乗り物

エチオピアに開通した中国製路面電車が取って付けたような仕事ぶり


鉄道なんて全く分からない身でも「どうしてこうなった」と突っ込みたいところあり。エチオピア政府の仕事が杜撰なのか、それとも中国企業が手を抜いてるのか……。とりあえず開業したものの、未だに駅のホームは工事中。そう、きっとまだ工事が終わってないだけですよね。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。インドネシアの新幹線受注をめぐって、日本と中国が熱い火花を散らしました。結局は中国に軍配が上がりましたが、それで本当に良かったのでしょうか。少なくともエチオピアで開業した路面電車は、それ相応のクオリティしか感じませんでした。

アディスアベバの地図。


◆エチオピアとは
エチオピアには特有の暦があって、西暦でいう2015年9月12日から、2008年が始まっています。棒人間が踊っているようなゲエズ文字も独特。飢餓というニュースのイメージとは一転、緑が豊かな国でもありました。道路上では牛、羊、ロバ、ウマ、ラクダと家畜たちのオンパレード。地元民が腰掛ける椅子には、ロープ状になった動物の皮が格子状に張られています。外から持たされたのでなく、エチオピア正教という独自のキリスト教が古くから信仰されている国です。同時にユダヤ教徒も南下していて、近年ではイスラエルがエチオピア系移民を受け入れているほど。英語も通じるし、女性の進出も盛ん。エチオピアはアフリカと一線を画して考えたい、かなり変わった国でした。

◆路面電車が開業
そんなエチオピアの首都アディスアベバで、今年9月20日に路面電車(ライトレール)が開業したというニュースが流れてきました。

エチオピア首都で路面電車開業、中国の大規模な出資で完成 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3061498

【9月28日 Relaxnews】エチオピア・アディスアベバ(Addis Ababa)で20日、サブサハラ(サハラ砂漠以南の地域)では初の例となる、近代的な路面電車(トラム)が開業した。アフリカ第2位の人口を抱える同国の首都アディスアベバでは、中国の大規模な投資によって完成にこぎつけたこのインフラプロジェクトを、経済発展における重要な一歩を画するものとして歓迎する声が上がっている。

エジプトやモロッコといったアラブアフリカをのぞいた、ブラックアフリカ初の快挙となります。10月の始めにアディスアベバにいたので、どんなものかと足を運んでみました。

路面電車の線路は、アディスアベバ市街を東西に貫く「Ras makonnen ST」に沿って、敷かれていました。


雑然とした路上と、整然としたホームがアンバランス。


駅に到着して、しばらく様子を伺います。そしたら、電車がやって来ました。停電も断水も普通に起きるエチオピア、この目で見るまで、電車が動いているか半信半疑でした。動いていると分かれば、乗るしかありません。ただ、頭上のホームを見上げてみても、改札口のようなものは見つからず。

ホームへ繋がる階段。


辺りを見渡したら、地元の人たちは、道路脇の小さな建物で、切符を購入していました。「どこ行きたいの?」と訊かれても、どこに行くあてもなく、駅員さんを困らせてしまって、ごめんなさい。数駅先に市場があるようなので、そこに行くことに。

分かりづらい、切符売り場。


ここで切符を購入。新しい建物のはずなのに、すでにくたびれていた外観。


近隣は2ブル(約12円)という驚きの低価格。距離によって、4ブル(約24円)、6ブル(約36円)と値段が変わるという説明でした。


裏面には路線図が描かれ、乗る駅と降りる駅にチェックがされています。


駅名の看板。


現在開通しているのは、アディスアベバ市街を南北に結ぶLine2のみ。東西を結ぶLine1は、遅れて開業するそうです。


階段を上って、警備員のチェックを受けて、駅のホームに。改札口はありませんでした。


ここも気になったのですが、ホーム間は移動がままなりません。ホームを間違ったら1度階段を下りて道路を渡って、反対側の階段を上る必要があります。このような駅は、歩道橋も兼ねて両方のホームが繋がっている仕様が他の国では普通なんですけど。

反対側のホーム。


列車がやって来ます。


先進国で走っていても、見劣りしない真新しい車両。ノンステップでバリアフリー仕様のドアでした。


◆できたばかりなのに……
目的の駅に到着したので、電車を降ります。この区間は、高架ではなく道路と並走していました。柵があるので、線路内に立ち入ることはできません。


ただし、ここに踏切が出現。数人が警備しているようですが、不安しか感じませんでした。何が起きるか分からないのが、途上国の日常。踏切が遮断中に線路内に人が入れば、もちろん列車の運行は遅れます。人ならまだしも、牛や羊といった家畜が迷い込んだら手のつけようがありません。そのようなリスクを顧みず、踏切を設けるという選択。全て高架にするほどの予算はなかったのでしょう。事故が起きないといいですけれど。

列車の通過を待つ人たち。


踏切の棒の数と同じ、4人の警備員が、市民の安全を守っていました。


少し高架橋に沿って歩いてみます。最初のときは、道路の上を走る電車に興奮して、細かいことは気付かなかったのですが、目を凝らすと仕事の粗さが目立ちます。できて間もないにも関わらず、既に汚いのです。コンクリートの品質も悪いのか、ざらついたところもあって、強度も心配でした。

しばらくすると、電車は再び高架橋の上を走ります。


この高架を支える支柱の隙間に、ゴミのようなものが詰まっていて、唖然としました。取ってつけたような板、突き出たビニールパイプと、いろいろと中途半端。


高架橋と高架橋の繋ぎ目にもモヤッとさせられました。コンクリートも、ザラッとしています。


エスカレーターを支える柱も、こんな形でいいのでしょうか。


ホームが高架上にある場合は、階段の他にエスカレーターが設置されているのですが、動くことはなく野ざらしのまま。標高約2400mの高地にあるアディスアベバは、雨も降りますし、日中の気温差も大きいです。果たしてこれらのエスカレーターは稼働するのか。稼働しても保守できるのか。疑念を抱かずにはいられませんでした。

砂埃を被ったエスカレーター。


コンテナを、切符売り場としている所もあります。


◆中国製の電車
しばし歩いたところで、再び路線電車に乗り込みました。「(宿のある)ピアッサまで行きたい」と訊くと「終点まで乗りなさい」というので切符を購入。

階段を上って、駅のホームへ。


一直線に伸びる線路。


ここで運行されている路面電車は、2両編成の小さなもの。中国製ですが、こちらは綺麗な電車となっていました。車内の椅子が「ロングシート(縦座席)」と「クロスシート(横座席)」が混じっていたのは不思議。車内のアナウンスは、英語オンリーでした。

穏やかな電車内は、路上の喧騒とは別世界。


車内にはモニターが付いて、路線図と現在地を映していました。


非接触型の電子マネーに対応しそうな機器も付いています。これから普及させるのかもしれません。


長春軌道客車股份有限公司」の車両だそうです。工業化が遅れている地域というイメージの強かった中国東北部ですが、このような大きな企業もあるんですね。


終点の「メネリク2世広場(Menelik II Square)」の駅は、地下にありました。ここで降りてきた車掌さんは、中国人の方でびっくり。


モダンな雰囲気の連絡口を進めば……


地上に出ることができます。この駅は、地下鉄の入口のようになっていました。「メネリク2世広場」は、宿のあったピアッサのすぐ近くで、そのまま歩いて戻りました。


◆他国だと
粗さの目立ったアディスアベバの路面電車ですが、他の国ではどうだったかと、写真を探してみたのですが、どこもそれなりに整っています。

タイ、バンコクの「バンコク・スカイトレイン(BTS)」は1999年の年末に開業。2015年時の写真です。


開業から15年も経つので、傷んではいますが、丁寧な作りでした。


マレーシア、クアラルンプールの「KLモノレール」は、2003年の開業。2015年時の写真です。


湿度もあるでカビてはいますが、綺麗にできています。


アラブ首長国連邦、ドバイの「ドバイ・メトロ」は、2011年に開業。2014年時のグリーンライン、スタジアム駅の写真です。


ホームへ上るエスカレーター。


といった感じです。

◆中国の海外投資
中国が主導権を握って設立した「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」が話題になったように、中国の海外投資は勢いを増しています。

アフリカでも、中国の活躍が目立っていました。ケニア北部の過酷の道が舗装路に生まれ変わって、エチオピアとのアクセスが容易に。コンゴ共和国では、沿岸部のポワント・ノワールと内陸にある首都ブラザビルの幹線を整備しています。アンゴラでは同国を横断する、全長1344kmの鉄道を完成させました。


ただその一方で、中国が手がけた仕事に首をかしげたことも。ザンビアの首都ルサカとジンバブエ国境を結ぶ「Lusaka-Chirundu」の道路は、片側2車線の立派な幹線にも関わらず、勾配の急な区間も多くて、たくさんの大型車が身動きが取れなくなっていました。「Vehicle Graveyard(車の墓場)」と呼ばれるほど。

このこともあって、エチオピアの路面電車には心配になりました。もしかしたら。開業日だけはずらせず、これから仕上げていくかもしれません。いずれにしても、中国の投資で、エチオピアの人たちに過度な負担がかからないことを望むばかりです。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak)

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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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