栃木で開発中の世界最高加速のモンスターEV「アウル(Owl)」の実走行試験に行ってきました
人材派遣のアスパークが栃木で世界最高加速・ゼロヒャク(停止状態から時速100キロメートルまでのタイムのこと)2秒のモンスターEVを開発しています。自動車メーカーでもなく、プライベーターでもない企業がゼロからたった3年という爆速で世界最高加速のEVを公道を走れる市販車として作るという、開発速度も世界最高加速の「アウル(Owl)プロジェクト」が、ついに走行試験を開始したと聞き、栃木に駆けつけてプロトタイプが走る様子を見てきました。
電気自動車開発 | 株式会社アスパーク
https://www.aspark.co.jp/service/newbusiness/index.html
アウルプロジェクトがどれほど型破りなのかは、以下の記事を見ればよくわかります。
栃木で進行中の世界最高加速のモンスターEV「アウル(Owl)」開発プロジェクトとは? - GIGAZINE
東武日光線の新鹿沼駅に到着。
新鹿沼駅から自動車で10分ほどの距離にある駐車場がテスト走行の場所。
わずか2秒で時速100キロメートル到達を目指す加速試験は、50メートルもあれば事足りるとのこと。マシンは土手&崖に向かって加速していきます。
到着した時点でテスト走行への準備が着々と行われていました。
これがアスパークのモンスターEV「アウル」のプロトタイプ。カウルや内装などは装着されておらずパイプフレームがむき出しの状態です。
原付自転車のエンジンで左リアタイヤを回転させていました。これは計器類のウォーミングアップとのこと。全開走行前にはタイヤやサスペンションなど以外に、計器類のウォーミングアップも必要なようです。
アウルはとてつもなく扁平したデザイン。ホイールの間隔からみて全幅は2メートルを超える模様。
それでいて、地上高は法定制限ギリギリの9センチとのことなので、地を這うようなスタイルになりそうです。
パイプフレームには……
溶接の痕。
プロトタイプは右ハンドルで、右シートのみ。
ステアリングホイール
ドライバーの前方には「2秒」を合図するインジケーターランプを搭載。
コクピット横には始動時に使うマスタースイッチ。
ブレーキとアクセルのみの2ペダル。
車体前方の部品はエアジャッキ。
タイヤ装着時には車体横からエアを入れて……
ジャッキアップする仕組み。
シートの後方には左右にキャパシタ(コンデンサー)を搭載。走行テストではバッテリーではなく充放電速度の速いキャパシタが使われています。
スイッチのON/OFFを切り替えるパワーアンプは合計28ユニットが車体後方に5つに分けられており……
パワーアンプを介して車体後方に縦置きされたツインモーターに電流が送られます。
車体中央部にはドライブシャフト。
トルクを効率的に配分できるようにアウルは四駆になっています。なお、センターデフはロックされており4輪均等にトルクを配分しているとのこと。
左シートがのる部分にはコントロールユニット。1万分の1秒単位でエネルギーを制御するコントロールユニットは、ゼロヒャク2秒を実現するためのキモとなる重要な装置です。
車速やモーターの回転数などの走行データを表示する計測器。この計測器で取得したログデータからマシンの挙動を丸裸にして、設定が細かく煮詰められていきます。
テストに向けて準備が進められるマシンの横に置かれた緑色の箱。これは、ワンオフのタイヤウォーマー。タイヤに巻き付けるタイプのタイヤウォーマーでは80度までしか温度を上げられないため、専用のタイヤウォーマーを特別に作ったとのこと。
スポットヒーターを取り出して……
穴に挿入。
この特製タイヤウォーマーならば、4輪を一気に110度まで高温にできるそうです。
タイヤが装着される部分を掃除するスタッフ。わずかなゴミも摩擦を下げる敵なので、入念に地面を掃いている模様。
準備が整い、いよいよテスト走行開始。
ドライバーはイケヤフォーミュラの眞島薫氏。前回のテストではすさまじい加速に思わず1.75秒時点でブレーキを踏んでしまったとのこと。名誉挽回の時です。
シートに座りベルトを締めると緊張が走ります。
タイヤウォーマーのロックが解除され……
素早くタイヤが運び出されます。
フージャーの市販スリックタイヤ。
タイヤが冷めないように迅速な作業が求められます。
そして、いよいよ「2秒間」の走行テストがスタート。
わずか2秒で時速100キロメートル到達を目指すアウルの加速試験はこんな感じ。
ゼロヒャク2秒を狙うアスパークのモンスターEV「アウル」の加速テスト(1本目) - YouTube
アウルに駆け寄る開発者たち。
すぐさま走行データをチェックしています。
そして、みなで押してスタート地点に戻ります。
前回の走行試験では、2秒経過時の速度は時速83キロメートル。今回のテストではタイヤの温度を上げサスペンションを柔らかくしグリップを稼ぐことで、時速90キロメートルを記録する予定だったものの結果は時速80キロメートル。しかし計算通りにいかないことは計算済み。さまざまな可能性を想定しつつ試行錯誤は続きます。
アスパークの吉田眞教社長と談笑する眞島氏は「前回よりもタイヤが滑る」という感想を漏らしていました。ちなみに新設した2秒を示すインジケーターランプを見る余裕はまったくなかったとのこと。
電圧の低下はわずか。
キャパシタの充電よりも、タイヤを温めるほうがはるかに時間がかかります。
そのため、間をおかずに連続して2度目のテストが敢行されました。
2度目の走行テストは以下のムービーから。
ゼロヒャク2秒を狙うアスパークのモンスターEV「アウル」の加速テスト(2本目) - YouTube
フロントサスペンションから、フロントの浮き上がり具合をチェック。
やはりグリップが最大の問題の模様。
ログデータをチェックする堀江英雄氏。
しっかりとグリップすれば一定の角度で上昇するはずの紫のグラフが寝ています。これはモーターの回転に速度が追いついていないこと、つまりタイヤが空転しているのを示しているとのこと。
真冬のテストということもさることながら、決してμ(摩擦係数)の高いとは言えない路面ではグリップ面に問題があるようです。とはいえ、2秒経過時でもまだホイルスピンするほどで、パワーは十分。しっかりタイヤがグリップすればゼロヒャク2秒を達成する可能性を感じさせてくれます。
そして、「まったくのゼロから世界最高加速ゼロヒャク2秒の市販EVを爆速で開発する」という常識外れのアウルプロジェクトをぶち上げた張本人である、アスパークの吉田社長がアウルをテストすることに。
アウルの最終テスト走行の様子は以下のムービーで確認できます。
ゼロヒャク2秒を狙うアスパークのモンスターEV「アウル」の加速テスト3本目は吉田代表自ら敢行 - YouTube
電圧が下がった3本目とはいえ、スタート時にGoProを付けたヘルメットが浮き上がるほどの強烈な加速。
「2016年末にテストした時とは別物の加速だった」とのことで、その表情からは手応えを感じているのが伝わってきました。
対照的に浮かない表情だったのがプロジェクトマネージャーの島崎正己氏。もはや路面は限界。これより先はサーキットなどの路面の良い場所でのテストも視野に入れているようでした。
こうして2017年1月末に行われた走行テストが終了。島崎氏によると「ここからが本当の勝負」と、開発はいよいよ佳境を迎えることになるようです。これ以後はカウル(外装)を装着していきつつのテストになるとのこと。すでにアウルはエクステリアデザインが完成してカウルの製作に入っていると聞き、「ぜひとも見せて欲しい!」とお願いすると、吉田社長は「いいですよ」とあっさりOK。周りの開発者陣は困惑気味でしたが、鶴の一声でアウルのデザイン画をゲットできました。
これが世界初公開のモンスターEV「アウル」
流麗で妖艶なデザイン。
サイドミラーはカメラで代替するミラーレスデザインになる可能性があるとのこと。
カウルはすべてカーボンファイバー製。
世界一の低さも視野に入れているとのこと。全高は一体どれくらいになるのか……。
アスパークは2017年9月にドイツで開催されるフランクフルト・モーターショー2017にアウルの出展を決定。ゼロヒャク2秒の壁を越えて、美しいフクロウが世界に羽ばたく日が近づいています。
・つづき
モンスターEV「アスパーク OWL(アウル)」が世界初の市販車0-100km/hで2秒切りを達成、暴力的な加速を見てきた - GIGAZINE
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