コンピューティングの進化を支えてきた「メモリ(RAM)」は今後どのように進化していくのか?


PCやスマートフォンに欠かせない半導体のメモリ(RAM)は、時代と共に大容量化・高速化・低価格化を進めてきました。低価格なメモリによって進化がもたらされてきたコンピューティングの世界で、RAMを代替するべく開発されている新メモリ技術を見てみると、メモリがコンピューティングの未来に果たす役割と重要性は今後も変わることがないようです。

Thanks for the memory: How cheap RAM changes computing | Ars Technica
http://arstechnica.com/gadgets/2016/11/how-cheap-ram-changes-computing/

一般的に「メモリ」と呼ばれる「random access memory(RAM)」は、格納されたデータに任意の順序でアクセスできる記憶装置です。RAMは演算処理を行うCPUとデータを保存するストレージ間でのデータの受け渡しを担っており、PCやスマートフォンなどのコンピューターにとって不可欠な部品となっています。このRAMの高速化、大容量化、低価格化が、コンピューターの性能向上に大きな役割を果たしてきたことは歴史が証明しており、RAMがさらに進化することが今後のコンピューティングの進化を決定づけると言っても過言ではありません。

1Mbを実現したCarl Zeiss製のDRAM。


RAMの価格は水物で、他の半導体に比べると大きな値幅を持っています。しかし、長期的に見れば、RAMの容量当たりの価格は着実に下がってきています。2000年に1000ドル(約10万円)以上した容量1GBのメモリは、2016年現在ではたった5ドル(約500円)です。DRAMだけでなくSSDなどの不揮発性メモリの価格も時間と共に下がり続け、これによってコンピューターの性能が上昇し続けてきました。


現在のコンピューターでは、RAMには「Dynamic Random Access Memory(DRAM)」と呼ばれる電荷を蓄えて情報を保持する半導体メモリが使われています。しかし、DRAMは揮発性メモリのため、電力を失うとデータを保持できないという大きな欠点があります。これを補うために定期的にストレージにデータを書き戻す作業が行われますが、この作業によっても完全な冗長性は保たれず、さらには処理速度が遅くなるというデメリットを抱えています。

RAMの欠点である揮発性を解消した不揮発性メモリのNANDフラッシュはSSDなどで活用されており、SSDは従来のストレージメディアであるHDDを置き換えつつあります。RAMと同様に性能向上が著しいSSDは、近年、より高い信頼性と性能が求められるデータセンターでの利用も進んでいます。ただし、Googleが6年間という長期間にわたってデータセンターで行った調査では、「既存のHDDに比べるとSSDの信頼性は低い」という結論が下されるなど、いまだにSSDがHDDを完全に置き換えられる段階にはありません。

DRAMの持つ高速性というメリットと揮発性というデメリットを補って、RAMとNANDフラッシュの中間の特性を持つ新たなRAMの開発も進んでいます。磁気抵抗メモリ(MRAM)は有力な代替メモリの一つ。メモリセルを磁化することでデータを記録するMRAMは、不揮発性にもかかわらず高い書き込み速度を持ち、書き換え回数も無制限という大きな特徴を持つため、DRAMやストレージを置き換えるメモリとして期待されています。

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また、IntelとMicronが共同開発する「3D XPoint(3Dクロスポイント)」も有力なメモリ技術です。記録密度がDRAMの10倍以上、書き込み速度&耐久性がNANDフラッシュの1000倍で、なおかつ不揮発性という特性を備える3D XPointメモリは、DIMMにも対応するので、DRAMをキャッシュとして使い超高速ストレージとして利用することも想定されています。他にもIBMが取り組むカルコゲナイドガラスの結晶/アモルファスの相互変化をデータ記録に利用する「相変化メモリ」は、DRAMよりも高密度かつ低コストな不揮発性メモリを製造できる可能性を持ちます。


コンシューマー向けのPCやスマートフォンにおいてRAMの大容量化・高速化はマルチタスク用途において大きな威力を発揮します。そのため、RAMの大容量化・高速化を求める声は大きく、この傾向は最先端のスーパーコンピューターにおいても同様です。2016年時点で世界最高速のスーパーコンピューターの座を射止めた中国の「神威」は1.3PB(1300TB)のDDR3メモリを搭載しています。大容量・超高速メモリは高性能なスーパーコンピューターにとっては不可欠の存在で、理化学研究所と富士通が2020年を目標に共同開発するポスト「京」世代のスーパーコンピューターや、2022年に完成予定のエジンバラスーパーコンピューターセンターの次世代スーパーコンピューターには、DRAMとともに3D XPointメモリが搭載されると考えられています。


アメリカのオバマ大統領が提唱する「Exascale Computing Project」は、2023年までにエクサバイトスケールの新スーパーコンピューターの完成を目標に掲げていますが、その中で処理速度だけでなく電力効率においても著しい性能向上を要求しています。この相反する条件をクリアするために、RAMが果たす役割はさらに大きなものになるとみられており、今後もコンピューターの進化にとってRAMの性能向上が求められていきそうです。

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