メモ

目的を持って繰り返し練習すると劇的な効果が得られる

By Harsh1.0

短い期間しか保持されない短期記憶には限界があり、例えば「複数の10桁の乱数列を覚える」ということは、特殊な訓練を受けている人でなければ、ほとんどの人が失敗してしまいます。この短期記憶の限界を拡張するフィールドワークが、「1万時間の法則」に関する研究を行なっているアンダース・エリクソン氏らによって行われ、短期記憶の限界を驚異的なレベルまで拡張する方法が判明しています。

The Right Way to Practice
http://nautil.us/issue/35/boundaries/not-all-practice-makes-perfect

アンダース・エリクソン氏とロバート・プール氏は、1929年に公開されたペンシルバニア大学の論文に興味を持ちました。それは2人の大学生に毎秒読み上げられる乱数を記憶してもらうというもので、乱数は毎秒1つのペースで出題されます。4か月間の練習により、2人の大学生が何桁までの乱数を覚えられるようになるか、というもの。一般的な人間がこれらの乱数を覚えられる限界は8桁~9桁と言われているそうですが、最終的に大学生の1人は9桁~13桁、もう1人は11桁~15桁まで暗記できるようになったとのこと。

論文には学生の記憶能力をどのような方法で改善したのか詳細が書かれていなかったものの、エリクソン氏らはこの研究内容を再現することに決定。カーネギーメロン大学の協力のもと、学生のスティーブ・ファルーンさんを対象に、短期記憶の強化方法についてフィールドワークが始まりました。ファルーンさんは学力テストの成績は中程度の心理学専攻学生の3年生で、平均的な学生サンプルとしてフィールドワークの参加者に選ばれました。

By clogsilk

フィールドワークは数桁の乱数を「7……4……0……1……1……9……」と言う風に毎秒1文字のペースで読み上げ、のちに同じ数字を答えてもらうというもの。ファルーンさんが確実に覚えられたのは、アメリカの市外局番なしの電話番号と同じ7桁までで、8桁以降から失敗が見られるようになり、10桁になると全く覚えられなかったとのこと。これは全くの平均値であり、その後の練習でファルーンさんの記憶能力をどこまで強化できるかを調査していくわけです。

毎秒1文字という読み上げ速度は、ファルーンさんが短期記憶だけを使って乱数を記憶できるペースとなっており、この速度では長期記憶が使われることはなくなります。2日目~4日目まで同じ記憶テストを続けたところ、ファルーンさんは9桁までの数字列を記憶できるようになりましたが、まだ平均の域を脱していません。しかし、5日目に出題方法を変えたところ、劇的な向上が確認されました。新しい出題方法は、まず5桁から暗記を開始し、正解すれば6桁に移行するというもの。正解するごとに桁数が増えていき、失敗すると桁数を下げるという方法を試したところ、ファルーンさんは初めて9桁を正確に記憶することに成功。

ファルーンさんは失敗と成功を繰り返しながら、5日目に11桁の記憶に成功するに至りました。一気に2桁まで短期記憶の限界が拡張されたことから、新しい出題方法が正しいことが証明されました。この日以降、ファルーンさんの短期記憶の限界はどんどん拡張されていき、60回目のセッションでは、一貫して20桁の数字を思い出すことができたとのこと。これは研究者らの予想をはるかに上回る結果で、セッションの回数が100回を超えると、ファルーンさんの限界はプロのニーモニスト(記憶術師)と同程度の40桁になり、2年以上たった200回目のセッションでは、なんと82桁まで到達しました。

以下が82桁の乱数列ですが、1秒間隔で1文字ずつ読み上げられることを想像すると、記憶するのがどれだけ困難であるか理解できるはず。

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異常なほどの能力向上を見せたファルーンさんですが、これは「目的のある練習」が功を奏した結果とのこと。エリクソン氏は単純な反復練習のことを「素朴な練習」と呼んでいるのですが、目的を持って素朴な練習を行うことで、練習のパフォーマンスを劇的に改善できると、エリクソン氏は説明しています。例えば音楽の楽器を演奏する試験がある場合、試験までに何度も同じ曲を練習するのが「素朴な練習」に当たります。その時、やみくもに練習するのではなく、「適切なスピードのままミスせずに連続で3回同じ曲を演奏する」という短期的目標を立てることで、劇的な改善が期待できるわけです。

また、目的ある練習は「ミスをするとやり直す」という性質上、ミスしたポイントの攻略方法を考えるようになるため、自らフィードバックを得ることができます。目標に向かって自らの問題点を修正していくという効果が得られるのも、練習のパフォーマンスを改善する一因となっています。

By woodleywonderworks

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in メモ, Posted by darkhorse_log