2016年06月21日 10時11分ハードウェア

中国産のCPUのみを使ったスーパーコンピュータ「神威」が世界最速に

top500.orgによってスーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」が発表され、中国の「神威太湖之光(Sunway TaihuLight)」が世界最速の座を射止めました。Sunway TaihuLightはIntelなどのアメリカ製のCPUではなく、オール中国製の独自CPUを使用しているとのこと。そのほかにも中国製のスーパーコンピュータが上位の多数を占めるなど、スーパーコンピュータの世界における中国の技術の躍進が際立つ結果となっています。

China Tops Supercomputer Rankings with New 93-Petaflop Machine | TOP500 Supercomputer Sites
http://top500.org/news/china-tops-supercomputer-rankings-with-new-93-petaflop-machine/

June 2016 | TOP500 Supercomputer Sites
http://www.top500.org/lists/2016/06/

New Chinese supercomputer named world's fastest system - Xinhua | English.news.cn
http://news.xinhuanet.com/english/2016-06/20/c_135451888.htm

World’s Fastest Supercomputer Now Has Chinese Chip Technology - Bloomberg
http://www.bloomberg.com/news/articles/2016-06-20/world-s-fastest-supercomputer-now-has-chinese-chip-technology

2016年6月20日にドイツ・フランクフルトで開催された国際スーパーコンピューティング会議(ISC)で「TOP500」の最新結果が発表され、中国のスーパーコンピュータ「Sunway TaihuLight」が1位の座を獲得しました。数値演算ソフトLINPACKを使ったSunway TaihuLightの演算速度は93PFLOPS(ペタフロップス)で、2015年まで世界最速だったスーパーコンピュータ「天河二号(Tianhe-2)」を上回っています。なお、33PFLOPSで17.8MWだった天河二号に対して、Sunway TaihuLightは93PFLOPSで15.3MWとエネルギー効率でも優れています。

Sunway TaihuLightは中国・上海から車で2時間ほどの場所にある無錫市の国立スーパーコンピュータセンターで稼働中。気候シミュレーションや地球環境システム、生命科学のモデリングなど高度なデータ分析を中心として研究やエンジニアリングで運用される予定です。

Sunway TaihuLightについて特筆すべきことは、搭載するCPU「SW26010」が中国製であること。これまで最速だった天河二号がIntelのXeonプロセッサベースだったのに対して、Sunway TaihuLightは「初の中国製プロセッサによる最速スーパーコンピュータ」ということで歴史的な意味を持っています。

中国が独自のCPUを開発した背景には、2015年にアメリカ商務省が、天河二号が核開発研究に使われているとして、関連機関向けにIntelのCPUやNVIDIAのGPUなどの半導体の輸出禁止を打ち出したことがあると見られています。アメリカによるCPUの輸出禁止を受けて、かねてから進められてきた中国産のCPU開発の速度が高まった可能性はありそうです。

国立スーパーコンピューターセンターのヤン・ガンウェン所長は、「中国発の完全自国製プロセッサを搭載するSunway TaihuLightは、大規模計算システムの設計と製造における中国の技術の進歩と重要性を示しています」と述べています。なお、Bloombergによると、IntelはSunway TaihuLightについてコメントを避けたとのこと。

2016年6月時点での世界スーパーコンピュータランキングのトップ10はこんな感じ。1位、2位を中国勢が占め、3位、4位、6位、7位にアメリカ勢、日本の「京」は5位。京の演算速度が10PFLOPSなので、トップのSunway TaihuLightは約9倍の性能を持つということになります。