ハードウェア

スーパーコンピューターはどのようにして7億人分の穀物を荒らす害虫駆除に役立っているのか


アジアや南米、アフリカの熱帯地方を中心に世界中で約7億人が主食としているキャッサバに甚大な被害を与えている害虫に対して、スーパーコンピューターを使って対抗する研究が進められています。

How a Supercomputer Helps Fight Flies That Ravage Crops for 700 Million People
http://gizmodo.com/how-a-supercomputer-helps-fight-flies-that-ravage-crops-1736813111

How a TED Fellow is working to save cassava from whiteflies | TED Blog
http://blog.ted.com/how-a-ted-fellow-is-working-to-save-african-cassava/

キャッサバは茎を地中に差しておくだけで根付けば地下でイモが育ち、栽培が比較的簡単な植物で、タピオカの原材料としても知られています。しかし近年、キャッサバを好むコナジラミという白くて小さな昆虫が世界中で被害をおよぼしています。以下の写真は、コナジラミがキャッサバの葉の裏に張りついて、葉から水分を吸い取っている様子。


コナジラミはキャッサバの葉から水分を吸い取るだけではなく、Cassava brown streak virusという病原菌の媒介者でもあります。Cassava brown streak virusに感染したキャッサバは、根に茶色の斑点が生じてしまい、食用として出荷できず農家の収益が減ってしまうという問題が起こります。また、コナジラミが農薬への耐性を持つようになったため、キャッサバ以外にも1年間で600種類の農作物に害虫被害を及ぼしています。


そこで西オーストラリア大学で計算生物学を研究しているLaura Boykin氏は、コナジラミの脅威からキャッサバを守るための研究に取り組みました。Boykin氏はウガンダのキャッサバ農園を訪れて、キャッサバの葉にくっついているコナジラミを詳しく調査。


研究にはオーストラリアのPawsey Supercomputing CentreにあるCray XC40 スーパーコンピュータ「Magnus」を使い、コナジラミのゲノム解析を行って系統樹を作成。これまでコナジラミはたった1種の昆虫だと信じられていましたが、スーパーコンピューターにより世界中に34種類のコナジラミが存在することが判明しました。

以下の写真に写っているのがBoykin氏とスーパーコンピューターのMagnusです。Magnusは電波天文学に使われるほど性能の高いコンピューターで、Pawsey Supercomputing Centreによれば、500匹のコナジラミのデータを分析するだけでも10の27乗個のパターンがあり、スーパーコンピューターなしではデータを扱うことが困難だったとのこと。

I use the S Hemisphere's fastest supercomputer(built for radio astronomy)& study #cassavawhitefly #girlswithtoys pic.twitter.com/HQ37WLMQXC

— Laura Boykin (@laura_boykin)

Boykin氏のチームはMagnusを使ってコナジラミのデータベース「Whiteflybase」を作成。どの地域にどのコナジラミが生息しているのかをマッピングすることで、キャッサバに被害をもたらすコナジラミの種類を特定し、将来的に害虫駆除がより簡単になる見込みです。さらに、データベースを活用して34種類のコナジラミすべてに効果のある農薬の開発にも期待が寄せられています。

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in ハードウェア,   サイエンス,   生き物, Posted by darkhorse_log

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