わざとスマホを盗ませて犯人を追跡、写真・映像・音声を遠隔操作で取りまくって犯人像を明らかにしていくドキュメンタリー「Find my Phone」
by Japanexperterna.se
過去の調査では10人に1人がスマホ盗難に遭っており、スマートフォンが盗難された時のために超小型追跡タグ「MAMORIO」なども開発されています。オランダに住むAnthony van der MeerさんもiPhoneの盗難にあった1人で、「一体どんな人物がスマートフォンを盗んでいて、最終的に盗まれたスマートフォンはどうなるのか?」ということを、「盗人にわざとスマートフォンを盗ませて追跡する」という方法で調査。最初は「盗人を罰したい」という気持ちだったものの、盗人の生活内の音声データやテキストのやりとり、現在位置、写真などをトラッキングしているうちに、徐々に気持ちが変化していきます。そんな様子が短編ムービーとしてYouTubeで公開されており、公開後1週間で200万回再生を超える反響を呼んでいます。
Short Film: Find my Phone - Subtitled - YouTube
オランダでは週に300件ものスマートフォンの盗難が報告されています。Anthony van der Meerさんも盗難被害にあった人の1人で、スマートフォンを盗まれた時は気が気ではなかったとのこと。
「窃盗犯に写真を見られたら?」
ムービーや……
連絡先
メールなど。自分の情報が他人に漏れてしまうことに対して心配がつきませんでした。
盗難の形にはさまざまなものがあります。本人に気づかれないように目の前で盗む人もいれば……
無理やり荷物を奪う人も。「一体、窃盗犯はどういう人で、最終的にスマートフォンはどうなってしまうのだろう?」という疑問から、van der Meerさんはある実験を行うことにしました。それが、「わざと窃盗犯にスマートフォンを盗ませて、スマートフォンを遠隔操作して写真や録音によって犯人像を明らかにしてく」ということ。
Appleの公式アプリ「iPhoneを探す」は、端末のSIMカードを抜き取られてリセットされると使えなくなるので、van der Meerさんははまず、スマートフォンをトラッキングできる別のアプリを探すことに。
考えた結果、「わな」として使うスマートフォンにはAndroidを使うことに決めます。Androidのメモリーは「システム」と「ユーザーパート」の2つに分けられており、もし端末をリセットされても実質上リセットされるのはユーザーパートだけで、システムの部分はそのまま維持され続けるためです。システムパートがリセットされるのは、OSがアップロードされたり別のOSをインストールされた時のみ。
そして、「Cerberus 反盗難」というアプリをインストール。CerberusをAndroid端末のシステムパートにインストールすると、アプリは削除不可能になります。そして、インターネット接続がされている間は、ユーザーはCerberusをインストールした端末を遠隔で操作でき、写真撮影・録音・録画・通話など、さまざまなことが行えます。
ということで、まずは「わざとスマートフォンを盗ませる」ということからスタート。
人通りの多い場所で、わざとカバンに入れたスマートフォンを盗まれやすい状態にして、体から離したところに置いておきます。
カバンをじっと見つめている男性2人組が登場しますが、盗むところまではいかず。
女性がvan der Meerさんにカバンについて何か話している様子。「こんなところに無防備にカバンを置いていると危ない」と言っているのかも。
別の男性も話しかけています。
別の男性2人組がカバンに近づきますが……
何も盗まず。
さらに、別の男性がカバンに近づくも……
何も取られず、仕掛けたvan der Meerさんたちは「クソッ」と悪態をつきます。
オランダ・ロッテルダムで4日間試してもスマートフォンが一向に盗まれなかった、ということで、メンバーらは首都であるアムステルダムに移動。アムステルダムでは週に17件のスマートフォンの盗難報告が上がっているそうです。
しかし、盗難の起きやすい観光客が集まる場所で丸1日過ごしても、スマートフォンが盗まれるきざしは全くなかったとのこと。
ところが、「望みは全て絶たれた」とカメラを切り、帰りのメトロを待っているところで、ついにスマートフォンを盗み出されることに成功します。「何かが盗まれてこんなにうれしかったのは初めてだ」とvan der Meerさんは語っています。
「まさに今、スマートフォンが盗まれました」とうれしそうなvan der Meerさん。
窃盗犯はスマートフォンの電源を落とすことなく、インターネットに接続させた状態で移動中の様子。そのため、ばっちり地図に窃盗犯の現在位置がタブレット上に示されています。
盗まれたスマートフォンで写真を撮ると……
暗闇。どうやらポケットの中に入っているようです。
録音してみると……
路面電車に乗っているようで、車内放送の音声や騒音がキャッチされていました。
しかし、途中でスマートフォンの電源が落とされた様子。接続が切れました。
翌日、van der Meerさんはスマートフォンの盗難を警察に届けにいきます。
書類に記入している最中の様子も撮影されています。警察には遺失物保管場所を訪れるように言われますが、「もしかすると解体されて東ヨーロッパに売られているかもしれない」とのこと。
いったん電源を落とされたスマートフォンは、その後4日間、電源を入れられることがなく、van der Meerさんは「自分は何か間違ったのか?それとも本当に解体されてしまったのだろうか?」と不安に襲われます。
しかし、盗まれてから4日目の夜、ついに動きがありました。
van der Meerさんのもとに、「新しいSIMカードが差し込まれました」という連絡が届いたのです。新しいSIMカードにはアラビア文字が使われていることから、窃盗犯はアラブ系ではないか?と推察されます。
アプリも機能しており、van der MeerさんのPCから盗まれたスマートフォンへの接続も完了。
アプリのリストを見てみたところ……
van der Meerさんがインストールされたものが、削除されずにそのままの状態でキープされていました。「窃盗犯はまぬけなのか?楽観主義なのか?それとも初めての盗みだったのだろうか?」と語るvan der Meerさん。
今度は、オフライン時に窃盗犯がどこを移動していたかの履歴をチェックします。
すると、アムステルダムの駅からフランス東部のミュルーズや、オランダ南東部のマーストリヒトに向かったこと、その途中でスマートフォンがアラビア語に切り替わっていることが判明。
ネット翻訳を使って、具体的にマーストリヒトのどの住所にまで行ったのかも明らかにしています。
そして、再びアムステルダムに戻ってからスマートフォンの電源を入れたようです。
自宅も特定。写真を撮ってみると……
ばっちり窃盗犯の顔を撮影できました。犯人は外国人と見られる風貌で、年齢は40~45歳とのこと。
犯人のことを知るため、van der Meerさんは1日に数回の写真撮影・録音を何日にもわたって行いました。
ムービー撮影はデータが大きくなるので、時々にとどめられました。
そして、スマートフォンの電源が入っていなかった間の位置記録をさらに調べたところ……
フランスのミュルーズで、窃盗犯が人道的な施設を訪れていたことが判明します。
「彼は一体ミュルーズで何をしていたのだろうか?何かを集めていたのか?それともスマートフォンが途中で別の誰かの手に渡ったのか?」と謎は深まります。
盗まれてからしばらくは、スマートフォンにvan der Meerさんが撮影した写真データが残っていたとのことですが、2週間ほどしてそれらが削除されます。ただし、犯人は自分で写真やムービーを撮ることがなかったとのこと。
また、van der Meerさんは犯人が特定の電話番号に頻繁に電話していることにも気づきます。
調べてみると、電話はポルノを楽しむための番号だったとのこと。
そこからさらに数日たつと、犯人はvan der Meerさんのスマートフォンを自分のものだと見なしたようで、自分の連絡先や知人の連絡先などを追加しだします。
追加された連絡先の1つが女性の「ロシアさん」
犯人はロシアさんに好意を持っているようで、誕生日にプレゼントをあげていることがテキストのやりとりから判明。数日のやりとりを経て、2人は実際に会うところにまでこぎつけます。
実際に2人が会っている最中の音声も録音されていますが、その時のロシアさんの様子は少し変だった、とvan der Meerさんは語っています。
ロシアさんは自分が雇い主に搾取されていると考えていて、人権団体やロシアのテレビ局、市長などにそのことを伝えていること、そして100万ユーロ(約1億2000万円)の損害賠償金を求めていることなどを語りました。数時間ほどおしゃべりをして、2人は「また明日」と別れます。
その後、犯人は友人と見られる人との会話でロシアの女の子がジャンキーであること、自分は彼女によくしてあげていること、彼女は自分に好意を抱いていることなどを語っています。
窃盗犯についてのデータを集めているうちに、van der Meerさんはだんだん窃盗犯に共感を抱くようになっていきます。
話すアラビア語がエジプトのアクセントであることや、エジプトのナンバーに電話をしていることから、窃盗犯はエジプト人だとvan der Meerさんは推測。そして「彼は一般的な犯罪者では全くない」と考えだし、当初は「窃盗犯を罰したい」という気持ちを抱いていたのが、徐々に窃盗犯に対して罪悪感を抱き出します。
窃盗犯はホームレスのシェルターや、友人の家で眠ることがあったとのこと。
「彼は孤独で、悲しい男だと思った」
「金曜日の祈りを忘れるな」と強く押す窃盗犯の声を聞き、「非常に宗教に熱心な男のようだった」と語るvan der Meerさん。
「彼は本当に貧しいのではないのか?」
van der Meerさんが遠隔操作しているためにモバイル通信量が膨れあがり、窃盗犯が頻繁にコールクレジットを購入していることに気づいたvan der Meerさんは……
犯人が眠っている間に遠隔操作でコールクレジットを購入してあげるのでした。
窃盗犯に対して感情移入をし始めたvan der Meerさんは、この後どんな行動を取るのか……?ということはムービーを見るとわかります。オランダ語で語られる20分の短編映画になっていますが、英語字幕付きで、ラストまで引きつけられる構成です。
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