深海の熱水噴出孔には、水素が出ている岩石が確認されています。
生命体の生存には「水」「熱源」「適切な化学物質」という要素が必要です。
「エンケラドスの氷の下の海では、生命体が生存できる要素がすべてそろったことになります」
「まだ、生命体が確認されたわけではありませんが、エンケラドスの海に生命体が存在する可能性がしめされたというわけです」
カッシーニによってエンケラドスには生命体を育むのに十分な量の水素の存在が確認されましたが、カッシーニは生命体の兆候を検出できるようには設計されていません。今後は、衛星を使った長期的な観測を行うことで、地球外生命体が存在するのか探査することに研究の焦点が移っていきそうです。
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