取材

日本のマンガは世界中でどのように販売されているのかあちこち巡ってみた


世界には日本以上に漫画を愛する国はありません。毎週発行される漫画雑誌の数々、そこに掲載されている作品の数々。冒険、スポーツ、恋愛だけでなく、料理、歴史、政治、経済、宗教まで、すべてを漫画が表現してくれます。この漫画に惹かれてしまったのは、私たち日本人ばかりではありません。漫画は海を越えて、多くの人々に愛されていました。

こんにちは、小さなころはドラえもんばかり読んでいた自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。ポケットの中から次々と出てくるひみつ道具に胸をときめかせていました。映画も見てました。鏡の世界へ、宇宙の果てへ、雲の王国へ、そんな冒険に憧れたからこそ、今こうして海外を旅しているのかもしれません。

中国のドラえもん。


メキシコのドラゴンボール。


フランスのONE PIECE。


海外でも本屋を見つけては漫画を探していました。皆さんお馴染みのキャラクターも、流暢な外国語を話してらっしゃいます。海外の漫画は、このような感じとなっていました。

◆アラブ首長国連邦
「アラブ首長国連邦」と書くと分かりづらいかもしれませんが、ドバイです。天然資源の輸出に頼る経済構造から脱却するために、観光振興に躍起となっているドバイには、映画館、水族館、スケートリンクも入った世界最大級のドバイモールというショッピングモールがあります。そこに、日本の紀伊國屋書店が入っていて、英語版の漫画本が並んでいました。アメリカ、イギリスと同じ本になります。そこで、英語版ドラゴンボールの漫画を購入。

アニメ、映画、カードにゲームと、ドラゴンボールと一緒に育ってきた男の子は多いことでしょう。最近でも根強い人気から、フリーザの復活を描いた映画「ドラゴンボールZ 復活の『F』」に、魔人ブウとの戦いの後を描いたアニメの新シリーズ「ドラゴンボール超」と、新たな作品が作られています。2013年に公開された「ドラゴンボールZ 神と神」という映画は、南米のペルーでも上映されていて盛り上がっていました。海外でも、ドラゴンボールは人気を博しています。

英語版ではドラゴンボールが全16巻、ドラゴンボールZが全26巻と、構成が2つに分かれているので、最終巻がこのような感じとなっていました。


裏表紙はこのような感じに。カバーがないので、日本のコンビニコミックのような体裁です。


34ディルハム(約1150円)でした。


力強い線で描かれる鳥山先生のイラストは、アメコミに通じるものを感じます。「VMMMM」「BAMM」といったアルファベットの擬音も自然です。


英語がペラペラの悟空。


◆イタリア
高校生探偵だった工藤新一が、黒の組織に投与された薬の影響で小学生の姿に。名探偵コナンは「見た目は子ども、頭脳は大人」となってしまった江戸川コナンが、数々の難事件を解決していく推理漫画です。1994年に週刊少年サンデーで連載が始まり、実写ドラマ化されたり、ルパン三世とコラボレーションしたりと話題に事欠きません。こちらも、海外ではよく見かけます。英語版は題名が「Case Closed」で、新一はJimmyで、蘭はRachelになるということ。

イタリアにあった名探偵コナンは「Detective Conan」という題名になっていました。Detectiveは探偵を意味する英語で、これなら英語版も題名は「Detective Conan」でよさそうですが。


巻末に目次がついてます。隣には日本の出版社の垣根を越えて、ドラゴンボールの紹介が。3.90ユーロ(約530円)と、ヨーロッパにしてはお手軽な値段でした。


小説のような文字量とネットで突っ込まれていますが、イタリア語でもページが台詞で埋め尽くされています。


分かりづらい日本語である「SHOGI」には、イタリア語のキャプションが付いていました。


◆ブラジル
1999年から週刊少年ジャンプに連載を始め、昨年の2014年に15年にわたる長期連載を完結させた「NARUTO-ナルト-」。その人気は国内にとどまらず、海外でも絶大です。日本ならではの忍者という設定に惹かれる外国人も多いでしょう。そんなナルトをブラジルで見かけました。

出国間際に小銭が余っていて、ちょうどいいタイミングで漫画を見つけたので、「NARUTO-ナルト-」65巻を購入。


ジャンプでお馴染みの海賊のマークが、ちょっとかわいらしい姿に。10.90リアル(約425円)でした。


穢土転生で歴代の火影が復活するシーンです。日本語の「先代の火影達が」という台詞は、ポルトガル語の「...OS QUATRO HOKAGES(四人の火影達)」となっています。南米はスペイン語が公用語の国ばかりですが、ブラジルはポルトガル語が公用語です。


「にげろ」「罠アリ去レ」と日本語はそのままで、ポルトガル語のキャプションがついていました。


巻末には用語集がついていて、「屍鬼封尽(SHIKI FUJIN)」「死神(SHINIGAMI)」「忍(SHINOBI)」「真数千手(SHINSUU SENJU)」といった翻訳できない日本語を、ポルトガル語で解説しています。


空港にもあるほどなので、ブラジルの漫画事情もこのように充実。いろいろな漫画が、ポルトガル語に翻訳されていました。


◆ロシア
ロシアでも「NARUTO-ナルト-」を購入。モスクワ最大級といわれる「ドムクニーギ」という本屋で手に入れたのですが、漫画の扱いは数えるほど。前日にロシアの秋葉原といわれる場所も訪れているのですが、メキシコのように漫画を入手することは無理でした。どこかに専門店でもありそうですが、漫画が身近にある国ではなかったです。

かろうじて手に入れることができた「NARUTO-ナルト-」17巻。


ローマ字の「NARUTO」はキリル文字で「Наруто」となります。


作者紹介。


ナルト、サスケ、サクラとキリル文字ながらも、日本と同じ名前でした。名前が先で、名字が後です。


全編ロシア語の表記に使われるキリル文字が使われています。


ガガガガガ、ボコボコといった擬音はカタカナのまま。隣に小さなキリル文字の擬音が併記されていました。


コマの枠外に、お銚子に描かれた「酒」の説明。日本人にしか分からないイラストには、このような説明が付いています。


「мя-aу(ミャーウ)」とロシア語で鳴く猫。


巻末にはDEATH NOTEと、ドラゴンボールが紹介されていました。これらのロシア語版も気になるところです。


◆タイ
前人未到の累計発行部数3億冊を達成し、「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネスブックにも掲載されたONE PIECE。旅人の間でも「今すごい熱い展開」と話題に上がるほどです。私の旅の間でも、3回ほどピークがありました。海外でも大人気で、必ず置いてある漫画の一つ。そんなONE PIECEが、タイにもありました。

72巻を入手。50バーツ(約180円)でした。


タイ語なのでさっぱり読めません。ただ、絵だけでもストーリーが何となく伝わってきます。


ジャンプでお馴染みの海賊のマークは、タイ人が愛してやまないゾウさんの姿に変わっていました。


バックパッカーで賑わうカオサン通りの外れに、漫画関係の雑誌や単行本を大量に揃えた本屋を発見。


店内には、ところ狭しと漫画本が並べてあります。


まるで、日本の本屋のような漫画の充実ぶりでした。


◆マレーシア
マレー系、中華系、インド系と3つの民族が住むマレーシアですが、中華系の母語である中国語の漫画は豊富でした。ただ、権利関係が怪しいものばかりで、実態が掴めません。そんな状況ですが、ドラえもんには正式版があって、大きな書店では結構見かけました。

「哆啦A夢」と表記されるマレーシアの中国語版。


5.90リンギット(約190円)という値段でした。


ドラミちゃんが主役の「ネッシーが来る」という話の一場面。台詞は漢字となっていますが、中国本土と同じ簡体字が使われています。


6巻の最後は「さようなら、ドラえもん」となっていて、ひと区切り。


日本と同じように、巻末には「ひみつ道具百科」が載っていました。


同じ小学館だからか、名探偵コナンの版権もあるようです。


クアラルンプールを象徴するペトロナスツインタワーの近くにある、伊勢丹も入る大きなショッピングモールでは、紀伊國屋書店も営業しています。日本語の書籍も揃っているのですが、現地の大型書店としても地元の人たちで賑わっていました。こには英語版と台湾版の漫画が並べられています。

そこで、日本でも随分と話題になった「進撃的巨人(進撃の巨人)」の台湾版を購入。「的」は「の」の意味で使われています。


台湾だと1冊が100台湾ドル(約400円)のようですが、マレーシアだと18.21リンギット(約600円)と、少しばかし高い値段になってました。


台詞が全て中国語になるのですが、漢字が日本よりも複雑な繁体字となっています。


超大型巨人の登場で、衝撃的な見開きとなった「5年ぶりだな」という台詞は、「五年没見了」という中国語に。


余白ページのおまけも、全部漢字となっていました。古文書のような貫禄を漂わせています。


マレーシアの首都クアラルンプールのチャイナタウンでみかけた中国語版の漫画。


随分と傷んでいたので買わなかったのですが、マレー語っぽい漫画もありました。マレー語版も新品が欲しかったのですが、いろんな本屋を探したけれど見つからず。だとしたら、この本は何だったのかと気になっています。


◆フランス
ヨーロッパでは、一番漫画のある国でしょう。カルフールといったスーパーマーケットにも漫画本が並べられていました。特に「ONE PIECE」と「FAIRY TAIL」が人気だったのを覚えています。日本の大ヒット漫画に留まらず、かなりのマイナータイトルまで、ありとあらゆる漫画がフランス語に翻訳されていました。

作りこまれたストーリー設定に、張り巡らされた伏線と謎解き。少年ガンガンで連載され、同誌最高のヒット作となった鋼の錬金術師は「FULLMETAL ALCHEMIST」という題名として、フランスでも販売されています。


カバーをはずしたら、イラストが載っていました。もちろん、翻訳しています。


「BON VOYAGE(よい旅を)」のように全編フランス語となる中身。


フランス語で「ouaf-ouaf(ワフ-ワフ)」と鳴く犬。


おまけの4コマ漫画も健在でした。


大好きなドラえもんもありました。「La Chat venu du Futur(未来から来た猫)」というサブタイトルが付いています。


裏表紙には、どういう漫画か分かるような説明。


動物変身ビスケットで、猫の姿となったのび太。「C'EST MON VISAGE!?(これが僕の顔!?)」と驚いています。もともとが子ども向けの漫画なので、フランス語も易しくて読みやすかったです。


巻末にはおまけのページがあって、「どら焼き」「餅」といったフランス人に馴染みのない食べ物の説明をしていました。


二人の少年コンビが漫画家を志して奮闘していく姿を描いた「バクマン。」も、フランス語版がありました。表紙は日本と一緒ですが、左隅に「Version Francaise(フランス語版)」、右隅に「Kana(出版社)」と記されています。


こちらも、セリフが多い漫画として有名で、フランス語版もこのような状況に。翻訳の方は大変そうです。


小学生のときにノートに書いた「サギ師探偵ヒカケ」という漫画を思い出す場面ですが、そちらのロゴまでアルファベットでした。


持ち込んだネームが掲載されることなく、落ち込む二人に編集部の批評を読ませる場面。ここも、全部フランス語になっています。


おまけページのネームは、さすがに日本語のままでした。


山岳救助を題材に、実写映画化もされた「岳」は、フランスでは垂直という意味の「VERTICAL」という題名に。Tのアルファベットがピッケルを表しています。


落ち着いた感じの絵柄は、フランス語がとても似合っていました。


このようにフランスは漫画が充実しているのですが、少年コミックで6.6~6.8ユーロ(約900~930円)とかなり高め。青年コミックだと、8.05ユーロ(約1100円)もしました。ただ、これだけ本が流通しているなら、日本と同様に古本屋もあります。パリの中心には、かなり大規模な古本屋があって、中古の漫画なら半額くらいで買うことができます。

漫画だけではなく、いろんな本が置いてあった古本屋でした。


かなりのスペースに、漫画が置かれています。


漫画本が多すぎるので、1つの棚でも前と奥の2段という陳列。


日本の流行を追いかけるように、旬の漫画が並べられていました。


平積みで置かれていたのは新刊本。


このような感じで、日本の漫画は海外にかなり浸透していました。記事では紹介できませんでしたが、南米にはスペイン語版もあります。

漫画から生まれてくるキャラクターは、変哲のない品物に付加価値を加えます。アメリカのディズニーと並ぶほどに、日本の漫画はキャラクタービジネスを仕掛けていけるでしょう。衰退していくしかない製造業に代わって、日本を支えていくのは、漫画なのかもしれません。場所によってはアメリカ的な「Comic」とは違う、日本的な「Manga」というジャンルが確立されつつあります。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)

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