スマホを近づけるだけで農薬や鉛などの有害物質を見抜けるアプリ「HawkSpex Mobile」をフラウンホーファーが開発中
ハイパースペクトルカメラなどの特別な機器を使うことなく、スマートフォンのカメラを使って物の成分をスキャンできるアプリ「HawkSpex Mobile」をフラウンホーファー研究機構が開発しています。
App reveals constituents
https://www.fraunhofer.de/en/press/research-news/2017/february/app-reveals-constituents.html
ヨーロッパ最大の応用研究機関のフラウンホーファー研究機構が、スマートフォンのカメラを使って物の成分を検出するアプリ「HawkSpex Mobile」を開発中であると発表しています。一般的には物の成分を分析するには物体から放射される波長を細かく検出できるハイパースペクトルカメラなどの特別な機器が必要ですが、HawkSpex Mobileはスマートフォンカメラを使って成分分析が可能だとのこと。
ハイパースペクトルカメラは物体から反射してくる光を波長別に細かく分光してスペクトル情報を得ます。「スマートフォンにはハイパースペクトルカメラは内蔵されていないので、私たちは原理を逆転させました」とフラウンホーファー研究機構のウド・セイファート博士は述べています。
セイファート博士によると、反射されるすべての光を波長別に細かく検出するのではなく、スマートフォンディスプレイから細かな波長別の光を出して物体を照らすことで反射してくる光を分析するとのこと。スマートフォンのディスプレイの広帯域の3チャンネルセンサーを使って1秒間に連続的に異なる波長(色)の光を出し、反射してくる光の波長をスマートフォンカメラで読み取ることで成分を特定するそうです。また、HawkSpex Mobileには優れた解析アルゴリズムを採用することでスマートフォンの性能でも物体の成分を特定できると述べています。
技術的な詳細については述べられておらず、このHawkSpex Mobileが実現可能なのかは不明です。ただし、HawkSpex Mobileを開発するのが数々の技術を実用化してきたフラウンホーファー研究機構だけに、期待せずにはいられません。
HawkSpex Mobileが完成すれば物にスマートフォンを近づけるだけで成分を調べることが可能になります。たとえば、「有機栽培」をうたう野菜に農薬が含まれていないか、水道水に鉛が含まれていないかなど、手軽に食の安全を消費者の手で調べることができるようになります。また、化粧品の有効性や穀物の栄養素を簡単に調べられるなど、応用範囲は極めて広いと考えられます。
フラウンホーファー研究機構によるとHawkSpex Mobileは最初の実験室版が完成済みとのこと。セイファート博士は、2017年末までにHawkSpex Mobileがリリースされることを期待しているそうです。
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