ヨーロッパの小麦生産を壊滅的危機に追いやる可能性がある疫病の存在が確認される
By - POD -
多くの人々の食料となる小麦の生産に、壊滅的なダメージを与える可能性を持つ疫病がヨーロッパで確認されています。
CAUTION: Risk of wheat stem rust in Mediterranean Basin in the forthcoming 2017 crop season following outbreaks on Sicily in 2016
http://wheatrust.org/news-and-events/news-item/artikel/caution-risk-of-stem-rust-in-eastern-mediterranean-basin-in-the-forthcoming-2017-season-due-to-ou/
Deadly new wheat disease threatens Europe’s crops : Nature News & Comment
http://www.nature.com/news/deadly-new-wheat-disease-threatens-europe-s-crops-1.21424
伝染の兆しが確認されたのは、「黒さび病」と呼ばれる伝染病の一種です。この病気は従来からも存在して定期的に流行が確認されているものですが、2016年にイタリアのシチリアで初めて発見された病原体は、従来とは異なる新しいタイプのもので、極めて強い伝染力を持ち大きな被害を与えることから、感染を警戒する警戒情報が出されているとのこと。
イギリス・ケンブリッジ大学の伝染病学者であるクリス・ギリガン教授は「オオカミ少年にならないよう注意深くなる必要がありますが、これは何年もの間ヨーロッパで確認された伝染病の中でも最大の大流行となる可能性があります」と、見つかった病原体の危険の大きさを語っています。
警戒情報は2017年2月2日、デンマーク・オーフス大学内にあるGlobal Rust Reference Center(世界さび菌参照センター:GRRC)と、メキシコのInternational Maize and Wheat Improvement Center(世界トウモロコシおよびコムギ改良センター:CIMMYT)によって公開されています。
CAUTION: Risk of wheat stem rust in Mediterranean Basin in the forthcoming 2017 crop season following outbreaks on Sicily in 2016
2016年、シチリア島では何万ヘクタールもの小麦畑で黒さび病の被害が確認されたとのこと。詳細を確認したGRRCによると、新たに発見された病原体はこれまで病気への耐性が高いとされてきた小麦の品種にも感染することが研究室内での検証で確認されており、内在する問題の大きさが懸念されています。今後、実際に栽培されている小麦に対する影響力が検証されることになっています。
また、黒さび病だけでなく、別種である「黄さび病」の被害もヨーロッパと北米を中心とする広い地域で確認されているとのこと。これらの病原体は、北米とアフガニスタンで被害を及ぼした種と同系統であることから、同等の影響力を備えているものとみられています。
これまでにも世界の各地では、小麦に感染して作物に甚大な被害を与える疫病の流行が確認されていました。過去に大きな被害を及ぼしたものに「Ug99」と呼ばれる種の病原体があり、1990年代と2000年代にアフリカと中東の一部地域で甚大な被害を及ぼしたとのこと。しかしヨーロッパでは1950年代以降、大きな被害は確認されていませんでしたが、シチリア島で発見された病原体は疫病の大流行の再来を予感させるものとなっている模様。Ug99との影響力の比較はまだ行われていませんが、同等の被害を及ぼす可能性も否定はできない模様です。
過去と最も大きな違いは、研究科学の発達及び対処法、そしてインターネットによる情報伝達の速さなどが挙げられます。実際に被害が広がることになるのか、そして関連する機関や農家がどのように対処するのか、関心が集まりそうです。
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