移動しながらしっかりと睡眠も取れる寝台列車、寝台バスという旅の手段
目が覚めたら目的地はもうすぐそこ。海外の旅行では寝台列車や寝台バスのお世話になることがあります。手足を十二分にも伸ばせるので、移動中でもくつろげます。しっかりと眠れます。しかも目的地に到着するのは朝。その日の観光は十分な時間を確保できます。
こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。バックパッカーとなって、中国から寝台バスと寝台列車を乗り継いでモンゴルを旅してきました。「150カ国」という旅の目標を達成し、念願だった寝台バスにも乗車しました。しかも、2回。
◆モンゴルを目指す
前回の旅は折りたたみ自転車を携えて、149ヶ国を訪問した状態で日本に帰国しました。目標とした150カ国に到達しなかったのは、アフリカでジブチとソマリランド訪問のタイミングを逃したため。2015年はIS(イスラミックステート)の活動もあって旅行者も少なく、躊躇するには十分でした。太平洋の島国を周った際に、あと1カ国追加すれば目標を達成できたところですが……それを言うなら、アメリカと国交を回復したキューバを未訪問なのも悔やまれます。
想うことはいろいろとありますが、過ぎ去ってしまったことは仕方がありません。もう一度だけバックパッカーとなって海外ヘ出ることにしました。150カ国目のターゲットに選んだのはモンゴル。2009年以来の中国にも興味がありました。関西国際空港から中国の天津までLCCの春秋航空で移動します。久しぶりの中国に戸惑いつつも、数日間慣らして首都の北京に移動。そこからモンゴルを目指しました。
行程は
北京→エレンホト:寝台バス
ザミンウード→ウランバートル:寝台列車
ウランバートル→ザミンウード:寝台列車
エレンホト→天津:寝台バス
となっています。
中国のエレンホト(二連浩特)とモンゴルのザミンウードの国境は徒歩で越えられないので、現地人と一緒に50元(約850円)を払ってジープやバンで移動しました。航空券も探したのですが、いつものように一番安くつく移動手段を選びました。
◆寝台列車
モンゴルの首都ウランバートルと中国との国境の街ザミンウードは鉄道で結ばれています。中国の北京からロシアのモスクワまで結ぶ鉄道の一区間。北京からウランバートルまで直通の国際列車もあるようなのですが、割高になるという情報があったので、ザミンウードまで自力で移動しました。ザミンウードとウランバートルを往復しているのですが、どちらも寝台列車です。
ウランバートルの駅。
チケットの値段は往路が2万2850トゥグルグ(約1260円)、復路が3万5550トゥグルグ(約1960円)でした。往路と復路で値段が違っているのは、ベッドの等級を変えたからです。往路でお腹を壊して「もう駄目だ、復路は飛行機を使う」といじけていたのですが、そこまで金銭的な余裕もなく「だったら、ベッドのクラスを上げよう」と自分で自分を慰めました。そのおかげで、こうやって比較記事を書けるのですが……。
・往路
往路に使った車両はこちら。安かった分だけ作りもそれなり。基本は4人で1セットです。中国から個人輸入でもしているのか、皆さんたいそうな荷物を抱えていました。小さな子どもも含む家族連れが多かったです。
通路側にも寝台スペースが並んでいます。私のベッドは通路側の上段。
この往路でお腹を壊しました。食料を事前に用意していたのですが、台車で運ばれてきたにおいにつられて、お弁当を買ってしまったのが間違い。ご飯、目玉焼き、ハンバーグ、野菜炒めというボリュームのある内容でした。半熟に近い卵が気にかかったのですが、この悪い予感は見事的中。気持ちよく眠っていたにも関わらず、お腹がスースーして目が覚めます。そんな一大事だというのに列車は駅でストップ。トイレの扉は開きません。モンゴルの列車のトイレは垂れ流し。用を足した後に足元のレバーを踏むと底がカパッと開いて中身がボトッと線路に落ちるのです。だから人が住んでいる駅の近くではトイレが使えません。これから旅をされる方はご注意ください。一気にやつれてしまいました。
・復路
随分とさっぱりしていたウランバートル駅のプラットフォーム。
ギシギシとレールを軋ませながら、乗車予定の列車が駅に到着。
車両の緑色は草原のイメージでしょうか。白い二頭の馬はモンゴルの鉄道のブランドマークです。
チケットに記載された列車番号を確認して車両へ。乗り込む前に入り口にいる客室乗務員の女性にチケットを見てもらいます。なぜかチケットは一度回収されるシステムなので、ベッドの番号は覚えておきましょう。チケットは後ほど返却してくれます。
高いチケットは見当がつかなかったので、かなり楽しみにしていました。そんな期待を胸に足を踏み入れるも、どこかで見覚えのある室内……。ウクライナでも同じような車両に乗りました。ソビエト連邦を構成していたウクライナと、ソビエト連邦の衛星国だったモンゴルという事情もあって、2つの国の車両はかなり似ていました。
すっきりと片付いた列車の通路。
2段ベッドが2つで4人が入る1部屋。ツアーガイドをやっている男性、若いカップルの2人、私という組み合わせでした。
ベッドとベッドの間にはこじんまりとした机が一つ。
こちらのベッドで眠りました。ベッドの下には要らない荷物を置いておく収納スペースがあります。
室内に入った時点でシーツ、枕カバー、タオルが入ったリネンセットがソファの上に置かれていました。ピチっと糊の利いたシーツを自分でセットします。
壁にはタオル掛けがあったり……
折りたたみ式の網棚があったりします。かゆいところに手が届く仕組みになっているんですよね。
乗車したあとは、サンダルに履き替えるとリラックスできます。
・感想
ガタゴトと音を立てる列車のリズムが子守唄となって、かなり熟睡していました。暗くなってみんなが寝静まると、何もできなくなるので眠るしかありません。少し高い復路のベッドの方が、幅も広く寝心地も柔らかくて快適。お腹さえ壊さなければ、往路のベッドも良かったんですけどね。
一人旅でベッドの下が自分の席だったら、上のベッドの人と調整が必要です。日中は、上のベッドの人も下のベッド(ソファー)に座るからです。そういう点では上のベッドの方が気が楽です。一旦上ってしまえば後は誰に気兼ねすることもありません。
◆寝台バス
北京からモンゴルまでは列車を考えていたのですが、北京駅では予定日にチケットを確保できず、結局はバスで移動しました。「木樨园长途汽车站」というバスターミナルからエレンホト(二連浩特)へのバスが出ています。数日前にバスターミナルでチケット購入を試みるも「当日じゃないと駄目なのよ」と言われて退散。エレンホトへのバスは1日3本ほどあるという情報で、チケット購入は当日で十分でした。
チケットの値段は往路の北京→エレンホトが180元(約3千円)、復路のエレンホト→天津が235元(約4千円)でした。
この時に乗ったバスは寝台バスでした。日本だと安全上の理由から規制されているものの、海外には座席ではなくベッドを設けたバスの運行があります。ずっと自転車で旅をしていたので、乗る機会はなかったのですが、たまに見かけていたので気になっていました。ずっと乗ってみたいと思っていました。ついに、その時が訪れたのです。
・往路
その時のバスがこちら。バスの中に2段ベッドが縦3列で並んでいました。
運転席の方はこのような感じに。
私の席はこちら。上段のベッドでした。枕の部分が高くなっているのには理由があります。
このように頭を置く場所は、後ろの人の足が入るようになっています。限られたスペースを有効に活用していました。
ただ、私の席は足入れが無かったです。下にバスの中央ドアがあったからでしょう。おかげさまで、足を伸ばしても十分なほどにベッドの長さがありました。寝返りは厳しいですが、それなりの幅もあります。手すりがついていたので転落の心配もなかったです。
ちょっとした小物が置ける便利なスペース。
ベッドの上から窓を眺めると、走行中の乗用車の屋根を見下ろすような形に。かなり高いところベッドがありました。
寝台バスの全景はこのような感じでした。2階建てバスと大型バスの中間くらいの大きさとなっています。
・復路
モンゴル訪問を無事に終えエレンホトに戻った後も寝台バスに乗りました。こちらも最初に鉄道駅をあたったのですが「北京まで直通はないわ、集寧南という駅で乗り換えが必要よ」と条件が微妙で断念。鉄道駅からバスターミナルに向かうと、次のフライトがある天津までの直通バスがありました。北京まで戻ってから天津に移動と考えていたので手間が省けました。
復路のバスも往路と同じように2段のベッドが縦3列で並んいます。
運転席の方はこのような感じに。
復路は下段のベッドでした。頭を置く場所は高くなっています。
足が入るスペース
こんな感じで寝っ転がっていました。ゴロゴロしながらスマホをいじっていました。
・感想
乗ってみての感想ですが、道路が凸凹しているとベッドも揺れます。上段の方が心なしか揺れが大きいです。こうした揺れで途中に目を覚ましたりします。それでも、日常に近い形で体を仰向けや横向けにできるので深い眠りに落ちていました。寝台列車には敵いませんが、しっかりとした睡眠が取れます。日本の夜行バスも乗ったことがありますが、座ったままの姿勢で一夜を明かすのはかなりしんどいです。その点、寝台バスは疲れが取れますので、朝から観光に出かけることもできました。
休憩は一回。往路も復路も同じ場所でした。お腹が空いていても食堂や売店があるので何となります。トイレはニーハオトイレなので覚悟を決めましょう。大をするにしても隣に壁というか仕切りはありますが入り口に扉がありません。通路から丸見えですが、気にしないようにしましょう。また盗難防止のためでしょうが、休憩中はバスの中に戻れませんでした。
◆モンゴルの旅
おかげさまで、モンゴルの旅も計画通りにできました。寒波のせいで雪景色になったときは焦りましたが、翌日は雲一つない青空。遊牧民が暮らす草原のゲルでホームステイと、モンゴルでの一番の目的も果たせました。
ウランバートルを代表する百貨店のノミンデパート。
真っ白な雪に包まれたハラホリンの街。モンゴルの中央にある街です。
それでも翌日は狙っていた通りの晴天。遊牧民が暮らす草原のゲルで、最高の一日を過ごしました。
ヨーロッパでベラルーシからウクライナの首都キエフに到着したときも寝台列車でした。翌朝にキエフに到着。すぐにウクライナ西部リヴィウへ向かう寝台列車のチケットを購入しました。駅なので荷物を預ける場所もあります。重い荷物は駅に置いて、日中は身軽な格好でキエフ市内を観光。夕方にキエフ駅に戻ってきて、2日連続の寝台列車でリヴィウへと向かう、という旅でした。
今回の復路は、エレンホトのバスターミナルに荷物を預けて、寝台バスの発車時刻まで街を散策。お風呂屋さんでシャワーを浴びたりもしていました。
海外を旅するときには寝台列車、寝台バスを上手に利用したいものです。移動しながら宿代を一泊分浮かすことができますしね。ただ、インドやタンザニアでは盗難の話も聞くので貴重品の管理には細心の注意を……。
(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)
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