リオ五輪の安倍マリオが魅せた日本のソフト・パワーの可能性
一国の首相が人気ゲームのキャラクターに扮するという前代未聞のサプライズ。1週間前に行われたリオ五輪の閉会式で、2020年の東京五輪への引き継ぎ式が行われ、プレゼンテーションの映像にマリオやドラえもんも登場して日本のみならず世界を大いに沸かせました。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。閉会式の映像にでてきたマリオ、ドラえもん、キティちゃん、パックマン、キャプテン翼といった世界でも人気の日本キャラクターたち。そうです。私も全部、海外で見たことあります。
◆引き継ぎ式
南米初となったリオデジャネイロオリンピック。日本選手団は史上最多の41個のメダルを獲得。列島各地は大いに盛り上がりました。そして閉会式。五輪旗が2020年にオリンピックが開催される東京に引き継がれます。それと同時に世界の人々に向けて東京オリンピックの魅力を伝える華やかなパフォーマンスが行われました。
【NHKリオ】2020へ期待高まる!トーキョーショー - YouTube
3分17秒あたりから始まる映像パートが特に反響を呼びました。
まずは、東京を舞台にオリンピックで実施されるスポーツ種目の光景が流れます。この合間合間に、海外でも人気がある日本のキャラクターたちが登場します。
さらには、日の丸に見立てた赤いボールを競泳の北島康介さんや女子マラソンの高橋尚子さんらがパスしていき、最後には安倍首相の元へ。ここでもキティちゃん(ハローキティ)らが登場。
国会議事堂を出た乗用車の後部座席に座った首相は時間を気にしています。
困った首相はマリオに変身。
ドラえもんに日本とブラジルを繋ぐ土管を出してもらって、そこへ飛び込むマリオ。
リオの会場にも土管が出現していて、その土管からマリオのコスチュームに身を包んだ首相が出てきたかと思うと一瞬でスーツ姿に。
日本から繋いだ赤いボールを会場の観客に向けて大きく頭上に掲げるのでした。
この映像にはマリオ、ドラえもん、キティちゃん、パックマン、キャプテン翼が出てきました。海外でも人気の日本キャラクターです。
◆マリオ
安倍首相が扮したマリオは任天堂を代表するゲームキャラクターです。横スクロールのアクションゲーム(「スーパーマリオブラザーズ」シリーズ)からレースゲーム(マリオカート)、ミニゲーム(マリオパーティー)、パズル(ドクターマリオ)まで、どんなゲームもマリオがやれば人気作品に。それどころかヨッシーやドンキーコングなどのキャラクターも活用しまくりです。マリオは海外でも人気者で、これまでにいろいろな光景を見てきました。
パナマの民家にあった靴マリオとロックマン。ドット絵と凝ったことをしていました。
エクアドルの首都キト手前で思わず足を止めた壁アート。ちょっと悪い顔をしていました。
チリのゲームショップの壁に描かれていたマリオとヨッシー。
こちらもチリで、ガチャポンのアイテムがマリオシリーズに出てくるキャラクターのミニフィギア。
アルゼンチンのゲームショップにあった土管とマリオ。接続が悪ければこっちの土管から首相が出てきた可能性も!?
見つけたらハッピーになれる1UPキノコ。
ブラジルのゲームショップの店頭にはマリオシリーズの流れがひと目で分かるイラストが飾られていました。
イタリアのガソリンスタンドにいたマリオはちょっと変。
アイスランドにあった壁アートは作品と言ってもいいほどの完成度。マリオシリーズと言えるドンキーコングの世界が舞台でした。周りのモンスターはパックマンでしょうか。
台湾マクドルナルドのハッピーセットのおもちゃ。
◆ドラえもん
ドラえもんは22世紀の未来からやって来た猫型ロボット。のび太くんという何をしても冴えない小学生を未来の道具で手助けします。海外では南アジア、東南アジアで特に人気となっていました。
ドラえもんはインドでも大人気です。クッキーに使われていたイラストは、これまたインドの人気スポーツであるクリケットの姿でした。
中国の商用車に描かれていたのは大好物のどら焼きを頬張る姿。
マレーシアでは消費者金融の広告に勝手に使われていたり……。
ドラえもんを使ったキャンペーンを行っているタイの銀行。
◆キティちゃん
ドラえもんと双璧をなす日本の猫キャラがキティちゃんです。オリンピックの映像ではチアリーダーの姿でボンボンを振っていました。日本の「Kawaii」を具現化した存在。仕事と同様に働く国も選びません。海外の人にも愛されるキャラクターとなっていました。
モロッコのマクドナルドのハッピーセットに付いてくるおもちゃにも採用。
マレーシア人のデコレーションバイクもキティちゃん仕様でした。「猫」という漢字がじわじわきます。
コロンビアの雑居ビルの窓にもその姿を確認。
中東ドバイのドバイ・モールというショッピングモールにもファンシーな外観のキティちゃんショップが営業していました。
台湾にもピンクが目を引くキティちゃんのお店がありました。
◆パックマン
パックマンはナムコ(現在のバンダイナムコ)によって1980年に発表されたアーケードゲームです。「最も成功したアーケードゲーム機」としてギネス・ワールド・レコーズにも記載され、米タイム誌が発表した「歴史上最も偉大なビデオゲーム100本」にも選ばれています。
メキシコの道路脇に掲げられていた広告。
コソボのピザ屋さんに掲げられていた看板はパックマンがピザを食べているようでした。このピザの形はパックマンの誕生のきっかけになったという逸話もあります。
◆キャプテン翼
「日本のサッカー漫画を挙げて」と振られて思い浮かべるのはきっとこちらの漫画でしょう。日本、海外を問わず多くの子どもたちが熱狂し、キャプテン翼に憧れてサッカーを始めたというプロ選手もたくさん活躍しています。
イタリアの缶ジュースにはキャプテン翼のキャラクターが描かれていました。
調べたところ、これは「三杉くん」。他の選手が描かれた缶ジュースもありました。
◆日本のソフトパワー
旅に出るまでは、これほどまでに日本文化が海外に浸透しているとは思ってもいませんでした。日本のキャラクターを見つけるたびにちょっと胸が弾みます。世界は繋がっています。「アニメを見て日本語を覚えた」という強者に会ったことも……。
・インドネシア:ネットカフェに貼られたるろうに剣心のポスター。
・ポルトガル:音声は日本語、字幕はポルトガル語で犬夜叉のアニメが放映されていました。
・ペルー:街のキオスクにはスポーツ紙のような漫画情報誌が置いてありました。この号は週刊少年ジャンプで連載されていたBLEACH特集で、主要キャラクター100人紹介とかなりこだわった企画をやっていました。
・チリ:「ザ・シンプソンズ」のシンプソン一家と「新世紀エヴァンゲリオン」の綾波レイ。
・オマーン:マガジンラックに「銀魂」の銀さんの顔があって目を疑いました。地方都市の地元商店でしたのでなおさらびっくり。
・フランス:「J-ONE」というテレビ局の広告に「ワンピース」のルフィと「NARUTO-ナルト-」のうずまきナルトが使われています。衛星放送、ケーブルテレビで日本アニメを放映を手掛ける会社です。日本の漫画、アニメがヨーロッパで一番浸透しているのがフランスでした。
・タイ:缶飲料に描かれていた仮面ライダーV3。
・ネパール:ナルトではなく一昔前の忍者ハットリくんが人気のようでした。テレビアニメもやっていました。
・ウクライナ:地元マーケットで存在感を放つ聖闘士星矢や進撃の巨人などの漫画キャラクターたち。
・モンゴル:首都のウランバートルを散歩していたら雨宿りをしているトトロを発見。
途上国の工業化によって日本のものづくりはじわじわと衰退していっています。ボールペンなら1本20円、Tシャツなら1枚300円とグローバル化が進む世界はあらゆる物の値段を押し下げます。人件費が安い国との価格競争はなかなか厳しいものがあります。
でも、既存品にキャラクターを加えるだけで価格競争から開放されます。そういったキャラクターを日本はたくさん抱えています。「日本のキャラクターの力を借り、日本のソフトパワーを示したかった」と安倍首相も語りました。これからの日本を助けてくれるのはこうしたキャラクタービジネスだと私も思います。
ちなみに、海外で目にした日本のマンガ、アニメについては、過去にGIGAZINEで以下のような記事にしているので、ぜひこちらも読んでみてください。
メキシコで愛される日本のアニメやキャラクターたち、メキシコ人はオタクだった - GIGAZINE
バンコクのジャパンエキスポはタイ人コスプレイヤーたちの祭典でした - GIGAZINE
ドラえもんがタイでは雨乞いの儀式に使われるほどの大人気キャラクターという事実 - GIGAZINE
日本のマンガは世界中でどのように販売されているのかあちこち巡ってみた - GIGAZINE
台湾で見つけた少年マンガ雑誌「宝島少年」「新少年快報」「龍少年」 - GIGAZINE
タイや台湾の街を歩くとポケモンではなくドラえもんばかりをゲットする結果に - GIGAZINE
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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